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ねがいごと、ひとつ
2015 / 08 / 30 ( Sun )
今日は誰もが主人公になれる1年にたった1度の日。

ドキドキ、ワクワク、ぼくはこの日が来るのが楽しみでずっと眠れなかったんだ。


「誠お坊ちゃま、お誕生日おめでとうございます」
「おめでとうございます!」

ほらね、少し歩けばみんながそう声をかけてくれる。
ぼくは今どんな顔をしているんだろう?
お邸の人たちに負けないくらい笑ってるのかな?
自分じゃ見えないからよくわかんないや。

プレゼントは何にする?
すぐに 「ぜいたく」 をしてしまうパパはいっつもママに怒られてるけど、この日だけはママも違う。
よっぽどとんでもないことを言わない限り、ママも笑って 「いいよ」 って言ってくれるんだ。

だからぼくは考えた。
何日も、何日も、いつもより遅くまで起きて、そしていつもより早起きしてずっと考えた。

大きな大きなプラモデル?
世界一周旅行?
アフリカに動物を見に行く?


___ ううん、そんなものじゃ全然足らない。


数え切れないくらい考えて迎えた5回目の誕生日の今日、やっとぼくのねがいがかなうんだ。




「タマっ! みんなはもう来てるっ?」
「これはこれは誠坊ちゃま。えぇえぇ、皆さんもうお揃いですよ」
「やったぁ~~!!」

ぼくが飛んで跳ねて喜ぶと、タマの顔のしわが一気にふえた。
タマはパパが生まれる前からずっとこのお邸で働いてる人。
パパが生きた化石だなんて言ってたまにママに怒られてるけど。
こわいときもあるけど、ぼくの本当のおばあちゃんみたいに優しいんだ。


バンッ!!


「おっ、やっと主役が来たな~」
「誠くぅ~ん、久しぶり~!」

走ってやっとのこと辿り着いた部屋には、久しぶりに見る顔がたくさん。
みんながこの日のために集まってくれたんだと思うと、嬉しくってピノキオみたいに鼻が高くなっちゃうかもしれない。
でも、まずはその前に・・・

「パパッ!!」
「うおっ?!」

こっちを見た瞬間思いっきり飛びついたぼくをパパはナイスキャッチしてくれた。
ちょっとだけよろけちゃったけど。

「おまっ、いきなり飛びつくなっつの!」
「お帰りなさいっ! お仕事大変だった?」
「あ? あぁ、そうでもねぇぞ。ちゃんと今日に間に合うように帰って来ただろ?」
「うんっ!!」
「フッ・・・またえらい嬉しそうだな、おい」
「うれしいに決まってるじゃん!」

パパがあきれたように笑ってるけど、ぼく全然おかしくなんかないよ?
だって、お仕事で10日くらい日本を離れてたパパが今日に間に合うかどうか、ぼくにとってはすごくすごく大きな問題だったんだから。
そんなのとびきりうれしいに決まってる!

「あはは、誠~、よかったね~」
「うんっ!」

でもぼく知ってるよ。本当はママだってパパが帰って来たことが嬉しくてしょうがないってこと。
いつもより何倍もママが元気で嬉しそうになるんだもん。ママは絶対に違うって言うだろうけどね。
でも全然隠せてないよ? ママ。

「それで欲しいものは決まったの? 当日になったら言うなんて言ってたけど」
「うん! もちろん決まってるよ!」
「それじゃあなぁに? 教えて?」

いつもは誕生日の前に願いごとを言うのに、今回は違う。
パーティの時に教えるねって約束してたから、まだぼく以外は誰も知らないんだ。

「うん、じゃあ順番に言っていくね」
「え? 順番・・・?」

きょとんとするママにニッコリ笑うと、ぼくはパパから下りてある場所を目指して走った。


「 西田さんっ! 」


まさか自分のところに来ると思ってなかったのか、走ってきたぼくに西田さんも驚いてる。

「誠様・・・いかがなされましたか?」
「お馬さんやってっ!」
「は・・・」

可愛い顔から飛び出したトンデモ発言にその場にいた全員の動きが止まった。

「お馬さん・・・ですか?」
「うんっ! ぼくね、何日も考えたんだよ?」
「・・・・・・」

ニッコニコ天使の笑顔の少年 vs サイボーグ。
この勝負の行方は・・・?
思わず周囲の人間がゴクリと息を呑む。

「・・・かしこまりました。誠様のためとあらば喜んで」
「ほんとっ?! やったぁっ!!」

ぴょんぴょん跳びはねるぼくのとろこへママが走って来た。なんでそんな顔してるの?

「あの、西田さん、無理はしなくてもいいですよ・・・?」
「いえ、今日は誠様のお誕生日ですから。こんなことで喜んでいただけるのならばいくらでも」
「西田さん・・・」
「じゃあやってやってっ!」
「かしこまりました」

そう言ってスーツの上着を脱ぐと、西田さんはみんなが注目している中で四つん這いになった。
ぼくはすぐにその背中に飛び乗った。
ぼくが乗ったのを確認すると、お馬がゆっくりと動き出す。
わぁ~い! ずっと前から西田さんにやってもらいたかったんだ!

「すげぇ・・・あの西田さんを馬にしてやがる・・・」
「さすがは牧野と司の遺伝子を受け継いだだけはあるな・・・恐るべし」
「くくくっ・・・!」

類にぃ、総二郎にぃ、あきらにぃが何だかすごく楽しそうにこっちを見てる。
もしかしてうらやましいのかなぁ? でもだめだよ! 今日はぼくの誕生日なんだからね?!

「ぶははっ! 西田、お前なかなか様になってんじゃねーか。くくくっ・・・!」

中でもパパは特に笑ってた。西田さんを指差して大笑い。
パパ、人に指差しちゃだめなんだよ!

「今日は誠さまのお誕生日ですから。私からのささやかなプレゼントです」
「お前、馬やりながら真顔で答えてんじゃねーよ。・・・にしてもお前が馬とは・・・ぶふっ!」
「ちょっと司! 西田さん厚意でやってくれてるんだから笑わないの! 誠嬉しそうじゃん!」
「それはそれ、これはこれだろ。お前だって半笑いになってんだろうが」
「そっ、そんなことは・・・!」

ママが慌てて西田さんに背中を向けちゃった。パパはますます大笑い。

「ぱーぱー、たーたんも~!」
「何っ?!」

じーっとこれまでの様子を見ていた弟の尊(たける)がパパの洋服を引っ張っておねだりし始めた。
尊は一度言い始めたらなかなかあきらめないから、あまりのねばりに時々パパからなっとーマンって呼ばれてるんだ。

「おい司ぁ~、お前の可愛い息子がおねだりしてんじゃねーか。さっさとやってやれよ」
「くっ・・・総二郎、てめぇ・・・面白がってんじゃねぇぞ」
「人聞き悪いこと言うんじゃねぇよ。んなわけあるかよ、なぁ?」

そう言って総二郎とあきらはニヤニヤと顔を見合わせる。
司の額に青筋が浮かんだが、すぐに尊がしがみついてきてどうやら逃げ場はないらしい。

「くっ、なんだって俺がこいつらの前でんなことを・・・」
「パパ、頑張って~!」

ママの応援をうけながら、パパもしぶしぶお馬さんになった。
パパはおっきいから、尊でも乗れるようにうーんとちっちゃくなってなんだか動きづらそうだ。
尊はママの手を借りながら大喜びでよじ登っていくと、とっても嬉しそうにぼくに手をふった。

「にいに~!」
「お~い!」

負けじとぼくも大きくふり返す。

「野獣対サイボーグの馬対決とかすげー構図だな、おい」
「誠の誕生日じゃなければあいつ今頃ブチ切れてるところじゃねーか?」
「暴れ馬も子どもの願いには逆らえないってか・・・くくくっ」

馬と化して広い室内を縦横無尽に動き回る司と西田の図に、その場にいた誰もが大笑いした。特にF3に至っては涙を流すんじゃないかというほどに大爆笑。時折司の鋭い睨みを感じつつも、子どもを盾にここぞとばかりに笑いたい放題だ。

___ が。

「次は総二郎にぃの番だからね!」
「なにぃっ?!」

まさかの宣告にそれまで笑っていた総二郎がフリーズする。

「その次はあきらにぃで、最後は類にぃ! みんなじゅんばんだよ!」
「ぶはっ! てめーら、ざまーみやがれ! お前らの時には盛大に笑ってやるから覚悟してろよ!」
「「「 ・・・・・・ 」」」

ぼくの言った言葉にどうしてだがパパが大喜び。
何がそんなに嬉しいのかぼくにはよくわかんないけど、でも楽しそうだからそれでいいや。

「さすが牧野と司の息子・・・抜かりねぇぜ」

そんなことを言われてたなんてこと、ぼくは全然知らないけどね。





***


「ぜぇはぁぜぇはぁ・・・誠、もう勘弁してくれ・・・ちょっと休憩だ」

あれから大の大人が小さな子どもに扱き使われること約30分。
気が付けば全員が汗だくで息も切れ切れ。見ているだけの大人達は終始爆笑の渦だ。

「えへへ、みんなありがとう! たのしかったぁ~! ・・・あれ、西田さん汗がすごいけど大丈夫?」
「・・・大丈夫です。どうぞご心配なく」
「西田さんが息を切らして汗かいてるところなんて初めて見たかも・・・」

ママが汗をふいている西田さんに驚いてるけど、動いたら出るのが普通じゃないのかなぁ?

「誠、プレゼントってもしかしてこれだけなの?」
「ううん、違うよ。まだまだあるんだ!」
「おい誠、馬の次は牛とか冗談じゃねーぞ」
「あはは、おもしろーい! それもいいかもなぁ~!」
「おいっ!」
「じゃあ他のお願いってなぁに?」
「うんとね、それは・・・」


ギギィーーバタンッ


ちょうどその時開いた扉から現れた人を見て、僕の目がまん丸に大きくなった。


「おばあさまーーーっ!!!」


嬉しくて嬉しくて思いっきり走って行くと、立っていたおばあさまが座って待ってくれていた。
ぼくはそんなおばあさまにしがみつく。

「おかえりなさいっ! 来てくれたんだねっ!!」
「遅くなりましたが間に合ったようで何よりです」
「お義母様・・・お忙しいのにわざわざありがとうございます」

ママはおばあさまにゆっくりと頭を下げた。

「手書きの招待状をいただきましたからね。今年は仕事の方も都合がつきましたし。礼を言われるようなことではありません」
「はい。でも私もこの子も嬉しいから何度でも言いたいんです。ありがとうございます」
「・・・」

ママはおばあさまに会うといつも本当に嬉しそうに笑ってる。
ぼくのおばあさまはNYに住んでいて、1年に数回しか会えない人。
誕生日の時だっていつも来てもらえるわけじゃない。もちろん会えなくてもいつも素敵なプレゼントが届くんだけど・・・今日はどうしてもおばあさまに来て欲しかったんだ。
だからぼくはいっしょうけんめい手紙を書いた。想いが届きますようにって。

そしたら本当に来てくれた! がんばってよかったぁ!

「おばあさま、ぼくから1つねがいごとを言ってもいい?」
「何ですか?」

ぼくはおばあさまの手をギュッと握りしめた。

「あのね、・・・ぼく、おばあさまとにらめっこしたい!」
「えっ!!」

大きな声を出したのはおばあさまじゃなくてママ。
どうしてそんなにびっくりしているの?

「ま、ままままま、誠っ! それはちょっと・・・ね?」
「どうして? ぼくおばあさまとにらめっこしたいの!」
「でも、それは、なんていうか、その・・・」

急に焦りだしたママを見て思う。
やっぱりおばあさまにこんなことを言うなんてわがままなのかな?
おばあさまは怖い人ではないけど、めったに笑ったりもしない。
パパはそれが 「せいじょうなこと」 だなんて言ってたけど、ぼくにはよくわからないんだ。
何かが欲しいわけじゃない。ただにらめっこをしたいだけなのに、そんなにむずかしいおねがいなのかなぁ・・・?

「・・・おばあさまはどう思いますか? おばあさまがいやなことはぼくはしたくない」

どんどん小さな声になっていく僕の頭にふわりと何かが触れた。
びっくりして顔を上げたらおばあさまが頭をなでていた。

「・・・今日は何の日ですか?」
「え? ・・・ぼくの・・・たんじょうび・・・です」
「プレゼントは何もいらないと言っていたあなたの願いがそれだというのならば、私はあなたにそのプレゼントをあげなければなりませんね」
「えっ? それって・・・」
「お義母様?!」
「ただし。勝負は1回のみですよ。よろしいですね?」

きっと今のぼくはぽかーんとしていると思う。
でもそれもほんの少しだけ。言われた言葉の意味がわかると、ぼくはもう一度おばあさまにしがみついた。

「うんっ! おばあさま、ありがとうっっっ!!!」

「お義母様・・・あの、本当に・・・?」

喜ぶ誠とは対照的に戸惑いを隠せないつくしを楓が見上げる。

「あなたのためにするのではありません。これがこの子の1年に1度の願いだと言うのならば、私にできる範囲でそれに応えるだけのこと」
「お義母様・・・ありがとうございます」
「あなたに礼を言われる必要はありませんよ」
「・・・はい、そうですね。でもやっぱり言いたいので言っちゃいます。えへへ」
「おばあさま、じゃあもっと中に来て! ほら!」

ぼくはおばあさまの手をグイグイ引っ張って部屋の中央へと連れて行く。
なんでだかまわりのみんなはやけに緊張した顔になってる。 どうして?

「じゃあここに座って!」

導かれるままに向かい合った椅子に座ると、楓は固唾を呑んで自分を見守っている周囲の人間を一瞥した。その瞬間、ササーーーっと蜘蛛の子を散らすように各々が場所を移動していく。
料理に手を伸ばす者、窓の外の景色を見始める者、雑談を始める者。
不自然極まりないが、そうしてさっきまで浴びていた視線が嘘のように霧散していった。

「笑った方が負けだよ?」
「わかりました」
「あー、おばあさまとにらめっこができるなんてぼくドキドキする! よーし、ぜったいに負けないぞっ!!」

ぼくは両手をひざの上でゴシゴシこすって気合を入れた。

「じゃあいくよ? にーらめっこしーましょ、あっぷっぷぅ~~!!」

そう言ったぼくは、両ほおを思いっきりつぶしてタコさんの顔をしてみせた。おばあさまはじーーっと真顔のままで全然動かない。
・・・あれ、にらめっこなのに何もしないの?

と思ったその時、楓の両手がスッと伸びて両目を思いっきり横に引っ張った。

「ブブーーーーーッ!!!」

瞬間、誠の口から盛大な笑いが漏れた。

「ぷっはははははは! おばあさま、おかしい~~~っ! あはははは!」
「・・・勝負ありましたね」
「あははは・・・あーあ、負けちゃったぁ。でもふしぎ、全然くやしくないや。それどころかなんだかすっごく嬉しくて仕方がないんだよ? ほんとにふしぎだね」
「そうですね」

・・・あ。 今のおばあさまの顔、とってもやさしい。
はっきりと笑った顔を見たことって実はあまりないけれど、それでも、時々すごーーくやさしい顔になるときがあるんだ。それを見るとぼくもすごーーーく嬉しい気持ちになるんだよ。

「あ、ママ、パパ、今の見た? ぼくが勝ったんだよ!」

こっちに近づいて来たママに抱きつくと、ママはなんだか泣きそうな顔で笑ってた。
ママだけじゃない。タマも同じような顔で笑ってる。何人かの使用人も。

「うん・・・よかったね。誠、ほんとによかったね・・・」
「どうしたの? ママ、どこかいたいの?」
「ううん、違うの・・・そうじゃないの。ママ今ね、とってもとっても嬉しいの」
「ほんとに? どこもいたくない? パパ、ママほんとに大丈夫?」

ママのすぐ後ろにいるパパに聞いたら、パパは呆れたように笑ってママの身体を引き寄せた。

「あぁ、何の問題もねーぞ。ったく、お前の母ちゃんは泣き虫で困った奴だな?」
「ほんとだねぇ。これじゃあぼくのねがいが叶わなくて困っちゃうよ」
「お前の願いって結局なんなんだよ?」

ぼくはママから離れると、えっへんと鼻をこすってみんなの顔をぐるっと見た。

「・・・あのね、ぼくの欲しいプレゼントは、ぼくの大好きな人達が一度にみーーーーーんな笑ってくれること! パパとママ、尊はもちろん、おばあさま、西田さん、タマ、類にぃ、総二郎にぃ、あきらにぃ、滋さん、桜子さん、優紀さん、おじいちゃん、おばあちゃん、進にいちゃん、そしてお邸の人・・・みんなみぃーーーーんな!」
「誠・・・」
「ほら、みんな笑ってるよ? だからママも笑ってよ。ぼく、ママの笑った顔、だーーーいすき!」
「誠・・・」

あっという間にママの目におっきな水たまりができて、ポロンと床にきれいな丸が落ちていった。
そしてそのすぐ後にママはぼくの大好きな顔でニッコリ笑った。

「誠、お誕生日おめでとう。そして生まれてきてくれてありがとう」
「うん! ママも、ぼくを生んでくれてありがとう!」
「えっ・・・?」
「あのね、幼稚園で読んだ絵本に書いてあったんだ。誕生日は生まれてきた子がお祝いされる日でもあるけど、生んでくれた親にありがとうって言う日でもあるんだって。だからパパとママにもありがとう、だよ」
「誠・・・・・・大好きっっ!!!」
「わわっ?! ママっ、くるしいよっ!!」
「いいのっ! これはママが誠のことを大好きっていう証拠なんだから!」
「うぅ~~、苦しいってばぁ~~!」

つぶれそうなくらいにママがぼくをギュウギュウに抱きしめる。
耳元でグズグズ音がするから、またいっぱい泣いてるんだろうなぁ。
おかしいなぁ、ぼくはママに笑ってほしかったのに、どうしてママは泣いてるんだろう?
でも、パパが尊を抱っこしながらそんなぼくたちをとーっても優しい顔で見てくれてるから、まぁいっか。
パパだけじゃない。その向こうに見えるおばあさまも、みんなみんなみーんな、笑ってる。
あれ、タマはちょっと泣いてるかもしれないぞ?


ぼくがほしかったもの。
それは大好きな人が一度に笑ってくれること。
ぼくのためにたくさんの人が集まってくれて、たくさんの人が笑ってくれる。
今一番好きなヒーローのプラモデルをもらうよりも、今のぼくが一番うれしいこと。

それが今、ぼくの元に届いたよ。
みんな、本当にありがとう!



「・・・ねぇ、ママ。ほんとのこと言うとね、もう1つだけ欲しいものがあるの」
「・・・? なぁに?」

ゆっくり体を離したママはやっぱり顔中涙でぐちゃぐちゃだった。
ぼくは笑いながら、言おうかどうしようか迷っていたもう1つのおねがいを口にした。

「あのね、ぼく、いもうとがほしいの」
「・・・えっ!!!」

ママのお目々がまん丸になっちゃった。

「ほら、尊は男の子でしょ? 弟もかわいいけど、やっぱり妹もほしいな。この前タマにその話をしたらね、そのねがいを叶えられるのはパパとママしかいないからおねがいするといいよって言ってたから」
「・・・・・・」
「ねぇ、パパママ。ぼく妹がほしい! ・・・ダメ?」
「いや、だめってわけじゃ・・・」
「じゃあ妹つくってくれるのっ?!」
「あ、あうあぅ・・・」

なんだか真っ赤になってもごもごしているママの体をパパがガシッと抱きしめた。

「誠、任せておけ。今夜のうちにでもつくってやる」
「ちょっ・・・、司っ?!」
「パパっ、ほんとうっ?!」
「あぁ、任せろ」
「やったあーーーー!! みんな聞いた? 妹つくってくれるって!」
「ひぃっ・・・! 誠、そんな大声で言わないでっ!」
「どうして? だってパパがそう言ったんだもん。ね、パパ?」
「あぁ。なんなら今すぐにでも構わねーぞ」
「やーーーめーーーてーーー!! 何言ってんのよ、このバカバカバカっ!!」
「いって! 息子の願いだろうが。叶えてやるのが親の務めだろ」
「うるさーーーーいっ!!」

あぁ、またパパとママのけんかが始まっちゃった。
でもね、けんかって言ってもいっつも気が付いたらチュッチュし始めてるんだよ。
だからぼくは止めないの。だってどうせ時間の問題なんだもん。

それに、そんなパパとママをみてみんなが笑ってるからいいんだ。
みんな、本当に楽しそうに笑ってるから。

「ねぇパパ、妹はいつ生まれる? ぼく少しでも早い方がいいなぁ」
「今日つくるっつっても明日生まれるわけじゃねーからな・・・。よし、来年のお前の誕生日にはいるってことを約束してやる」
「ほんとっ?! パパ、ありがとうっ!!」
「おう、俺に不可能はねぇんだよ」
「ちょっとぉっ! いい加減にしなさーーーーーーいっ!!!」
「いってぇっ!!」

ママからおっきなげんこつをもらったパパは怒ってたけど、しばらくしたらママを抱きしめてみんなの前でちゅーしちゃった。 ほらね、時間の問題って言ったでしょ?
みんなもそれがわかってるから笑って見てるんだよ。


ぼくの5回目の誕生日は、こうしてみんなでたくさん笑ったすてきな1日になりましたとさ。





未来の話を少しだけ。
迎えたぼくの6回目の誕生日、パパはちゃんと約束を守ってくれたよ。
やっぱりパパはすごいんだなぁ!





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こちらは名前当て企画で見事的中された、てっさざくら様からのリクエスト作品になります。
リクエスト内容は、タマ、西田、楓、それぞれが誠に振り回されて普段なら見られないようなことをしてくれる。そんな姿を見たつくしや司が大笑いする、といったものでした。
最初見た時に 「超高難度キターー!」 と思いました( ̄∇ ̄) だって西田と楓が笑うとかね、ないでしょう?(笑) どんな話ならまとめることができるかな~と必死に考えました。その結果浮かんだのが誠の誕生日。望めばきっとなーーーんでも手に入るであろう彼が、 「みんなに笑って欲しい」 という極シンプルだけどとっても幸せな願い事をする。これだ! と思いました。
相変わらずとっちらかってちっともまとまりはありませんが、今の道明寺家が幸せに溢れているということが伝われば嬉しいなと(*^^*)
ちなみに基本的には誠目線で書いてるので、漢字の使用率をぐっと減らしてます。(ひらがなばかりだとさすがに読みづらいので)
てっさざくら様、素敵なリクエストを有難うございました^^
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