愛しい野獣には冒険をさせよ 前編
2015 / 04 / 03 ( Fri ) 「ねぇねぇ、あんたが声掛けなよ!」
「え~っ、やだぁ、あんたこそやってよぉ」 「だってぇ~、なんか近寄りがたいオーラが出てるんだもん」 「バカね、そんなことじゃこんなチャンスは二度と来ないわよ!」 「えぇ~、でもぉ~~」 雑踏の中から聞こえてくる耳障りな黄色い声、声、声。 途切れることのない纏わり付くうっとおしい視線の数、数、数。 いい加減我慢も限界を超えそうだ。 一体なんだってこんなことしなきゃならない。 この俺が。 この俺様が。 「あ、あのぉ~・・・」 「・・・」 「あ、あのっ・・・!」 「・・・」 「・・・あのっ! もしよかったら私たちとご一緒しませんかっ・・・?」 「・・・」 声を掛けども掛けどもウンともスンとも反応は返ってこない。 これを俗に言うガン無視と言うのだろうか。 そもそも話しかけられたことすら気付いているのか。 チラリと横目で確認することすらしようとはせず、ただ真っ直ぐに前を見つめたまま。 友人に後押しされる形で勇気を振り絞って声を掛けた女だったが、恥ずかしいやら惨めやらで今にも泣き出しそうになっている。当然の如く男はそんなことに見向きもしない。 「・・・あ」 俯いて今にも零れ落ちそうな涙と格闘していた女の耳に、目の前の男の口から微かな声が聞こえた。思わず期待に胸を膨らませて顔を上げれば、相変わらず男はこちらなど見てはいない。 だがとある一点に神経を集中させているのがわかる。 さっきのがガン無視なら今度はガン見だ。 何があるのだろうかとその視線の先を辿ってみれば、人垣の向こうから息を切らしながら全速力で走ってくる女の姿が見えた。 ひたすら仏頂面だった男の顔がその姿を捉えるなりみるみる緩んでいくのがわかる。仏頂面でも極上のイケメンだったが、微笑んだ顔はその比ではない。 だが女が目の前までやってくると、まるで隠すようにその表情をさっと引っ込めてしまった。 「はぁはぁはぁ・・・ごめんっ! 寝坊しちゃった」 「・・・っまえ、おっせぇぞ! この俺をどんだけ待たせりゃ気がすむんだよ!」 開口一番の怒鳴り声に周囲にいた人間がびびるが、言われた本人だけは負けていない。 「だっ、だからごめんって言ったじゃん!」 「1時間だぞ! 1時間も待たせるなんざどういうつもりだっ?!」 「い、1時間?! ・・・って、あたしが遅れたの3分なんですけど・・・」 「うっ、うるせぇよ!とにかくお前が待たせたんだからな! この落とし前はきっちりつけてもらうぞ」 「落とし前って・・・遅れたあたしも悪いけど早く来すぎるのだって自己責任でしょ・・・。それに、今日はあたしのしたいようにしていいって約束だったでしょ?!」 「・・・・・・チッ」 「あーーーっ、舌打ちしたね? じゃあノルマ一個増やすからね!」 「んだとっ?! おまっ、ふざけんな!」 「だって舌打ちしないでねって言ってたじゃん! ・・・よし、じゃああたしの遅刻は今の舌打ちでチャラね。これでお互いイーブンってことで。ここから先舌打ちしたらアウトだらかね?」 「チ・・・・・・」 思わず出かかった音に我に返った男が何事もなかったかのように流し目で明後日の方向を見た。 「・・・今舌打ちしなかった? もしくはしようとしてなかった?」 「ねぇよ」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 じーーーーっと女に見られている男はどうにもこうにもバツが悪そうにしているが、女はしばらくするとニコッと笑って頷いた。 「ま、いっか。今日はすっごい楽しみにしてたから大目に見てあげる。とにかく楽しもう?」 「・・・あぁ」 「ふふ、じゃあ行こっか」 「・・・あぁ」 そう言って女が歩き始めると、後ろからついて歩き出した男が実にすんなりと女の手に自分の手を絡めた。その瞬間驚いたように顔を上げた女がみるみる恥ずかしそうに赤くなっていく。手を離そうとしているのだろうか、ブンブンと動かす素振りも見えるが、指に絡められた手は全く離れる気配がない。 やがて諦めたのか苦笑いしながらも楽しそうに何かを話すと、男も今日初めて心からの笑顔を見せた。 その場にいた誰もが思わず見とれてしまうほどの甘い笑顔を。 「かっこいい・・・・・・!」 「何あれ何あれ~~!! あの人彼女・・・だよね? どう見ても」 「あの人の素振りじゃ間違いないだろうね」 「ガガーーーーーン! ショックぅ~~・・・」 「っていうかあれだけのイケメンでいない方が奇跡でしょ」 「でも彼女は割と普通の感じだったね」 「うん。・・・でもあの人の顔見た? うちらが声掛けても1ミリだって反応してくれなかったのに、あの女の人見た途端あの表情だよ? もう好き好きオーラが出まくってるじゃん。入り込む隙間なんてナシって見せつけられた感じ」 「イケメンなのに一途ってズルすぎ~~~っ!!」 「「「「 あぁ~~~っ、あの女の人が羨ましい~~っ!!! 」」」」 「くしゅっ!」 「どうした、風邪か?」 「え? ううん、違う違う。誰かあたしの噂でもしてるんじゃないかな、あははっ」 大口を開けて笑う女の手をさらにギュッと握りしめると、予想通りほんのりと頬が赤みを帯びていく。 ったく。 散々やることもやってるってのに何を今さら。 ・・・まぁいつまでたってもこういう奴だからこいつらしくもあるんだが。 「風邪気味ならうちの邸に来てゆっくり過ごすか? 無理はすんな」 「ダーメ! そう言って予定を変えようとしても無駄だよっ」 「ち・・・」 「ん? 何か言おうとした?」 「・・・・・・」 舌打ちの形で唇が固まった俺をなめるように凝視してやがる。 くそっ、そんな可愛い顔でじっと見るんじゃねぇよ。 このままマジで邸まで連れて帰るぞ! 「ふふっ、なんか逆らえない道明寺って可愛いね。すっごい貴重な経験かも。あ~、今日一日ほんとに楽しみだなぁ~!」 「・・・・・・」 ブンブン手を振りながら今にもスキップしそうになっている牧野は本当に嬉しそうだ。 そんな顔を見てたらこっちまで思わずつられ笑いしそうになるが、この後の展開を考えるとそう笑ってばかりもいられない。 何故なら・・・ 「あ、着いた着いた。じゃあ切符買おっか」 「・・・」 辿り着いた場所を見て思わずデカイ溜め息が出た。 事の始まりは一週間前 _____ 「・・・びっくりした。どうしたの? こんな時間にっ・・・!」 驚いた顔でこっちを見上げる牧野を問答無用で抱きしめた。 当然のようにあいつは驚きで固まってるが、抵抗する気配は全くない。 時刻は夜中の11時過ぎ。 パジャマ姿で寝る気満々の牧野と未だスーツ姿の俺は対照的だ。 そんなアンバランスさなどどうだっていい。 今はこいつとこうしていたい。 ただそれだけ。 「ね、ねぇ、ほんとどうしたの? 疲れてるんでしょ? 邸に帰って早く休・・・」 「悪かった」 「・・・え?」 突然謝罪の言葉を口にした俺にようやく牧野がごそごそと動き出すと、驚いた顔で俺を見上げた。 ・・・その格好でその顔はやめろ。 目的が変わっちまうだろうが。 「・・・突然どうしたの?」 「突然じゃねぇだろ」 「・・・もしかしてそれを言うためにわざわざ?」 「わざわざじゃねぇだろ」 「・・・!」 驚きに目を丸くすると、しばらくしてその表情がほんのりと和らいでいく。 そうして最後には本当に嬉しそうな顔になって笑った。 「そっか、そのために・・・。ありがと。・・・へへ、嬉しい」 はにかんだように照れ笑いする牧野は殺人級に可愛い。 普段は気が強いくせして、たまに見せるこうした健気さやいじらしさが俺の心を捉えて離さない。 このまま一気にベッドの上に押し倒してしまいたいところだがまずはその前に。 「来週休みが取れそうなんだ」 「え、そうなの?」 「あぁ。だからどこでも好きな所に連れて行ってやる」 「・・・でもせっかくのお休みなんだし、たまには家でゆっくり休みなよ」 そう言って見せた顔は作り笑いだ。 本心じゃない。 だが牧野がそう言いたくなるのも当然のことだ。 本当は今日仕事の後に会う予定だった。 だが俺の仕事が予想以上に忙しくなってしまい、結局ドタキャンせざるを得なくなってしまった。 牧野に連絡をしたときこいつは笑ってた。まるでどこか予想していたかのように。 それもそのはずだ。これで3回連続なのだから。 俺がどういう立場の人間なのかよくわかっているし、こいつがそんなことで文句を言う奴だとも思っていない。だが、こうも毎回聞き分けよくすんなりと俺の都合を受け入れてしまうことに、俺は何とも言えない寂しさを感じていた。 勝手な言い分だとはわかってる。 仕事を放り出せと言われたらそれはまたそれで困るくせに、どこかでそんな我儘を言って欲しいと思っている自分がいる。こいつがそんなことを言おうものなら、俺は本当に仕事を投げ出してしまうかもしれない。 だからこそこいつは死んでも言わないのだ。 俺がこいつのためなら何でもやってしまう男だとわかっているからこそ、こいつはいつも自分の感情を押し殺してしまう。 ___ 俺のために。 「お前のやりたいこと何でも聞いてやるよ」 「えっ?」 「今度のデート、お前の希望を何でも聞いてやる。俺にできないことはねぇんだから何でも希望を言え。何もないって言うなら俺がやりたいことをやるからな」 「えっ!」 ニヤリと笑って見せると何を想像したのか、牧野の顔がゾッとしたように青くなる。 あぁそうだよ。俺のやりたいことなんて一つしかねぇだろ? 朝から夜まで・・・いや、朝になっても離さねぇぞ。 それが嫌なら早くお前の希望を言いやがれ。 こうでもしなきゃお前は我儘なんて言いっこねぇんだからな。 っつってもこいつのことだ。どうせ大したことない希望しか言わないんだろうけどな。 「庶民デートしたい」 ・・・は? 一瞬言われた言葉がわからない俺を牧野はキラキラした瞳で見上げる。 だからその顔やめろっつってんだろ! ・・・つーか今何て言った? 「庶民デートしたいっ!!」 ガシッと俺の両手を掴んで満面の笑みで牧野がもう一度言った。 庶民デート・・・? その言葉に昔の苦い思い出が一瞬にして蘇ってくる。 あの時俺たちは・・・ 「ねぇ、いいでしょ? 道明寺と庶民デートがしたい!」 「・・・」 庶民デートなんて冗談じゃねぇ。 副社長ともあろう人間が庶民デート? んなばかな。 そう言ってやりたいのに。 「・・・わかったよ。男に二言はねぇ。つーかお前が望むならどんな贅沢だってさせてやるってのに」 「やだ。そんなこと望んでないもん。あたしは庶民デートがいいの」 贅沢させてやるっつってるのに速攻で拒絶するのはお前くらいのもんだろうよ。 しかもそんな嬉しそうな顔しやがって。 「・・・ったく。お前はほんっと変な女だよな」 「えー? あたしからすれば道明寺の方がはるかに変でしょ」 「んだと?」 「あぁ、今度のデートすっごい楽しみ! ねっ?」 「うっ・・・!」 キランキランの顔で上目遣い。ちょっと首を傾けて・・・笑顔満開。 しかもパジャマ姿ときたもんだ。 ・・・やっぱりこの女タチが悪ぃっ!!! 「わかったわかった。お前の言うことなんでも聞いてやる。だからまずは、な」 「え?」 ガシッとこいつの肩を掴むとそのまま部屋の奥へとズンズン足を進めていく。 「えっ? な、何っ?」 「何って・・・野暮なこと聞いてんじゃねーよ」 「えぇっ、嘘っ!! だってこんな時間・・・明日も仕事だよっ?!」 「んなん関係ねーよ。俺は不死身だ」 「あんたはよくてもあたしはよくないのっ! あたしは生身の人間なんだからっ!!」 叫んだ体がドサッとベッドに沈み込む。目を見開いているがそんな顔すりゃするほど俺に火がつくってことお前はいい加減学習しろよ。 「心配すんな。手加減してやる」 「ちょっ、待っ・・・んんっ・・・!」 尚も何か言いたそうな口を塞ぐと、そのまま俺たちは快楽の淵へと落ちていった。 極上に幸せな時間も束の間、一週間後に自分の言った言葉を激しく後悔するはめになるとは、この時の俺はまだ気付いてもいなかった。
このお話はキリ番10万を踏んだaoi様からのリクエスト作品となります。 リクエストは 『 庶民デート 』 でした♪ しばし楽しい(?)2人のデートをお楽しみくださいませ(*´∀`*) 色々と手違いがあり遅くなってしまったことをお詫び申し上げます。 10万どころかもう20万目前ですよね・・・(=_=) いや、本当に面目ないm(__)m ちなみに20万のキリ番を狙ってる方がもしいらっしゃいましたら、もしかしたら今日中に迎えるやもしれません。その場合は夜だと見込んでます。(日付が変わる前後あたり・・・?←あくまで予想なので一切保証なし) 質問したいという方も是非お早めに!(o^^o) スポンサーサイト
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愛しい野獣には冒険をさせよ 中編
2015 / 04 / 04 ( Sat ) ____ あれから一週間。
約束通り庶民デートたる日を迎えたのはいいのだが・・・ 初っぱなから頭が痛くなるような要求ばかりだった。 まず待ち合わせするところからやりたいと言い出しやがった。 リムジンは当然の如くノー、俺が運転する車で迎えに行くと言ってもシャットアウト。 しかも人通りの多い、デートの待ち合わせスポットとしてはベタすぎる場所を指定しやがった。 案の定俺の嫌な予感は的中し、逆ナンしてくる女は後を絶たなかった。 んなこたぁ眼中に入ってもいないが、視線が纏わり付くだけでも鬱陶しい。 全員ぶっ飛ばして回りたいくらいだがそうするわけにもいかず。 牧野が来るのがもう少し遅かったらマジでやばかったかもしれない。 そして今。 目の前にある機械を前に固まる男が1人。 その1人とは他でもないこの俺自身なのだが・・・ この先一体どうすりゃいいんだ? どう見てもブラックカードが使えるようには見えない。 牧野にカードは厳禁と釘を刺されていたからまぁそれ以前の問題ではあるのだが、久しぶりに握った紙幣を手にしたまま次に起こす行動がわからない。 液晶に無数に並んだ数字を一体どうすりゃいい? 左右で作業をしてる奴らを横目で見ると、どうやらいずれかの数字をタッチすると切符が出てくるシステムらしい。 だが俺はどれを押せばいいんだ? とりあえず一番でかい数字を押しときゃ問題ないのか? ・・・わからねぇ。 俺にはさっぱりわからねぇ。 「あれっ、まだ買ってないの?」 と、何やら用事を済ませてくると言っていた牧野がようやく戻って来た。 が、紙幣を握りしめたまま未だに切符すら買えてない俺に驚いているようだ。 くそっ、だからこんなデートは嫌だったんだ! 「あ、ごめんごめん。行き先ちゃんと教えてなかったもんね。えーとね、行き先はここだよ」 だが牧野は特段気にしたような素振りも見せずにサラッと笑いながら目的地を指差した。 こいつなりの俺に対する気遣いなんだろうというのがよくわかる。 「あ、あぁ・・・」 言われたとおりの場所をタッチすると、切符と共に大量のおつりが出てきた。 「財布から真っ先に出てくるのが万札ってのが道明寺らしいよねぇ~。 でも今日は2人で合わせて1万円しか使えないんだからね?」 「・・・・・・」 「よし、じゃ電車乗ろっか」 すっげー楽しそうに前を歩く牧野とはきっと対照的な顔をしているだろう俺。 あいつが提案した庶民デート、その条件の中に予算は2人合計して1万円なんつー、とんでもないものがあった。しかも当然の如く全て割り勘だと言い切りやがった。 1万円っ?! 1万円で一体何ができんだよ? 一食分の値段じゃねーのか? 普段現金すらろくに持ち歩かない俺には未知の世界だ。 だがこいつができるっつーことにきっと不可能はないのだろう。 移動は当然公共交通機関のみ。 それで最初の待ち合わせに遡るというわけだ。 バコーーンッ ドカッ!! 「いてっ!」 と、突如膝周辺に痛みが走った。 何だ?! ピコーーン! ピコーーン! ピコーーン! ピコーーン! ピコーーン! 見れば足元のゲートが俺の行く手を阻んでいる。 何だこいつはっ?! 他のヤローはちゃんと開いてるじゃねぇか! っざけんなっ!! 「どっ、道明寺っ?!」 先に改札をくぐっていた牧野が大慌てで引き返してきた。 「このクソ野郎、一体どういうつもりだ?! 切符なら買ったじゃねぇか!」 「わわわわわわ、待って待って待って! 足で跨いじゃダメだって!」 「んでだよ! 切符なら買っただろ? なんでこの野郎閉まりやがるっ!」 「きっ、切符ちゃんと入れたっ?」 ゲートごと飛び越えようとする俺を牧野が必死で押し留めながら聞いてきた言葉に俺の体がピタリと止まる。 「そこに切符を入れるところがあるでしょ? ちゃんと入れた?」 切符を? 入れる・・・? 牧野の視線の先を辿っていくと確かに何かを入れるであろう機械が目に入った。 そして牧野の視線の先には俺の左手に握られたままの買ったばかりの切符が。 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 阿呆鳥でも飛んでいったのではないかと言うほどの沈黙が走る。 「どうかされましたか?」 「えっ・・・? あっ、なんでもないです、ごめんなさい! 道明寺、早く切符入れて!」 「あ? あぁ・・・」 何事かと駆けつけた駅員に牧野が必死で釈明している。 その隙に言われたとおりに切符を入れるとなんなくゲートが開いた。 見れば駅員以外にもこの騒ぎを見ている人間が何人もいたようだ。 ジロッと一睨みすれば蜘蛛の子を散らすようにササーーーっと逃げていく。 ・・・・・・・くそったれ。 だから庶民デートなんて嫌だったんだ。 この俺がこんなことで右往左往するなんて・・・情けないにもほどがある。 いつだって牧野をリードしていたいってのに、こんなカッコ悪ぃ醜態を晒して死にてぇほどだ。 「なんか・・・ごめんね?」 「あ?」 ガタンゴトンと揺れる電車の中で牧野が申し訳なさそうに俺を見上げている。 だからその顔やめろっつってんだろが。 「あたしのせいで道明寺に・・・その・・・」 恥をかかせてしまってとでも続けたいのだろうが言いづらそうに言葉に詰まっている。 「別にお前のせいじゃねーだろ」 「でも・・・」 「言われてみれば昔も同じ失敗してたことをすっかり忘れてた俺が悪い」 「え?」 意外そうに目を丸くしているが事実だ。 「道明寺って電車乗ったことあるんだ?」 「片手でも優に余る程度だけどな」 「そうだったんだ・・・意外~!」 俺が予想外に怒っていないことに安堵したのか、牧野はホッと表情を緩めてようやく笑った。 初めて乗ったのはガキの頃だったか。 たまたま見たテレビで電車に乗ってる奴らを見て子ども心に羨ましくて使用人に命令したんだったか。 「大人になってからはないの?」 「ねぇな。そもそも必要性がないからな。それにそれ以前に嫌なんだよ」 「え?」 「こういう狭い空間で不特定多数の人間が集まる場所がうっとおしくてな」 視線を動かしてそれとなく暗に知らせると、牧野が周囲を見渡して何かに気付いたようだ。 「あ・・・そっか・・・。やっぱりごめんね? 我が儘言って」 牧野の視線の先には俺を遠巻きに見ている女がこれでもかといたに違いない。 さっきの待ち合わせでもそうだが、このルックスに纏わり付いてくる人間は後を絶たない。 総二郎やあきらならそれもまた楽しみの一つとしてうまくやり過ごすのだろうが俺は違う。 視界にすら入れたくもない女共の格好の餌食になるような場所は頼まれてもごめんだ。 だが・・・ 「だからお前が謝るなっつってんだろ」 「でも・・・」 「俺がいいっつったんだ。お前が気にすることじゃねぇ。俺の舌打ちじゃねぇけど、お前が謝る度にペナルティ与えっからな?」 「えっ?!」 「そうだな、1回言うごとにキスにすっか」 「だ、ダメダメダメっ!!」 ガバッと両手で口を押さえて速攻でガードに入った。予想通りだ。 「バーーーカ! だったらいちいち謝るんじゃねぇよ。お前が庶民デートしたいっつったんだろ? それなら余計なこと考えずに楽しめよ」 「道明寺・・・・・・うんっ! ありがとう・・・!」 「別に礼を言われることはしてねーぞ」 「うん、でもいいの。嬉しいから」 ポンっと頭に手を置くと、牧野はその手に自分の手を重ねて嬉しそうに笑った。 ・・・あー、やっぱ庶民デートなんてさっさとやめて邸に連れて帰りてぇ。 でも自分で言った手前約束はちゃんと果たさねぇとな。 ・・・ま、夜は長いんだし。 「ん? どうしたの?」 「なんでもねぇ」 今夜のことを想像して緩みそうになる口元を慌てて引き締めると、滅多に見ることのない車窓からの景色を2人並んでしばらくの間楽しんだ。 *** 「わ~、やっぱり休日ともなると結構混んでるんだねぇ」 電車に揺られてやって来たのは下町にある古びた遊園地。 遊園地なんて・・・それこそガキの時にアメリカで行って以来なんじゃねぇのか? どんなことをしたのかすらもうろくに覚えてないほどの微かな記憶しかない。 俺が遊園地なんて似合わないにもほどがあるって自覚があるが、まぁ動物園じゃなかっただけマシだろう。 「遊園地なんて結構金がかかんじゃねぇのか? 予算は1万だろ?」 「あ、大丈夫大丈夫。ここはね~、フリーパスでも1人2千円なんだよ? 安いでしょう!」 「へぇ・・・俺にはよくわかんねーけど、お前が言うくらいならそうなんだろうな」 「あははっ! 普通は4、5千円くらいが平均なんだけどね。その分ちょっと古いけど、でもだからこそ味があっていいんだよ?」 ほんとこいつは何でも楽しそうに話すよな。 貧乏人のくせに俺なんかよりよっぽど充実した人生を送ってきたんだろう。 「はい、これ道明寺の分のチケットね」 「あ? あぁ、サンキュ。これはどこに入れんだ?」 今度こそあんな恥ずかしい真似はゴメンだ。 二度と繰り返してたまるか。 「え? ・・・ぷっ、あははははっ!」 それなのにこいつときたら、いきなり腹を抱えて笑い出しやがった。 「なっ、何だよ? チケットはどっかに入れるんだろ?!」 「あはははっ! うんうん、そうだね。でもここは手渡しでいいんだよ、ほら」 指差した先には入り口ゲートに立つ係員と思しき人間がチケットを手で受け取っている。 場所によってやり方が違うって事か? 庶民の世界も案外奥が深ぇんだな。 「・・・・・・? 俺にはよくわかんねーな」 「あははっ、普段来ることがないとそう思うよね。まぁ今日は庶民の世界を色々堪能してよ。さっ、行こう?」 「・・・あぁ」 「あっ?!」 牧野の左手に握られていた大きなバッグをサッと奪い取ると、空いた手に自分の手をすかさず絡ませた。申し訳なさそうにしてるが気にすることなんかねぇのに。さっきまでは両手で握りしめてたから奪うチャンスがなかっただけだ。 つーか結構ずっしりしてるけど一体何が入ってんだ? 庶民の世界も女の世界も俺には謎だらけだ。 「・・・ありがとう」 「おー」 嬉しそうにはにかむあいつに相槌を打つと、再びスキップしそうな勢いで足取りの軽くなる牧野に引き摺られる形で園内へと入っていった。 「きゃーーーーーっ!!!!」 ゴーーーーッという轟音と共に急降下していく体に合わせて牧野の悲鳴が響き渡る。 なんとかコースターとかいう乗り物らしいが俺にとっちゃあちっとも怖くねぇ。 一人乗りの小型機を操縦してる時の方がよっぽどスリルがある。 ・・・ただやけにギシギシ怪しい音がするのが少々気になるところではあるが。 つーか今にもぶっ壊れるんじゃねぇのか?! これ。 なんてことを冷静に考えている間にあっという間に一周してしまったらしい。 「はぁ~~、怖かったぁ」 「すげー声だったな」 胸を押さえながらはーーっと深呼吸した牧野がふと俺を見上げる。 その顔はどこか不服そうに見えるのは気のせいか? 「おかしくない?」 「・・・は?」 「普通さ、遊園地に来たら実は男の人の方が絶叫マシンに弱かった! ってのがよくあるパターンなんじゃないの?」 「はぁ? そんなん知るか!」 「んも~~! てっきりそのパターンになるのを楽しみにしてたのにぃ~」 「アホか! 勝手にそんなもん押しつけられても迷惑なんだよ」 「ちぇ~っ。じゃあ次はメリーゴーランドね」 「メリー・・・?」 聞いたこともない言葉に頭の中が疑問符でいっぱいになる。 「あれあれ」 牧野が指差す先を見れば摩訶不思議な馬に跨がる子どもに、何故だかカボチャの馬車に乗った女の姿がちらほらと。 「・・・・・・却下」 「えっ、ダメだよ!」 「俺にあんなメレンゲな世界は到底無理だ。お前だけ乗ってこい」 俺様ともあろう男があんな恥ずかしい真似できっか! 「メレンゲ・・・? もしかして、メルヘンって言いたい?」 「・・・どっちだっていいんだよ。とにかく却下だ」 「やだやだやだ! 道明寺とじゃないとやだ!」 「ぜってぇ断る」 「お願いっ! 道明寺と乗りたいの! すっごい楽しみにしてたのっ!」 「うっ・・・!」 出たっ! 牧野の必殺技。上目遣いのおねだり攻撃。おまけに腕を掴んで離さねぇとか。 お前・・・ここでそれは卑怯すぎるだろっ! マジでタチが悪いにもほどがある。 それをやってりゃ俺が何でもかんでも言うこと聞くと思ってんじゃねーぞ? そんなバカなことが世の中そう簡単にあるわけ・・・・・・ 「きゃははははは! 楽しいねぇ~~!!」 「・・・・・・」 「ねぇ楽しくないの?」 「・・・もう何も聞かないでくれ」 「え~っ? あたしはすっごい楽しいけどなぁ~? きゃははっ!」 ・・・・・・どうか社員がこの場にいないでくれと心から願う。 何が悲しくて俺がカボチャの馬車に乗ってクルクル回らなきゃならねぇんだ? これが庶民の常識ってやつなのか? こんな姿、あいつらには死んでも見せられねぇっ!! 思わずゾッとして周囲を見渡してみたが、どうやらそれらしい姿は見当たらずにひとまずほっと胸を撫で下ろす。 こんなメルヘンな乗り物に乗るだなんてもう一生ごめんだが、こいつのこんな楽しそうな姿をを見てると・・・なんか細けぇことなんかどーだってよくなってくるから不思議だよな。 いつもどこか忙しい俺に気を使ってるこいつが、今日は心の底から嬉しそうに、まるでガキに戻ったみてぇにはしゃぎまくってるなんて。 こうしてこいつの新たな一面を見られるのなら、庶民デートっつーのもたまには悪くねぇんじゃないかとすら思える。 「次はお化け屋敷行こっ!」 「は? まだ行くのか?」 「もちろんでしょ~。しっかり元とるまでは遊びまくらないと! ささ、行こ行こっ!」 こいつのこの底なしの体力は一体どこから湧いてくるんだ? やっぱり庶民デートは1回きりでいいっ!!!
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愛しい野獣には冒険をさせよ 後編
2015 / 04 / 05 ( Sun ) 「なんか腹減ったな・・・」
時計を見ればいつの間にか昼も1時間ほど過ぎていた。 時間を忘れて遊び回るなんざ生まれて初めてのことかもしれない。 「お弁当食べよ!」 「・・・弁当?」 「うん、作ってきたんだ。 それ」 牧野が指差したのは俺の手に握られた例の重量感のあるバッグ。 「もしかして・・・それで?」 「え? あ・・・ははっ。ばれちゃった? そうなの。それ作っててちょっと遅れちゃった」 どうりでこいつが時間に遅れてくるなんて珍しいと思った。 どんなときでも時間前には来てるような奴なのに。 「あっちに広場があるからさ。そこで食べよ?」 「・・・あぁ」 牧野に連れられるままに来たのはまるでそこだけ別世界のような広い芝生の憩いの場。 他にも同じように休憩している連中が何組も見える。 「シートもちゃんと持ってきたからちょっと待ってね」 例のバッグからデカイ重箱や水筒、シートが次から次に出され、あっという間に場が整えられていく。毎回思うがこいつの動きには無駄がねぇ。 「はい、これで手を拭いたら食べよ?」 「あぁ。サンキュ」 「ふふ。じゃあいただきまーす!」 「・・・いただきます」 目の前に並べられたのは一体何人分なんだってくらいの食いもんの山。 俺には詳しいことはよくわかんねーが、その一つ一つが手作りなんだっていうことだけはわかる。 色や形はプロには到底敵わないが、きっとこいつの想いを込めながら時間をかけて一生懸命作ったんだろう。色鮮やかな卵焼きを取ると、そのまま空腹の体に放り込んだ。 牧野の視線がじーーっと俺に集中したまま止まっている。 「・・・んまい」 「っほんとっ?! よかったぁ~~! いっぱいあるからどんどん食べてね?」 俺の一言にほーっと胸を撫で下ろすと、一気に食欲が湧いてきたのか牧野は目の前のおかずを次々と食べ始めた。相変わらずその細い体に一体どうやればそんなに入るんだ? ってくらいの勢いで運ばれていく。 手作りなんて、俺がこの世で最も嫌いな忌々しい存在だ。 それなのに・・・こいつが作ったと思うだけでどうしてこうも変われるんだろうか。 味がどうだとかはよくわからねぇ。 まぁぶっちゃけ、俺の口には合わねぇって言った方が正直なところなんだろう。 だが口に入れた瞬間、言葉では表せないあったかさみたいなものを感じる。 そんなの俺らしくねぇってのは俺自身が一番よくわかってる。 それでも、自分にはない何かが満たされていくのを全身で感じる。 いつもそうだ。 ・・・・・・あの時もそうだった。 記憶を失っていた俺が自分を取り戻していくきっかけとなったのも、やはりこいつの弁当だった。 あの時あのきっかけがなかったら俺はどうなっていたんだろうか。 ・・・クッ。 ばかばかしい。 そんなの決まってる。 また違うきっかけであいつを思い出していた。 ただそれだけのこと。 俺があいつを取り戻せないなんてことは天地がひっくり返ってもあり得ないことだ。 「どうしたの? ニヤニヤして」 「あ? 別にニヤニヤなんかしてねーよ」 「してるじゃん。 ・・・あー! また変なこと考えてたでしょ?」 「あん? 変なことってなんだよ。あれか? お前が夜になると結構エぶっ・・!!」 バシッと強烈な張り手が顔面にヒットした。 「いってぇ! 何しやがる!」 「あんたこそこんなとこで何言い出すのよ?! もうっ! いいから早く食べなよ!」 「・・・んなんだよ、言い出しっぺはお前だろうが」 「はいはい、口より手ぇ動かして」 「口動かさねぇと食えねーだろ」 「もうっ! 屁理屈はいいから食べるのっ!」 くくっ、こいつをからかうとほんと飽きねぇよな。 適当に流せばいいところをいちいちムキになって食ってかかって。 それがわかっててからかう俺も大概か。 何も考えずに青空の下この俺が弁当を食う? 昔からは想像もできなかった未来に思わず笑えてくる。 でも不思議なことにそれが嫌じゃない。 というより、こいつが隣で笑ってさえいればどこだって同じなんだと気付いたのだ。 「わっ?! ちょっ・・・どうしたの?」 ゴロッと突然太股に転がってきた俺に牧野が目を丸くしている。 それでも手に握った食いもんは離さねーのかよ。 「腹が満たされたら眠くなってきた。少しだけ膝貸せよ」 「貸せよって・・・まだご飯食べてるんですけど」 「お前ならどんな体勢でも食えるだろ? 少ししたら起こせよ」 「え? ちょっと、道明寺っ?! ・・・もう、相変わらずなんだからっ!」 頭上でピーチクパーチク何か言ってるけどそんなことは知ったこっちゃねぇ。 どうせこいつだって本気で嫌がってなんかいないってことはこの俺がよく知ってる。 ・・・ほらな。 何だかんだ言いながら頭を撫でてやがる。 俺は髪の毛を触られんのがでぇっっっきらいなんだよ。 気安く触れる人間なんかこの世に存在しねぇんだよ。 ・・・・・・お前以外にはな。 ふわふわと、まるで真綿に包まれるような暖かい感触に体が浮上していくと、俺の意識はあっという間にそのまま真っ白に沈んでいった。 「・・・・・・道明寺? 寝ちゃった?」 「・・・・・・」 「・・・色々疲れてるんだよね。ごめんね? あたしのために苦手な庶民デートなんて付き合ってくれて。でもほんとに嬉しかった。道明寺のその気持ちが。 ・・・・・・大好き」 サラサラと撫でられている感触を感じながら、なんだかすげぇいい夢を見たような気がした。 *** 「ぷはぁ~~っ、おいしいっ!!!」 「・・・これマジでアルコール入ってんのか? ほとんど水じゃねぇか」 「贅沢言わないのー! これが庶民の味だよっ」 「・・・・・・激マズ」 結局あれから俺が目が覚めた頃にはすっかり日が傾いていた。 自分のあまりの寝オチっぷりに自分でびびったが、牧野は何故だか幸せそうに笑っていた。 せっかくこいつのための1日にしたのに・・・俺が寝こけても少しも怒ってはいなかった。 正直、こいつの怒りスイッチがどこにあるのか未だによくわかんねーが、それでも嬉しそうに笑っているならそれでいい。何がそうさせてるのかはわからねーけど。 それからまたしばらく遊んで、そして遊園地を出た俺に牧野が居酒屋に行きたいと言いだした。 どうやらあいつの計画では締めは居酒屋と決めていたらしい。 今日はとことん付き合うと決めて来たんだ。反論の余地などない。 連れてこられたのは頭が割れそうなほどうるさい居酒屋。俺の世界にはまず存在しない空間だが、通されたのが狭いながらも個室だっただけまだマシか。 「つーかよくこの予算で食って酒まで飲めるよな・・・」 「あはは、道明寺には飲み放題食べ放題なんて縁がないもんねぇ」 「どんな原料使ってんだよ」 「そんな食べられないものなんて置いてないから。まぁまぁ騙されたと思って食べてみなよ」 そう言って差し出された焼き鳥を気乗りはしないが食ってみる。 「・・・まぁ、食えないことはない」 「え? あははっ、素直においしいって言えばいいのに」 「いや、うまくはねぇぞ?」 「あはは、でもイヤイヤながらも食べるだけ凄いよね。進歩進歩」 「おい、人を変人扱いすんな」 「え、違うの?」 「こいつっ!」 「きゃーーっ、バカバカっ、髪の毛グチャグチャになっちゃうじゃんっ!」 ワシャワシャと髪の毛を乱すと、逃げ回る牧野が顔を上げた瞬間、唇がくっつきそうなほどの距離でハッと止まった。しばし時間が止まるが、当然の如く俺の顔は吸い込まれるように引き寄せられていく。 パンッ!! 「ぶっ!」 今日2回目の張り手ヒット。 いや、ある意味予定通りと言うべきか。 僅かな隙間をぬって俺の唇と牧野の唇の間にあいつの手が侵入している。 「手、邪魔」 「だめ」 「なんで」 「なんでって、ここお店でしょ? だめだめだめっ!」 「個室だろ。問題ねぇ」 「大アリだよ! 道明寺のブレーキ効かなくなるじゃん!」 「・・・・・・」 「ひゃあっ?! なっ、な、なっ・・・???!!」 口を塞いだままの手をペロッと舐めてやったら一瞬にして赤くなりやがった。 ほんとこいつっておもしれぇ。何をどうやればこうも表情がコロコロ変わるんだ? 「確かにブレーキは効かなくなる危険性はあるな。まぁあと数時間の辛抱だしな。とりあえずは我慢してやるよ」 「なっ・・・なんで上から目線なのよ!」 「俺様だからだろ? 何を今さら」 「ぐぬぬぬ・・・もうっ、飲みますっ!」 口では勝てないと諦めたのか、牧野はグラスを掴むと勢いよくサワーを流し込んでいく。 「飲み過ぎんなよ」 「元は取らなきゃ!」 「・・・」 元ってなんなんだよ。 相変わらずわけがわかんねぇ。 つーか昼もあれだけ食っておきながらまだそんなに入んのかよ。 見てるだけでこっちは腹いっぱいだっつーのに。 「食べてる?」 「・・・食ってるよ」 「そ? おいしいねぇ~!」 それでも、こいつが楽しそうにしてると何故だか口元が緩んで仕方がない。 我ながら相当やられてるなと思う。 そんな俺の思いなど知ってか知らずか、牧野はその後も延々と飲み食いを続けていった。 「おい牧野、起きろ」 「うぅ~~ん・・・」 案の定それから長くせずして牧野はぐでんぐでんに酔っ払った。 まぁ今日は俺がいるから好きにさせたが、他の男の前でこんな姿を晒しでもしたらぶっ飛ばす! 机に突っ伏している肩を引き寄せると、クニャッとこんにゃくのように俺の体にもたれ掛かってきた。ふわんと控えめな胸が俺の体に密着したのがわかる。 おまけにそのまま腰の辺りに手を回してきやがった。 「お前はほんっとタチが悪ぃ女だよな」 「ん~~? 何がぁ?」 「俺がキスしようとしたら全力で抵抗するくせに自分はこれかよ」 「へぇ~~? なにいってるかわかんなぁい・・・ムニャムニャ」 「おい、寝んな」 「ん~・・・」 ギュウッとしがみついたかと思えばそのまま目を閉じてしまった。 だから胸が当たってるっつーんだよ!キスはダメでこれはいいってのはどういうことなんだよ。 ほんっっとこの女ほど厄介な女はいねぇんじゃねーのかと心底思う。 この場で押し倒されたって文句一つ言えねぇってわかってんのか?! 「・・・どうみょうじぃ・・・ありがとね・・・」 「あ?」 見れば眠っていたと思っていた牧野が顔だけ上げて潤んだ瞳で俺を見ていた。 「今日はあたしのためにいーーっぱいムリしてくれたんだよね。道明寺が困ってるのはわかってたけど・・・それでもあたしうれしかったんだぁ・・・ほんとにほんとにありがと・・・」 「牧野・・・」 頬に手を添えると牧野はほわんと笑った。 「今日道明寺と過ごして思ったよ。・・・道明寺はぜーーーーったいいいお父さんになるだろうなって」 「え?」 「ふふっ、ぜーったいすてきなパパになると思うよ」 「・・・・・・」 ・・・何言ってんだよ。 お前自分がどんだけすげぇ発言してるかわかってんのか? 俺が親になるってことはその相手がいるってことだぞ。 それが誰なのかってちゃんと自覚してんのか? たとえ酔っ払ってようとそんなことを言えばもう俺の心にブレーキなんて効かねぇんだぞ? お前が結婚を渋ろうとどうしようともう 「待って」 だのなんだの言わせねぇからな? 「牧野・・・」 笑ったまま再び胸元に顔を落とした牧野の顎を掴んで上を向かせる。 もう半分以上眠っているのかもしれないがそんなことは関係ねぇ。 その気にさせたお前に責任があんだからな。 だが唇まであと数ミリのところではたと冷静になる。 「・・・・・・・・・・・・・」 ムニャムニャと微睡む牧野の体をそっと下に寝かせると、足音を立てないように静かに立ち上がる。そして隣の部屋との仕切りの扉まで近づいていくと、何の前触れもなく思いっきり横に引いた。 「おわっ?!」 「いてっ!!」 ドサドサバタッ!! 予想外のことにそこにいた男がゴロゴロとこっちの部屋に転がり落ちてきた。 じっと見下ろしている鋭い視線に気付いた途端、この上なくバツが悪そうに苦笑いし始めた。 「あ・・・・・・はは。 よぉ司、こんなところで会うなんて奇遇だなぁ!」 「だな! お前が居酒屋なんて珍しいこともあるもんだなぁ! はははっ」 「・・・・・・・・・・・・・・」 無言の鉄槌に思わず2人が姿勢を正した。 「・・・・・・いつからいた? 嘘はつくんじゃねーぞ、総二郎、あきら」 「・・・・・・・・・えーと、お前が1時間待ってるあたりから?」 へラッと笑って出た答えにパキッと手が鳴った。 つまりは全て見られてたってことか。 あの醜態全て。 「いやっ、待て、司! 決して悪気はなかったんだ! この前会った時にあまりにも牧野が嬉しそうに話してたから、それでだな」 「理由なんざ関係ねーよ」 パキッパキッ 「まっ、待てっ! ここは店内だぞ! いつものVIPルームとはわけが違うんだぞっ!!」 「それも関係ねぇなぁ」 ポキポキポキッ ボキッ! 「まっ、うわぁああああっやめろっバカっ!」 「バカはてめぇらだろ。覚悟しろ」 「うわーーーーーっ!!」 それからどれだけスッタンバッタン音がしようとも、牧野は1人気持ちよさそうにひたすら夢の世界で笑っていた。 **** 「ん・・・」 閉じられたままだった瞼がようやくゆっくりと開いていく。 「目ぇ覚めたか?」 「え・・・? あ、道明寺・・・・・・ここは?」 「見てわかんねぇか?」 大きな瞳がキョロキョロと動いて周囲を見渡していく。 「あ・・・もしかしてお邸?」 「あぁ。お前、居酒屋で寝ちまったからな」 「あ・・・ごめん。楽しくてつい飲み過ぎちゃった。膝枕までさせちゃって・・・ごめんね」 俺の膝枕で寝ていたことにようやく気付いたのか、申し訳なさそうに体を起こそうとしている。 だがその手を掴むと、バサッという音をたててそのまま体勢を逆転させた。 ふわりと牧野の体がベッドの中央に沈み込んでいく。 「・・・・・・えっ?」 何が起こったのかわからない牧野は目を丸くしている。 「ほんとはラブホってやつでもよかったんだけどな」 「・・・はっ?!」 思いも寄らない言葉にますます目が見開かれていく。落ちそうなほどに。 「庶民にとっては馴染みの場所なんだろ? あいつらが言ってたぜ」 「あいつら・・・? 何の話をして・・・」 「でも俺たちにはやっぱりああいう場所はしっくりこねぇからな。もう日付も変わったし庶民デートは終わりだ。こっからはいつもの時間に戻るからな・・・?」 「え? え? え?!」 どんどん目の前に迫る俺の体を条件反射で押し留めようとするのは計算済み。 すぐにその手を掴むとベッドの上に縫い付けた。 未だ展開についていけない牧野の耳元に顔を寄せると、舐めるようにして囁いた。 「心配すんな。ここは店なんかじゃねぇからな。思う存分声出して構わねぇぞ・・・?」 「なっ・・・?! んっ・・・!」 真っ赤になって信じられないと言わんばかりの唇を言葉ごと塞ぎ込んだ。 ジタバタもがいていたのも最初だけ。 すぐにヘナヘナと空気が抜けていくように力が抜けると、やがてその手が俺の首の後ろに回された。 なぁ牧野、お前は気付いてんのか? 自分がどれだけ俺に火をつけることを言ってんのか。そしてやってんのか。 いい父親になるだなんて、お前の口から聞かされることの破壊力を。 そんなに嬉しそうに言われたら早く実現してやらないと男じゃねぇだろ? なぁそうだろ、 牧野・・・?
aoi様のリクエストポイントを一応全て入れたつもりなのですが無駄に長くてまとまりがなくてすみません。私の技量ではこれが限界でした(^◇^;) 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。 今回原作が手元にない状態だったのでね、色々と「あれ?」と思うこともあるかもしれませんが、そこは単発ってことでスルーしてやってくださいm(__)m そして20万も超えてました!近々企画をアップしたいと思いますのでお楽しみに^^ キリ番踏んだ方はどなたでしょうね~?(・∀・) |
新婚さんいらっしゃ~い♪ 前編
2015 / 04 / 11 ( Sat ) 「皆様こんにちは~! 牧野・・・じゃなかった、道明寺つくしです! 今回は私たちの物語を読みに来てくださった方が延べ20万人を超えたということで、記念すべきリクエスト企画をしちゃいまーーす! イエーーイ!!」
「・・・・・・」 「ちょっと! もっとやる気出しなさいよっ!」 「だりぃ・・・」 「ちゃんとしないならもう二度と同じベッドで寝ないからねっ?!」 「んだとっ?! ふざけんなっ!!」 「じゃあちゃんとしてよ! 皆楽しみにしてくれてるんだから!」 「・・・チッ。なんだって俺がこんなくだらねぇ企画に・・・ブツブツ」 「じゃあもうチューもしないからね」 「?! ざっけんな!」 「じゃあ文句言わずにちゃんとやるっ!!!」 「・・・・・・わーーーーったよ! やりゃあいいんだろうが! やりゃあ!!」 「ふふふ~、わかればよろしいっ!」 「・・・ったく何すりゃいいんだよ」 「なんかね、これからいろんな質問があたしたちにされるんだって。それに正直に答えればいいみたい。あ、早速始まるみたいだよ!」 「・・・・・・」 Q.M様からの質問 『 西田さんって2人にとってどんな存在ですか? 鉄仮面以外で! 』 「西田さんかぁ~・・・。うーん、難しいなぁ。お兄さんって感じでもないし、お父さんって感じでもない。うぅ~~ん??ほんとに難しい。敢えて例えるなら・・・ドラ○もんみたいな? なんか西田さんに不可能はないって感じがするんだもん。絶対的な安心感がある人かな。地球が滅びても西田さんの近くにいれば生き残れるかもって思える感じ?」 「西田は俺の秘書だろ。それ以上でも以下でもねぇよ」 「答えになってないじゃん・・・。ってあたしも人のこと言えないか。初っぱなから難しい~!」 Q.K様からの質問 『 作者(みやとも)のことをどう思ってる? また言いたいことはありますか? 』 「え~と、アッチの方の話をもっと手抜きしてください(小声)」 「あぁ?!お前何言ってんだよ。むしろ手抜きし過ぎだろうが!もっと気合入れて書けっ!!」 「ちょっ・・・勝手なこと言わないでよ! あれ以上なんて冗談じゃないからっ!」 「ざけんな! どんだけ俺が手を抜いてやってると思ってんだ。俺が本気になったらなぁ、お前の体の隅々まで<ピーーーーー:以下自主規制> 「きゃああああ! 何言ってんのよ! やめなさいよぉっ!!」(バシッバシッ!:殴打音) Q.多くの皆様からの質問 『 子どもは何人ほしいですか? 』 「なんか照れくさいけど・・・3人は欲しいかな。3人いると小さな社会が成立するって言うし」 「何人でも構わねーよ。できねぇならできねぇのも、際限なくできるのも俺にとっては変わらねぇよ。こいつがいるならそれで」 「相変わらず恥ずかしげもなくサラッと言えるよね・・・。っていうか産むの私なんだから! 簡単に言わないでよ、も~!」 「まぁ、やった数だけできるとしたらギネスに載るんじゃねぇか?(ニヤリ)」 「ゾゾッ・・・!」 Q.U様からの質問 『 あなたの欠片の中で、つくしちゃんが寿退社で会社の方々と飲み会をやりましたね。最後の日です。そこに道明寺さんが駆けつけましたが、皆さんの飲み代を道明寺さんがお支払になったとのことですが、ちなみに飲み代は全部でおいくらかかりましたか?お支払はカードですか?キャッシュですか? 』 「あー、そういえばそんなこともあったね。実際のところどうだったの?」 「あ? 俺がいちいち値段なんて見るわけねーだろが。10万も100万も俺には変わらねぇんだよ。支払いは基本カードだな。現金は持ち歩いてねぇし。キャッシュで出せっつーならいつでも払ってやるよ」 「多分あの時の人数からして15万くらいだったと思います。お金持ちの感覚って理解できない・・・」 Q.Y様からの質問 『 つくしにお菓子の小箱をいつも渡していたときの心境を教えてください 』 「これは司への質問だよね。あたしも聞いてみたい!」 「どうって言われても・・・俺の場合考えるよりも先に行動に移すタイプだからな。ラッピングされた小さい箱を見た瞬間お前の笑う顔が浮かんで・・・。何がどうっつーよりもただお前に笑って欲しかった。それだけだ」 「司・・・(ジーン)」 「つーかこんなことまで言う必要あんのかよ?!」 Q.S様からの質問 『 2人のお初話、素敵でした! 残り4日間の事も教えてください。もちろん夜も ♡ 』 「うぅっ、その話はやめて~!! 残り4日って何したっけ? 2日目はドライブ三昧でしょ? 3日目はパラセーリングとか海でのレジャーを楽しんだよね。でも張り切りすぎてあたしがバテちゃって。 4日目はほとんどヴィラで過ごしたかな。で、最終日は買い物に行ったりヴィラでゆっくり過ごしたり。現実に戻る前の時間をゆったり過ごした感じかな。あ、一緒に料理もしたよね。楽しかったなぁ~!」 「肝心な夜の話が抜けてんだろ。まぁ言うまでもねぇと思うけど毎晩抱いたぜ。日を追うごとにこいつの体が俺を受け入れていくように解れていって、4日目辺りからは・・・」 「ぎゃあああああああああああっ!!! やめてっ! やめてぇえええええええっっ!!!!」 Q.同じくS様からの質問 『 あなたの欠片26話が大好きです。つくしちゃんが気持ちを自覚したときのあのキス、司君はどんな気持ちだったか教えてください 』 「う・・・またこんな質問?!」 「どんな気持ちって・・・さっきから言ってっけど俺は考えるよりも感じるタイプだからな。・・・なんだ、本当の意味でやっとお前に触れられたような気がしたな。それまでは心と体が別のところにあるような感じだったけど。お前はどうなんだよ」 「えっ?! あたしへの質問じゃないじゃん! ・・・うぅ、なんていうか・・・フワフワ浮いて、天にも昇るような感覚ってこんな感じなのかなぁ・・・って思ったよ。・・・っていやだ! 何言わせんのよっ!!バシッ!!(殴打音)」 Q.名無し様からの質問 『 あり得ないのはわかってるけど聞いてみたい。相手が浮気したらどうしますか? 』 「えぇ~~っ! なんか想像つかないな・・・。でも仮定の話として聞きたいんだもんね? うぅ~ん・・・もう一生エッチしないと思う。なんか・・・ムリだもん」 「んだとっ?! ふざけんな! 仮定だとしても許さねぇぞっ!!」 「ちょっ・・・落ち着いてよ! ただの質問なんだからっ!! 司はどうなのよっ?」 「俺? 万が一お前が浮気したら・・・・・・? バキバキバキバキッ(その辺にあるものを握り潰す音)」 「きゃーーーっ、何やってんのよぉっ!!」 「こんなふざけた質問したのはどこのどいつだぁっ!! まとめてブッ殺してやるっ!!」 「キャーーーー!やめなさいってばぁっ!!」 Q.名無し様からの質問 『 相手に先立たれたら耐えられますか? 』 「わぁ~、結構リアルな質問だね。でもいつかは誰しも迎えることだもんね・・・。そうだなぁ・・・看取られるか看取るかだったら、あたしは看取る方が幸せかな。だって司を残して死ねないもん」 「俺は死なねぇ。・・・って言いたいところだけどな。死ぬときは一緒だって思ってる。それ以外のことは考えてねぇ」 Q.名無し様からの質問 『 つくしちゃん、初めて生でエッチしたときと中に出されたときの感想は? 』 「ぎゃあああああああ! なっ、なっ、なんて事を聞くのよっ???!!!」 「お、なかなかいい質問する奴じゃねぇか。ほら、さっさと答えろよ」 「む、ムリムリムリムリムリ!!! そんなこと何も覚えてないからっ!!」 「んなわけねぇだろが。俺は今でもはっきり覚えてるぜ。溶岩かと思うくらい熱いお前の中がギューッと俺に纏わり付いて離れなくて、出した時なんかは・・・」 「いやあああああああああっ!!!!バシィィィィィッ!!!(破壊音)」 Q.名無し様からの質問 『 子どもが女の子しかできなかったらどうする? 』 「え~? 全然構わないかな。性別なんて何もこだわらないし」 「後継者の話してんのか? そんなんその時考えりゃいいだろ。子どもだから後継者にならなきゃなんねぇなんてバカバカしいだろ。継ぐ器があるやつが継げばいいだけの話だ」 「うわぁ・・・なんか珍しく司がいいこと言ってる・・・!」 「おい、珍しくとはなんだ珍しくとは」 Q.名無し様からの質問 『 つくしちゃんって結構もてますよね。今後道明寺財閥でも手出しができないような人につくしちゃんが狙われたら勝てますか? 』 「え・・・あたし全然もてないんですけど」 「誰だ、こんなくだらねぇ質問をしやがった奴は。勝てるか、だと? 聞くまでもねぇ質問してんじゃねーぞ? そもそも同じ土俵にすら上がれねぇんだよ! ブッ飛ばすぞっ!!」 Q.E様からの質問 『 つくしの格好の内、一番挑発される格好は次の3つの内どれですか?裸は抜かして(笑) ①彼シャツ。(笑)司の仕事着の白Yシャツとショーツだけな姿♪(裾の長さは太ももが半分隠れる程度。ノーブラ。Yシャツは第二ボタンまで開ける。笑) ②バスタオル巻いただけで下着は一切つけない姿♪(タオルの長さはお尻がギリ隠れるくらいの。笑) ③身体の線がスケスケなレースが付いたうすピンク色のベビードールの上下を着た姿♪ 』 「な、何なのこの変態さんはっ?! 設定細かすぎでしょっ!!」 「どれも捨て難いな・・・」 「っていうか今までで一番真剣に悩むとかどういうことよっ?!」 「こいつって意外なところにエロスイッチがあったりするからな・・・案外エロくない格好の方がそそることも多い気がするんだよな。でもやっぱ王道のエロ路線も捨てがたいし・・・ブツブツ」 「いい加減戻って来なさいよぉ~~~っ!!!」 「まぁ結論はこいつなら何でもいいってことだ」 Q.T様からの質問 『 お互い相手の一番好きなところは? 』 「なんだろう? 良くも悪くも裏表がないところかな。絶対嘘つかない人だから」 「何が一番かなんて考えたこともねーよ。俺の細胞がこいつを求めてる。それだけだ」 Q.T様からの質問 『 お互いのここは直してほしいところは? 』 「うーん、カッとなりやすいところかな。でも昔に比べれば別人みたいだけどね」 「嬉しいくせにいちいちギャーギャー騒ぐところだな。でもまぁそこがそそるときもあるんだけどな」 「なっ、何言ってんのよっ!!」 「ほらな」 Q.T様からの質問 『 2人の一番の思い出は? 』 「えぇ~~っ?! 難しすぎる質問だなぁ。全部が大事な思い出だけど・・・記憶を失ってても司を好きになったことかな。何もわからなくても同じ人を好きになれたってことが・・・嬉しかったかも」 「お前・・・可愛いこと言ってんじゃねぇぞっ!!」 「えっ? ぎゃーーーーーっ!! 離して離して、離してぇ~~~~~っ!!!」 (ブチューーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!) Q.T様からの質問 『 ベッドの中で望むことってありますか? 』 「もっと手加減してくださいっ!!(即答)」 「もっと体力つけろよ。弱すぎだろ」 「あんたが異常なのよっ!!」 Q.44歳男性(職業:自営業)様からの質問 『 司さん、つくしさん、こんにちは。いつも楽しくイチャコラ拝見させていただいております。 さて、本日は質問と言うか僕の悩みを聞いていただきたくご相談に伺いました。 最近夜の..あっちの方が..歳のせいか、精神的なものか、体力の衰えなのか、原因はわかりませんが途中で中折れしてしまい達成感を得ることができません。 どうすれば司さんのように鬼体力を持つことができるのか、そしてどうすればつくしさんのように妻にも「もうダメ」と言わせることができるか...ぜひご教唆いただきたい。 年齢の違いは重々承知しております。どうぞよろしくお願いいたします。 』 「な、何なの・・・? 質問者も質問も全てが怪しすぎるんですけど・・・。 っていうかあたし達に聞くこと自体おかしくない? そういうことは専門医に聞くべきでしょ?!」 「まぁ女のお前にはわからねぇ世界だろうな」 「え・・・じゃあ司はこの怪しさ全開の人の気持ちがわかるってこと?」 「いや? 全く。俺には無縁の話だからな(キッパリ)」 「そんなドヤ顔して言われても困るんだけど」 「まぁ男として思うように好きな女を抱けないっつー辛さはよくわかるよな。ただ年齢とか関係ねぇだろ? 途中で駄目になるようならそいつにとって真に求めてる女じゃねぇってだけの話だろ」 「え、そういう問題なの? 野獣のあんたに言われても・・・」 「あぁ? 誰が野獣だよ」 「あんた以外にいないでしょ・・・(呆)」 「俺が獣のように求めるのはお前だけだろうか。俺は他の女がどんなに迫ってこようと一切反応なんかしねーぞ。その一方でお前が相手ならどんな状況だって反応できるぜ?」 「なっ・・・?! 何言ってんのよ!」 「なんだよ、何もおかしなことなんか言ってねぇだろうが。結局はそういうことだろ? お前らは俺のことを野獣っつーけどな、俺が野獣なんじゃなくてお前を求める俺がそうなるってだけの話だ。俺は唯一無二の相手を見つけたってことだろ? つまりはそいつはそれだけの相手に出逢えてねぇってだけの話だ」 「・・・・・・」 「なんだよ? 何黙り込んでんだよ」 「・・・いや、だって、なんか・・・」 「・・・はーん? 俺の言ったことが説得力があり過ぎて感動してんだな? んだよ、相変わらず可愛いところがあるじゃねーか。お前がそんなんだから俺がこんなになるんだろ?」 「ぎ、ぎゃあああっ! どこ触らせてんのよっ!! っていうか何反応してんのよぉっ!!」 「あぁ? 好きな女にそんな顔されたら誰だってそうなるっつんだよ。いいから責任取れ。早くこっち来いよ」 「いやっ、まだ質問タイムは終わってないからっ!」 「そんなん知るか! 今日はこれで終わりだ。ほら、行くぞっ!!」 「ぎゃあ~~~っ! 人攫いぃ~! 助けてぇ~~!! 質問した変態は一体誰よぉ~~っっ?! あんたが余計なこと聞くからあたしがこんな・・・!」 「ギャーギャーうるせぇよ。 ・・・ま、そのうち泣き声に変えてやるけどな」 「ヒィイィッ! 助けてぇ~~~~! ・・・! ・・・! ・・・! ・・・・・・・!」 バタンっ!!!! その後1時間を過ぎても、2時間を過ぎても2人が寝室から出てくることはありませんでした。 つくしちゃんは今頃泣いているのでしょうか? それとも啼いている・・・? ということで続きはまた次回! ヾ(≧∀≦)ノ
明日は定刻 (0時) に後編を、朝6時に短編 (幸せの果実10 の後日談) をお届け予定です。 是非後日談が見たい! とのリクエストを結構いただきましたので、休日にいつもより濃いめのイチャコラをば (≧∀≦) |
新婚さんいらっしゃ~い♪ 後編
2015 / 04 / 12 ( Sun ) 「皆さんこんにちは・・・」
「おい、何そんなにテンションダダ下がりになってんだよ。お前がノリノリで始めた企画だろうが。ちゃんとやれよ」 「あっ、あんたがそれを言うのっ?! 誰のせいでこんなにっ!」 「あぁ? 文句を言うなら質問した奴らに言えよ。俺は素直に答えただけだろうが。それにそもそもこんなしょーもねぇ企画を考えた奴は誰だよ」 「そ、それは・・・みやともっ、あんたでしょっ!!」 (ドキーーーッ!!) 「あんたのせいであたしは、あたしは・・・!」 「まーまー、ピーチクパーチク言ってんじゃねぇよ。相変わらず素直じゃねぇ奴だな。あんだけ気持ちよさそうによがってたくせに今さらなんだかんだ言うんじゃねぇよ」 「な゛っ?! ななななななななっ??!!!」 「お、早速始まるみたいだぜ」 「うぅっ~~~っ・・・!」 Q.M様からの質問 『 3日休めたら何をしたいですか? 』 「3日かぁ。司ってなかなか休めないもんね。特別なことはしなくてもいいかな。ゆっくり休んでもらって、・・・あ、温泉くらいなら行きたいかも」 「そんなん決まってんだろ。やってやってやりまく・・・」 「もう充分でしょおおおおおおお!!!!!」 Q.M様からの質問 『 F3はどんな人と結婚すると思いますか? ちなみに私は全く想像できません(笑) 』 「えぇっ?! あたしも全っ然想像つかないよ。・・・あ、でも意外と美作さんは普通に結婚しそうな気がする。令嬢かもしれないし、案外一般人の女性とかもあり得そう。美作さんならどんな立場の女性とでもうまくバランス取ってやっていけそうだもん」 「そうかもな。総二郎は・・・あいつもなんだかんだいざとなればすんなり結婚すんのかもしれねーな。本気で好きになった女と結婚する可能性は低そうな気はするけど」 「え~、なんかそれって悲しい」 「あいつがそう簡単に変わると思うか? 結構ドライに割り切ってる男だからな」 「そんなもん?」 「俺にはわかんねーけどそんなもんだろ。 類の場合は・・・」 「類が結婚なんて想像できないっ!!」 「おわっ、何だよいきなり? 食い付きすぎだろ!」 「あ、ごめん。でもどうやったって想像できいないんだもん。類が選ぶ女の人ってどんな人なんだろう・・・?」 「・・・・・・おい、何を沈んだ顔してやがる。まさかお前、あいつに未練が・・・」 「はぁっ?! そんなわけないじゃん! 何言ってんの?!」 「じゃあなんでそんな顔してんだよ! お前はいっつもいっつも何かってーと類に反応しやがって」 「何言って・・・! あんたこそ・・・! ギャーピーギャーピー!! (以下総カット) 」 Q.M様からの質問 『 記憶喪失になっていたつくしが類と恋人同士→大人の関係になっていたら…さすがに諦めましたか? 』 「ちょ、ちょっと・・・? あくまで質問だからね? キレないでよ?」 「・・・・・・・・・」 「司・・・?」 「俺はお前と別れたつもりはこれっぽっちもなかったからな。俺にとってもお前にとってもそんなことはあり得ねぇ話だろ。・・・まぁ億万が一にもそんなことがあったとしても俺の手に取り戻すだけだろ。相手が類だろうと関係ねぇよ。お前は俺のもんだ。ぜってぇに誰にも渡さねぇ」 「司・・・」 「っつーかこんな質問するクソ野郎は一体どこのどいつだっ! 出てきやがれっっ!!!」 「わーーーーっ! 待って待ってまって~~~っ!!!」 Q.M様からの質問 『 二人の結婚式が神尾先生の漫画で見られるのはいつ頃になると思いますか? 』 「えぇ~っ! それはあたしが一番聞きたいかも・・・」 「俺たちはもう全て済んでるんだし今さら知ったこっちゃねぇな」 「って自分たちのことなんですけど・・・」 Q.M様からの質問 『 今までで相手に一番腹が立ったのはいつ? 』 「うーーーん? 何だかんだ結局のところ出会った頃が一番嫌だったかも。まさかこうして夫婦になるなんて夢にも思わなかったし。アハハ」 「いつっつーよりもこいつの危機感のなさにはいつもイライラさせられてるな」 Q.M様からの質問 『 もっと早くに二人が結ばれていたらその後、どうなっていたと思う? 』 「どうなんだろう? 案外ケンカ別れしてたり? なーんてね」 「子どもが5人くらいいるんじゃねぇか?」 「え゛っ! ペース早すぎでしょ!」 「そうか? 今のような生活してりゃそうなるだろ?」 「う・・・リアル過ぎるからやめてよ・・・」 Q.M様からの質問 『 結婚生活で相手に望むことは何ですか? 』 「なんだろう・・・望むっていうより、いつも自然体でいられたらいいなって思ってる」 「こいつが傍にいるなら特に望むことなんかねぇな」 Q.K様からの質問 『 最後の晩餐、何を食べますか? 』 「えぇ~~っ! 難しすぎるよっ。だってあれも食べたいしこれも食べたいし、お寿司もいいけどおにぎりもいいなぁ。お肉もいいけどお魚も捨てがたい・・・あぁ~~っ、どうせならありとあらゆるものを食べて死にたいっ!!」 「愚問だな。 俺が食いてぇもんなんてこの世に1つしかねぇんだよ」 「えっ?! ぎゃあ~~~~~っ!! (ブッチューーーーーーー!!!)」 Q.K様からの質問 『 つくしちゃんの妊娠中、相当我慢が必要だけど、それでも子だくさんを目指しますか? 』 「うっ・・・なんか嫌な流れの質問だなぁ。あたしは何も考えないで自然に身を任せます」 「目指すかどうかなんて知らねーよ。こいつを求めて結果できたらそれを受け入れるだけだ。それに我慢なんかするつもりはねぇぞ? 何もぶち込むだけが全てじゃねぇからな。お互いが満足する方法なんて山ほどあるだろ?」 「ひっ・・・! 息吹きかけないでよ! っていうかそんなのお断りしますっ!!」 「却下」 Q.P様からの質問 『 お互いの身体で一番好きな場所はどこですか? 』 「うぅうっ、またこんな質問?」 「いちいちエロい方向で受け取ってるお前がおかしんだろ」 「うっ・・・そ、そっか。じゃあ真面目な話ね。あたしはあんたの手が好きだな。なんかその手に包まれてるとすっごく安心できるんだもん」 「お前・・・誘ってんのか?」 「はっ?! 違う違う違う違うっ!!! 断じて違いますっ!!」 「まぁ照れんなよ。俺は1つになんて絞れねぇからな。色気はねぇはずなのにその1つ1つのパーツがエロくて触り心地が最高で、あそこなんかはきつ・・・」 「いい加減にしなさいよおおおおおおっ!!!バシーーーーーンッ!!(殴打音)」 Q.P様からの質問 『 一緒にいるときにおならしたことありますか? 』 「な、ないないないないっ! こう見えてそういうことできないタイプなんですっ」 「どうだかな。意識したことなんかねーな。してんじゃねぇのか?」 「そういえば司のも記憶にないかも・・・っていうかF4のおなら自体イメージできない。したとしても薔薇の香りがするとか?」 「アホか。人間だから普通にするだろうよ。つーかお前が巨大な屁ぇこいたところで気にもしねぇぜ?」 「巨大なって・・・人をスカンクみたいに言わないでよっ!」 Q.P様からの質問 『 一番思い出に残っているデートの場所はどこですか? 』 「デートかぁ・・・。なんだかんだ言ってあたしたちってデートって数えるほどしかしてないよね」 「だな」 「なんだろう、やっぱり高校生の時の庶民デートかな。あれから辛いこともいっぱいあったけど、あそこがあたしたちの原点って感じがするから」 「そうかもしんねーな」 Q.P様からの質問 『 これだけは相手に内緒ということはありますか? 』 「えっ、秘密・・・?」 「隠し事なんかあるわけねーだろ。携帯だろうと体だろうとどこでも調べてもらって構わねぇよ」 「・・・・・・」 「・・・なんだよ。まさかお前あんのか?」 「い、いやっ? 何もないよっ?」 「なんだその不自然な笑いはっ! 隠さずに全部吐きやがれっ!! 言わねぇならただじゃおかねぇぞっ!!」 「きゃーーーっきゃーーーっ!! 何もないって、何もないってばぁっ!!!」 「嘘つくんじゃねぇっ!!!」 「いやあ~~~~~~っ!!! 変なところ触らないでよぉっ!!!(桜子から胸が大きくなる下着をもらって密かにつけたりしてるだなんて言えないっ!!)」 Q.K様からの質問 『 一日だけ、お互いの体が入れ替わります。 さて、何をしますか? 』 「わぁ! こういうのって楽しそう! 誰でも1回はこういうこと考えたことってきっとあるよね。そうだなぁ、まずは司くらいの目線からの景色を楽しみたい! いっつも見上げてばっかりなんだもん。上から見る景色って楽しそう!」 「女自体には興味ねぇからな。こいつだけだし。・・・まぁエロいことはあとからでもじっくりやるとして、まずはこいつに好意をもってる男共のところに行って手当たり次第こっぴどく振っていく。もう二度とそんな気が起きないってくらい再起不能にしてやる」 「ちょっ・・・やめなさいよ! っていうかそんな人どこにもいないからっ!」 「な、こいつがこんなんだから俺が手ぇ回すしかねぇんだよ」 Q.K様からの質問 『 タイムマシンに乗って好きな時にタイムスリップできます。さて、どの時期にしますか? 』 「はいはいはいっ! 司が幼稚園生くらいの頃に行ってみたいっ! きっとまだ可愛げがあったんでしょ? 会ったらいっぱいいい子いい子してあげたい!」 「特にねぇな・・・。まぁ強いて挙げるなら類とキスしたっつー過去を消し去ってやるくらいだな」 「うっ・・・、それ言ったら自分なんか中学生の頃やりまくってたんじゃん!」 「あぁ? 俺が自分からやったんじゃねぇよ!」 「そんなの関係ないじゃん! 嫌ならしなきゃいいだけでしょ?! あたしだって自分からしたわけじゃないもん!」 「ったりめーだろが! つーかあの類が自分からするってことが問題なんだろうが! つーか逃げないって事はお前は嫌がってないってことだろうが!」 「知らないよっ。自分の事棚に上げて人のことグチグチ言わないでよっ!!」 「んだとっ?! てめぇは・・・! ・・・・・・・・! ・・・! ・・・・・・!」 (その後散々揉めた後濃厚なキスで元通りになりました。 これだからバカップルは・・・) Q.K様からの質問 『 自分が息を引き取る際、最後に何と言いますか?または、見送る側は何と答えますか? 』 「また切ない質問だな~。そんなのわかんないよ・・・。でも笑顔でお別れしたいよ」 「言葉なんかで表せるような陳腐な人生じゃねぇだろ。今の時点でそんなことを考えること自体愚問だな」 Q.M様からの質問 『 好きなお互いの表情は? 』 「そんなの・・・」 「決まってんだろ」 「「 笑った顔 」」 「わぁ! 初めてハモったよ?! 嬉しいっ!!」 「まぁ普通に考えりゃそうなるだろ。あとはお前がイった時の顔もかなりいいけどな」 「ぎゃあっ!! せっかく人が幸せに浸ってるのになんでそういうこと言うのよっ!!!」 「仕方ねぇだろ。実際すげぇいい顔すんだから。なんなら今から自分で見てみるか?」 「い゛っ?! いいですいいですいいですいいですっ! もう間に合ってますっ!!!」 最後の質問です。 『 2人の愛は永遠ですか? 』 「それは・・・」 「んなことわざわざ聞く必要があんのか?」 「 もちろんです! 」 「 当たり前だろ 」 そう言い終えたあとフッと視線が絡み合うと、どちらからともなく引き寄せられるように唇が重なった。すぐにつくしの大好きな大きな手がつくしの背中に回されると、あっという間にその体が宙に浮く。つくしは抵抗することはしなかった。 唇を重ねたままつくしの手も自然と司の首の後ろへと回る。 司の口角がフッと上がると、つくしを抱き上げたまま寝室へと足を進めていった。 やがてバタンという音をたてて奥の扉が閉ざされた。 結局口で何と言おうとも、この2人は離れられない運命なのだ。 だからそろそろ素直に認めたらどうですか? ・・・つくしちゃん? ・・・って、今の2人に何を言っても届くはずがないですよね? 末永くお幸せに!
くだらない企画にご協力くださった皆様、誠に有難うございました! 皆様からの質問が楽しくて心から楽しませていただきました。感謝感謝です(*^o^*) 今日はM様からの質問がやたらと多かったですが、念のためこれは私ではございませんよ?(笑)そしていずれも違う方です。みやとも宅にはM様が多数お越しだとあらためて気付きました(笑) 222222のキリ番も是非チャレンジしてくださいね!我が家は訪問者数が毎日ほぼ安定しているので、今のペースだと来週の金曜か土曜が狙い目だと思いますよ(o^^o) そして今日は朝6時にも甘い短編をお届け予定ですのでそちらもどうぞご覧くださいませ♪ |