また逢う日まで 6
2015 / 12 / 19 ( Sat ) 「お前は本当に何も知らねーんだよな?」
書類を届けて今まさに執務室から出かかっていた足がその言葉に止まった。 ゆっくり振り返ると、その言葉を発した男は顔も上げずに淡々と目の前の業務をこなしている。 だがピリピリと突き刺すようなオーラが漂っているのを肌で感じる。嫌というほどに。 西田は深い溜め息をつくと、ほんの数秒前まで自分が立っていた場所へと戻っていった。 「何度も申し上げたとおり私は彼女の居場所を存じ上げません」 「お前はババァの忠犬だったろ」 「・・・それは彼女の部下だったからです。今の私の直属の上司はあなたですから」 「じゃあなんであいつがババァに会いに行ったことは黙ってた? お前は知ってたんだろ」 チクリチクリと嫌味を言われるのはこれで何回目だろうか。 西田は心の中でもう一度盛大な溜め息をつきつつもそれをおくびにも出さない。 「確かに存じ上げておりました。ですが牧野様が口外することを頑なに拒んでおられましたから」 「ふん、お前は俺の忠犬じゃねーのかよ。忠犬なら忠犬らしく主に尽くしたらどうなんだ」 「もしもあなた様があの時お尋ねになっていれば私は正直にお答えしたことでしょう。ですがそうはなされなかった。あなたは何も聞かない、一方で言わないで欲しいと望まれていることをわざわざ話す理由など存在しないと思いますが」 まるで聞かなかったのが悪いとばかりにしゃあしゃあとほざく男をぶん殴ってやりたい衝動に駆られる。何があの時お尋ねになっていれば、だ。その時はその時でそれらしい理由を作って口を割るわけがないに決まってる。 それが西田という男・・・ならぬサイボーグ。 だが見方を変えれば、それほどの人間でなければこの財閥のトップを支えることなど到底不可能だということ。 「チッ! どいつもこいつも・・・!」 「どうなさるおつもりですか?」 「探し出すに決まってんだろ」 「ですが実際どうやって? プロの手を借りられないとなればそうそう簡単なことではないのでは? 闇雲に探したところでどれだけの時間がかかることか・・・」 「・・・あいつはそう遠くねぇ場所にいる気がすんだよな」 「え?」 カチカチと爪を噛みながら司が遠くを見つめている。 「・・・どうしてババァは未だ日本にいるのか。ずっとそれが引っかかってんだよ」 「・・・・・・」 「確かに日本でやることがあったんだろう。だがあそこまで急に、しかもこれだけ長居する意味がわからねぇ。俺の知らないところで何かをやってるんじゃねぇとすれば、敢えてここにいる必要性はねーだろ」 そう。何故あの女はここにいるのか。 記憶が戻るまではただ牧野との仲を引き裂くためだと思っていた。 だが単純にそれだけだとするならば、もっと手段を選ばないのがあの女のやり方だ。 たとえ無関係な人間を巻き込むことになろうとも、自分の要求を通すためならいかなる犠牲も厭わない。それがあの忌々しいババァだ。 だが不気味なほどに動きが見えない。 何を考えているのかも全く読めない。 それでも記憶の戻った牧野があの状況下でいなくなったのは、どう考えてもババァが絡んでる以外に考えられない。 よもや俺たちの関係を歓迎しているだなんて思わない。 じゃあ何のために? まるでつかず離れずの場所から監視されているようで気分が悪いったらねぇ。 いずれにせよあの女は味方じゃない。 それだけははっきりとした事実だ。 俺の直感が当たっているとするならば・・・牧野は考えている以上に近くにいる可能性がある。 ・・・たとえば社内に潜んでいるとか。 「お考えのところすみません。そういえば例の企画はどうなさいますか? 保留にされたままでしたがそろそろ時間的猶予もなくなってきました」 「あぁ、あれか・・・」 夏頃からずっと考えていた企画。 浮かんでは消えを繰り返し、これだという決定打を掴めずにいた。 ただ1つ決まっていることはあいつを活かすということだけ。 あいつを・・・ 「 ! 」 「どうかなさいましたか?」 「いや、・・・・・・」 何かを考え込むと、司はおもむろにデスクの引き出しから一枚の名刺を取り出した。 「この男とのアポを取り付けろ。できるだけ早く」 「今から、ですか? もう夜も遅いですが・・・」 「構わねぇ。そいつだってうちとの仕事は喉から手が出るほど欲しいに決まってんだろ。いいから今すぐに動け」 「・・・かしこまりました。では連絡がつき次第またこちらへ参ります」 足早に出ていった西田の後ろ姿を見ながら、司はどこかはやる気持ちを抑えきれずにいた。 「お前が動けねぇなら俺が動くだけのこと。・・・そうだろ?」 誰に聞かせるでもなくそう口にすると、スーツの胸ポケットからあるものを取り出した。 『 私を信じて 』 そう強いメッセージの込められたこの世に1つしかない栞を。 *** 「牧野さん、お疲れ。今日は早番?」 「はい。エミ先輩もですか?」 「あたしはこれからなの。だから栄養つけないと」 「あ~、今日は夜勤なんですね。お疲れ様です」 この島で働くスタッフのほとんどが寮住まいだ。 同じホテルで働く者はもちろん系列の違う社員まで、幅広い人間がここには集う。 中でも食堂は情報交換にはうってつけの場で、限られた空間で日々を過ごしている者達にとっては何よりの憩いの場となっていた。 このエミという女性はつくしの指導役として世話になっている先輩だ。 「ねぇねぇ、牧野さんってどこの支店から来た人なの?」 「えっ?!」 担当部署は違うが、同じホテルで働く別の女性の何気ない問いにドキッと心臓が跳ね上がる。 このリゾートには道明寺ホールディングスの社運をかけていると言っても過言ではなく、集められたスタッフはいずれも系列のホテルで一定以上の経験のある者だけ。 全国津々浦々、どこから来たのかも実に多岐にわたっている。 「たいてい1人くらいは見知った顔がいるでしょ? でも牧野さんってそんな感じでもないみたいだから。どこから来たんだろうってずっと不思議だったんだよね」 「えーと、あたしはですね・・・」 どうしようどうしよう。 今までのらりくらりとかわして来たけれど、今日ほど真っ正面から聞かれたことはない。 適当に答えてもしそこで働いていた、なんて言う人がいたらどうしようか。それこそ誤魔化しようがない。自分が特例中の特例でここに派遣されたなどとばれてしまえば、逃げ場のないこの島では追求から逃れることなど不可能だ。 「別に話して困ることでもあるまいし、教えてよ」 「えぇと、だから、その・・・」 万事休す。 こうなったら一か八かで適当な場所を言うより他ない。 神様、どうかビンゴとなりませんように・・・! 「あたしが来たのは・・・」 「あれっ? ねぇ、見て!」 「えっ?」 決死の思いで口を開いたときだった。 黙って事の顛末を見守っていたエミが驚いたような声をあげたのは。 その指がさしているのは・・・食堂の壁にかけられた1台の大型テレビ。 不思議に思いながら導かれるように顔を上げたつくし達の視界にとある映像が入ってくる。 「えっ・・・?」 ガタンッ!! 次の瞬間、声を上げると同時につくしは立ち上がっていた。 だが画面に見入っている女性陣はそんなことに気付いてもいない。 うそ・・・でしょう? 「すごーい、とうとうここのCMがオンエアになったんだ~!」 「なんか神秘的で素敵~!」 「あれってプレミア棟のコテージだよね?」 「っていうかそれよりもあの女の人は誰っ?!」 あっという間に終わってしまった映像に、初めてそれを見た女達が興奮気味に言葉を続けていく。そんな中、ただ一人の女だけが呆然とその場に立ち尽くしていた。 今まさにテレビの中にいた女、その人だけが。
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また逢う日まで 7
2015 / 12 / 20 ( Sun ) 「牧野さん、急で悪いんだけど506から510号室までヘルプに入ってくれない?」
「えっ、今からですか?!」 「そうなのよ。担当の山本さんが風邪でダウンして人手が足らないのよ。申し訳ないけどお願いできないかしら?」 正直言ってあたしに選択肢はあるのだろうか? ・・・考えるまでもないけど。 「わかりました。今回ってるところが終わったらすぐに行きます」 「ほんとにごめんなさいね? でも牧野さんなら安心して任せられるわ。お願いね」 「はい!」 安堵の息を吐いたのも束の間、チーフは慌ただしく部屋を出て行ってしまった。 彼女の言った通り、今日はいつにも増してゆっくりしている暇などないのだ。 平日でもほぼ満室状態のこのホテル、週末ともなれば数ヶ月先まで予約待ちになるほどの人で溢れかえり、充分配置されているはずのスタッフですら手が回らないほどに忙しくなる。 関係者やVIPだけのプレオープンを経て、この春から大々的にグランドオープンを迎えた。 年が明けて間もなく解禁されたあのCMの影響もあってか、決して交通の便がいいとは言えないはずの場所にもかかわらず観光客は後を絶たない。 「今何時? やばっ、急がないと間に合わないじゃん!」 時計を見て顔を青くすると、つくしはワゴンに大量のシーツを載せて慌てて後に続いた。 *** バサッバサッバサッ・・・! 「よし・・・お、お゛わ゛った・・・なんとか間に合った・・・」 今しがた綺麗にセットしたばかりのふかふかのベッドにそのままダイブしたくなる。 そんな衝動をギリギリのところで抑えると、つくしは大きく息を吐きながら窓際へと移動した。そこから見える青々とした空と海があまりにも目に眩しい。 動き回っているときは必死過ぎて考えている余裕もなかったが、全てを終えてほっとした途端一気に疲労感が襲ってきた。それもそのはず。今日は朝の5時から一度も座らずじまい。1時を回った今、思い出した様にお腹が空いてきた。 ぐぅうううぅう~~~っ! 「・・・我ながら凄い音。人がいたら誤魔化しようがないわ」 『 お前は相変わらず色気より食い気かよ 』 ふとそう言って笑う男の顔が脳裏に浮かんだ。 少年のようなその面影は、つくしの胸に甘くて苦い時間を思い起こさせる。 「・・・・・・あいつ、今頃どうしてるのかな・・・」 窓の外に見える思い出の場所。 水上コテージにはつくしが立ち入ることは許されていない。VIP中のVIPが集うあの場所を担当できるのは限られた従業員だけ。だが結果的に今のつくしにとってはその方が都合が良かった。 思い出の詰まり過ぎたあの場所にもし行ってしまったら・・・途端に全てを投げだしてあいつの元へと飛んでいきたくなってしまうだろう。 それほどにあそこでの濃密な時間はつくしの心と体に刻みつけられていた。 想いを重ねてキスを交わしたあの浜辺へも、ここで働き始めてから3ヶ月以上が経ったというのに一度だって足を運べていないのが何よりの証拠だ。 驚きのCMを見てから3ヶ月、ここに来て4ヶ月。 あいつへの想いは募るばかりだった。 あのCMを初めて見た時はただただ混乱することしかできなかった。 あの時の2人の時間がまさかあんな形で公に公開されることになるなんて。 元々モデルとして使うと言われていたのだから当然と言えば当然なのかもしれないが、この状況下でやるからにはあの男からの強いメッセージが込められているのではないか。 あれから頻繁に流れるあの広告を見る度に、次第にその意味が見えてきた。 『 目覚めの時 ___ 』 その言葉と共に幸せそうに微睡んでいるのは紛れもないこの自分自身。 自分で言うのはこの上なく憚られるが、従業員の間では 『眠れる島の美女』 だなんて呼ばれていて、3ヶ月経った今もあの正体が誰なのかと話題は尽きることはない。 まさかこんなところに張本人がいるだなんて思われてもいないのがせめてもの救いだが。 あいつの瞳には自分があんな風に映っていたなんて。 まるで全くの別人を見ているような不思議な感覚だった。 ただ眠っている自分を見ているだけなのに、何故か胸がキュウッと苦しくて、そしてそれと同時にあいつの自分に対する気持ちが波のように流れ込んでくるようで。 『 俺はお前が好きだ。何があろうとも地獄の果てまで追いかけてやっから待ってろよ 』 そう言われているような気がしてならないのだ。 人が聞けば自惚れも甚だしいと笑われることだろう。 それでも、胸元に輝き続けている希望が今のつくしを強くしていた。 「 道明寺・・・ 」 逢いたいという言葉をグッと呑み込むと、もう一度思い出のコテージをその目に焼き付けて、つくしは力強く歩き出した。 *** 「ちょっと、ちょっとちょっとちょっとぉ~~~~~っ!!!!」 けたたましい音と共に更衣室に飛び込んで来た同僚に、一同が耳を押さえながら顔をしかめている。 「ちょっと、うるさいわよっ!」 「それどころじゃないんだってばっ!! 大変なんだからっ!!」 「だから何がよ?! このあたしを驚かせようって言うならトムクルーズが来たくらい言わなきゃ無理なんだからね」 「それと同じくらいの仰天ニュースなんだってば!!」 「え・・・マジで?」 大袈裟に言ったのに、予想に反して同僚の興奮は収まる気配を見せない。 「実は・・・今本社の副社長が抜き打ちチェックに来てるって!!」 「・・・・・・は?」 いまいちピンと来ないのか、女の反応は鈍い。 が、直後に何かに気付いたのか、一瞬にして目を見開いた。 「えっ・・・まさか・・・あの道明寺司ってこと?!」 「そう!! あの憧れの的の張本人が来てるんだって!! し・か・も! 今から全従業員は集まれって伝達が来たのよっ!!」 「え・・・えぇえっ??!!!」 つくしが司への想いに胸を焦がしていたまさにその頃 ___ 都内のホテルでは小さな騒動が巻き起こっていた。
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また逢う日まで 8
2015 / 12 / 21 ( Mon ) 「ここで働いてる従業員はこれで全部か?」
「は、はい。正社員からパートまで、全ての者がここに記載されています」 「・・・・・・」 期待通りの返答ではなかったのか、ますます眉間の皺を深くする男を前に支配人はおろおろするばかり。 「あの、道明寺様、うちの従業員が何か・・・?」 「・・・いや、見たところ働きぶりも問題ない。今後も気を抜くな」 「は・・・はいっ! ありがとうございますっ!!」 「西田、行くぞ」 「はい」 「えっ、もうお帰りになられますか?! ではお見送りを・・・」 「いい。余計なことに時間を取るな」 「は、はい・・・ありがとうございます」 恐縮する支配人をよそに、気にする素振りも見せずに突然現れた男は嵐のように瞬く間にホテルから姿を消してしまった。 「お、驚きましたね・・・」 「あぁ。噂には聞いていたがまさかこんなところにまで来るなんて」 「行く度に従業員名簿をチェックしてるらしいですけど・・・誰か探してるんでしょうかね・・・?」 「・・・・・・」 口にしたところで答えの出ない問いかけに、支配人と副支配人は揃って口を閉じたのだった。 *** 「はー・・・」 帰るなり迷うことなくベッドへとダイブした体には疲労が色濃く残っていた。 目を腕で覆って深い溜め息をついた途端、着替えるのすらどうでもよくなってくる。 「ちょっと無理をし過ぎなんじゃありませんか?」 「・・・・・・」 声の主に気付いていても何の反応も示さない。 「早く見つけ出したいお気持ちは痛いほどわかりますけどね、つくしを探し出す前に体を壊しちゃ元も子もないですよ」 「・・・うるせーぞ」 「えぇえぇ、うるさくて結構です。うるさかろうが何だろうが坊ちゃんのお世話をするのが私の仕事ですからね。倒れでもしたらつくしが悲しむに決まってるんですから」 「うるせーっつってんだろ、タマ。そもそも呼んでねぇだろうが。出て行け」 疎ましいオーラを微塵も隠そうとしない主を前にしても老婆は負けじと我が道を行く。 「ほら、少しお茶でも飲まれてくださいな。体の中から温めるだけでも違いますよ」 「・・・チッ。・・・ったく」 口にするまでてこでもここを動かないと悟ると、司は思いっきり舌打ちしながら鉛のような体を引き起こした。差し出されたカップを乱暴に奪うとそのまま一気に喉に流し込んでいく。 だが拒絶する心とは裏腹に、絶妙な温度に調整された高級茶は疲れ切った体に染みこむように広がっていった。 「ね、おいしいでございましょう?」 「・・・」 「仕事の合間を縫ってつくしを探すのはいいですけどね、少しは体を大事にしなきゃダメですよ。最近ご自分の顔を鏡でご覧になりましたか? そんなに疲れた顔して、つくしが見たら怒りますよ」 「あいつが俺の前から消えなきゃよかったんだろ」 「そこは私に言われてもどうにもなりませんよ。それに、なんだかんだ言いながら坊ちゃんだってそこは納得されてるみたいじゃないですか」 「・・・・・・」 タマの言う通り。 つくしがああいった行動に出たことにはそれ相応の理由があったからだとわかっている。 だがこうも思った以上に見つからないともなれば愚痴の1つも零したくなるというもの。 つくしが姿を消してから間もなく半年 ___ どんなに時間がかかろうとも見つけ出すという気持ちに何ら変わりはないが、正直なところ、もう少し早く見つかるだろうと高を括っていた。 「俺の勘が外れてたのか・・・?」 ババァは裏を掻いてつくしを敢えて近くに置いている。 根拠などないが、己の直感がそう訴えていた。 だからこそこの半年、仕事の合間を縫っては系列のホテルや店舗巡りをしてきた。 全てアポなしだ。 突然の訪問に現場は大騒ぎとなるが、抜き打ちで来られて困るような仕事をしているならばそれまでのこと。つくしを見つけ出すことが最大の目的だが、図らずも従業員の緊張感を高めて質の向上に繋がるならば言うことはない。 都内を皮切りに首都圏へと範囲を広げていくにつれ、当然ながら時間的猶予もなくなってくる。 ババァの狙いはつくしを探すことで本業に綻びが出るかどうかを見極めることだ。 少しでも隙を見せれば何をしでかすかわかったもんじゃない。死んでもその手にのってたまるか。 完膚なきまでに全てをやり通してあの女の鼻をへし折ってやる。 そして金輪際俺たちの事に一切の口出しをさせない。 そのためならどんなに体がボロボロになろうともそんなことは何の苦にもならない。 ・・・だが日に日に増す飢えだけはどうすることもできない。 『 道明寺・・・道明寺っ・・・! 』 目を閉じれば今も鮮明に甦る。毎晩のように夢に見る。 全身を紅潮させながら無我夢中で俺の名を呼ぶあいつの姿が。 震えながら、瞳を潤ませながら必死でしがみついて俺を求めた。 今思えばあの時既にあいつの記憶は戻っていた。 土星のネックレスを贈ったとき、あいつはただ感動して泣いたのだと思っていた。 だが今ならわかる。あの涙の真の意味が。 完全な 『 牧野つくし 』 として俺を求めた。 あの時、あいつの心からの愛情を感じたからこそ今の自分がある。 あの夜がなければ、ただ荒れ狂うだけで過去の過ちを繰り返していたかもしれない。 「一体どこにいんだよ・・・」 己の直感に確信をもってきたが・・・ことごとく期待を裏切られる結果に、もしかして根本的な思い違いをしているのではないかと僅かな不安が過ぎる。 もし自分の予想が全く見当違いだとしたら・・・全ては振り出しに戻ってしまう。 「あの子はテレビに映る自分を見てどう思ってるんでしょうねぇ・・・」 「あ? 何だよいきなり」 「眠ってるとはいえある日突然自分が全国に放送されてるのを知ったんですから、それはそれは驚いたことでしょうねぇ・・・」 「・・・・・・」 タマは元々つくしをモデルとして採用していたことを知らない。 よほどつくしを深く知る人間でない限り、一目であれがつくしだと気付く者はいないだろう。 だがそれこそが狙いだった。 あれは自分からつくしへの揺らぎないメッセージ。 あいつが俺へ残したメッセージに対する答え。 きっとあいつはそれに気付いているに違いない。 プロのカメラマンに撮られた映像も数多く存在していたが、敢えてあれを使ったのはまたお前とあの場所へ行くという決意表明でもあった。 ・・・つまりは必ず見つけ出してみせると。 お前と再び2人を繋いだあの場所へ。 あの・・・ 「 _____ 」 「・・・? 坊ちゃん、どうなさいましたか?」 突然目を見張って黙り込んでしまった司に、タマが心配そうに声をかける。 だが聞こえているのかいないのか、一切の反応は返ってこない。 「・・・とにかく疲れが溜まっているのでしょう。お風呂なんていいですから、今日はこのままお休みになってくださいな。ただせめてスーツの上着だけは脱いで・・・」 「 タマ 」 「・・・はい?」 すぐに横になれるようにと布団を捲り上げていたタマが顔を上げる。 と、直前までの疲労色の強かった表情は何処へやら。 そこには一瞬にしてまるで別人のように全身から活力が漲っている主がいた。 そう見せているのはきっと彼の目力のせいだろう。 ギラギラと、体の奥から湧き上がってくる炎を宿したような瞳をしている。 「・・・どうして俺はこんなに単純なことに気付かなかったんだろうな」 「 ? 」 「考えればこれほどシンプルで明快な答えはなかったっつーのに」 まるで自分に言い聞かせるように苦笑いしている男にタマも首を傾げるばかり。 「坊ちゃん? 一体何を・・・」 「 タマ。週明けにはあいつをここへ連れて帰ることを約束してやる 」
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また逢う日まで 9
2015 / 12 / 22 ( Tue ) この地に再び足を下ろすときはあいつと共に ____
その誓いがまさかこのような形を迎えることになろうとは。 「道明寺様っ!」 タラップに足をかけた瞬間、慌てた様子で総支配人が駆け寄って来た。 深夜にもかかわらず突然訪問したともなれば何事かと焦るのは当然のことだろう。 タマとの会話で稲妻が走ったように全てを理解した俺は、迷うことなくその足でここへとやって来た。さっきまでの疲れなど嘘のように消えてしまっている。 「ようこそいらっしゃいました。あのっ・・・」 「いい。別にお前達に問題があって来たわけじゃない」 「え・・・? それは、どういう・・・」 手でそれ以上の言葉を制止すると、総支配人はますます混乱した様子を見せる。 「それより事前に調べておくように伝えた結果は出ているな?」 「は、はい! ご指摘の通り当ホテルの客室担当に牧野つくしという従業員がおります」 「 ___ 」 やはり・・・! ようやく・・・ようやく見つけた。 長かった・・・。 たかが半年と思う人間もいるかもしれないが、今の俺にとってはあの空白の4年よりも遥かに長く感じる半年間だった。 それほどにあいつを求め、飢えていた。 グッと右の拳に知らず知らず力がこもる。 このままあいつのいる場所まで脇目も振らず突っ込んで行きたい衝動に駆られるが、ここまで耐え続けてきたのだ。あいつが 「従業員」 として今ここにいるのならば、その立場を尊重した上であいつとの再会を果たそう。 「あの、この者が何か・・・? 調べたところ勤務態度は至極真面目。担当でない仕事まで進んでやるほど勤勉だと聞いております。もし何か不手際でもあったのならば・・・」 「当たり前だろ」 「え?」 「こいつが勤勉かどうかなんて聞くまでもねーんだよ。むしろ休ませる方が難しい女だからな」 「は・・・あの・・・?」 必死で理解しようと試みているものの、言いたいことがさっぱりわからないのだろう。 司はそんな支配人に不敵な笑みを浮かべると、さらに度肝を抜く言葉を続けた。 「 あいつは俺の婚約者だ 」 「は・・・・・・・・・え?!」 予想通りの反応に声を上げて笑いたくなる。 もう誰にも遠慮する必要などない。 自分の足で、自分の力であいつに辿り着いてみせたのだから。 あとはひたすらあいつとの未来へ向けて突っ走るのみ ___ 「諸事情によりあいつはうちの系列で修行をしてたんだ。俺はその勤務先がどこかまでは知らされていなかった。ま、言ってみればあいつと結婚するまでの最後の試練ってとこだな。・・・そうして今日ようやく見つけ出した」 「・・・・・・」 いまだ状況が理解しきれないのか、支配人の表情からは混乱が見て取れる。 「まさか道明寺様の婚約者様だったとは・・・! あ、でしたら今すぐに彼女を ___ 」 「いや、いい。今夜は俺はこのまま部屋に戻る」 「え・・・ですが、」 「そのかわり明日あいつを俺の客室担当に回せ。ただし俺のことは一切伝えるな。それから余計な騒ぎを避けるためにも俺がここに来ていることは最低限の人間以外には口外するな」 「は・・・」 「とにかく一従業員としての牧野つくしを俺の元へ寄越せ。わかったな?」 「は、はいっ! ・・・あ、では今すぐコテージへとご案内致しますっ!」 「あぁ」 心なしか支配人の足取りが軽くなったように見えるのは気のせいか。 ・・・いや、そう思えるのは自分こそがそうだからかもしれない。 夜明けまであと数時間。 その瞬間を迎えるまできっと一睡だってできないだろう。 1分1秒が気が遠くなるほど長く感じるに違いない。 だが不思議とその時間すら楽しみだと思えてしまう自分の心の余裕はどこからくるのか。 ___ ようやく、ようやくお前の元へ。 次に掴まえたらもう二度と離しはしない。 そう、一生 ____ *** 予想通り全く眠れない夜を過ごした。 だが不眠不休だなんて信じられないほどに頭も体もすっきりとしている。 窓の外に見えるのは果てしないほどの青の世界。 雲一つない空が、まるで今の自分の心を映し出しているようだった。 このコテージはあの夜を境に完全に俺個人のものへと変わっていた。 世界中に同じように個人所有のものはあるが、ここはそのどれとも違う特別な空間へと変わった。いくら大金を積まれようとも、この空間に立ち入ることは何人たりとも許さない。 ___ 俺とあいつ、ただ2人だけの空間 「・・・さて、どういう形であいつを迎え入れてやろうか」 いつか俺が迎えに来ることを予想しているだろうとはいえ、あいつがひっくり返りそうなほど驚くことは間違いない。デカイ目がますますでかくなって、気の抜けた風船のようにへたり込むのだろう。 「それだけじゃ面白くねーよな」 なんだかんだでこの俺を半年も我慢させたんだ。 少しくらいあいつをギャフンと言わせてやりたいと思ったって当然だろ? あいつが竦み上がるくらい睨みつけて本気の怒りを見せてやろうか。 ・・・だが今の自分にそれをやりきれる自信は正直言ってない。 とめどなく溢れ出すこの喜びと興奮を隠しきることなんて不可能に近いからだ。 あいつの姿を思い浮かべるだけで湧き上がる熱情を抑えることすらできやしない。 愛しくて愛しくて、心の奥から欲して求めた女。 その女を真にようやくこの手に掴む瞬間がやって来る。 その時、視界に捉えた人影にハッと息を呑んだ。 どこか戸惑いがちに桟橋を歩いてこちらへ向かっているのは ___ 「 牧野・・・! 」 色鮮やかなブルーの世界に映るのは愛しい女ただ一人。 戸惑いを滲ませながらも真っ直ぐな瞳が放つ強さは少しも変わってはいない。 いや、むしろその輝きは増していた。 それはつくしがこの場所でどう過ごしてきたかを如実に語っていた。 「 牧野、牧野っ・・・!」 今すぐこの部屋を飛び出してあいつを抱きしめてしまいたい。 青空の下、思いっきり抱きしめてキスをして。 周囲の目なんて気にならなくなるほどに俺の熱で溶かしてやりたい。 徐々に大きくなる影にどうしようかと一瞬迷う。 本当にこのまま出て行ってしまおうか。 ・・・だが ___ 「やっぱ少しくらいお仕置きしねーとな」 どうせあいつに溺れきってこれでもかと甘やかしてしまうのは目に見えてる。 だったら最初くらいあいつを驚かせてやったっていいだろ? そう決めると一目散にベッドルームへと駆け込んだ。 あいつはここに人がいないという前提でやって来る。 起きた状態のまま出掛けたんだと思わせるためにわざと布団を乱雑に重ねた。 そしてその中に自分の体を滑り込ませると、間もなく訪れるその瞬間を待った。 ドクンドクンとありえないくらいに激しく胸が昂ぶっている。 らしくねぇほど動揺して情けねーったらねぇ。 でもしょうがねーだろ、それほどにお前が欲しいんだから。 ガチャッ 長くせずして控えめに聞こえてきた音に心臓が破裂しそうなほど鼓動を打った。 「失礼しまーす・・・って、誰もいないに決まってるか」 まるで鈴のように優しい音色が耳に届く。 あぁ・・・ 「相変わらずすごい部屋だなぁ・・・。 ____ 」 ・・・牧野、お前のその沈黙の意味を俺はよくわかっている。 そんな感傷に浸る必要なんてもうどこにもねぇんだ。 ・・・早くここへ来い。 俺が耐えきれずに飛び出して全てがパーになる前に、早く。 ・・・あぁ、お前をほんの少しでも懲らしめてやろうだなんて。 声を聞いただけで全てのネジがぶっ飛んでしまった俺のせめてもの反撃は、きっと見事に空振りに終わってしまうに違いない。
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また逢う日まで 10
2015 / 12 / 23 ( Wed ) 「つくし・・・」
「ん・・・これ、いじょ・・は、ほんと、に、ムリっ・・!」 やっとのことで声を絞り出した体には全く力が入っておらず、目も閉じたまま。 その言葉が真実であるということを如実に語っているその姿すら愛おしくて、司はくったりと人形のようになされるがままのつくしの体を抱き寄せた。 「今夜はもうしねーよ。そのかわりこうさせてろ」 「・・・ん・・・」 聞こえるか聞こえないかの小さな反応を見せると、やがてスースーと寝息が聞こえ始めた。 泥のように眠る、まさにこの言葉が相応しい。 「さすがに無理させたか・・・」 再会の喜びもそこそこに、その感情の高ぶりのまま互いを求め合った。 いつもなら恥ずかしがってばかりのあいつがただひたすらに俺を求めて、それが自分が愛されているという何よりの証拠だと思うと、もう俺の理性など完全に吹っ飛んでしまった。 バスルームで気を失うように眠ったあいつをベッドに運んで自分も幸福の眠りに落ち、ぼんやりと目が覚めてはまた求める。そんなことを何度も繰り返し、その度につくしの体からは力が抜けていった。 それでも止まれない俺を口では抵抗しながらもあいつはすんなりと受け入れる。 その度に本来の自分自身が甦っていくようだった。 疲労の色を滲ませる女に若干の罪悪感を感じながらも、司は体の奥底から漲ってくる充足感に満たされていた。砂漠のようにカラカラだった細胞一つ一つにつくしという命の源が吹き込まれ、今自分が生きているということを実感する。 この女がいてこそ初めて自分は自分でいられる。 つくしとの再会。 それはどんな言葉にも言い表すことのできない歓喜の瞬間だった。 懲らしめてやろうと画策していたことなど案の定一瞬で吹っ飛び、ただただ目の前の女をこの手に抱きしめたい、自分の手の中にいることを確かめたい。頭の中を占めるのはただそれだけ。 それ以外のことなど何一つ考えられなかった。 つくしはつくしなりに自分を置いていなくなってしまったことに心を痛めていた。 それはあの雨の日を思い起こさせるのだから当然だろう。 だが俺がこいつを待たせた期間は4年だ。 生命の危機を彷徨い、そして一方的に忘れられ、あいつの絶望はいかほどだっただろうか。 ・・・そう。謝らなければならないのはこいつじゃない。 俺の方だった。 「 つくし・・・つくし・・・ 」 もう名前を呼んでもお前は消えたりしない。 名前を呼んだ瞬間お前が消えてしまう。そんな夢を幾程見たことだろうか。 「これからは俺の妻として、少しだって離れることは許さねーからな」 本当は再会した直後にプロポーズをするつもりでいたのに。こいつの顔を見た瞬間、そんな計画は霧散してしまった。いつだってこいつの前では計画通りにいったためしがない。 だがそれでいい。 それがいい。 何の計算もないこいつだからこそ、俺も本当の自分でいられるのだから。 「あらためてプロポーズしてやっから覚悟してろよ。 つくし・・・」 もう一度その名を口にして小さな体を抱きしめると、確かな温もりを感じながらようやく司も目を閉じた。 *** 「どうした?」 初夏のほんのり暖かな空気とは明らかに違うぬくもりが後ろから体を包み込む。 背中に触れているだけなのに、燃えるように熱いのは自分の体なのか、それとも。 「・・・星、見てたの」 「星?」 「うん。ここからでも見えるかなぁって。でも都心からだとやっぱりあんまり見えないね」 「あの島で見たばっかなら尚更しょぼく見えるよな」 「あはは、しょぼいって」 思い出のバルコニーから見上げる空には小さな光が微かに覗いていた。 ここで初めて土星を見た日のことがまるで昨日のように思い出される。 「・・・でもね、こうして空を見上げてるだけで不思議と浮かんでくるの」 「何がだよ?」 「満天の星空とね、・・・それからあの綺麗な土星の姿が」 「・・・・・・」 「まるで昨日のことのようにはっきりとその姿が浮かび上がってきて、あたしの心をワクワクドキドキさせてくれるんだ。ほんとに不思議だよね」 そう言って少女のように目をキラキラさせながら手を伸ばしているお前こそが綺麗だって自分でわかってんのかよ。 相変わらず無意識に男心に火をつける天才だよな、お前は。 「わわっ?! ちょっと、苦しいよ」 「うるせー、お前のせいなんだから黙ってろ」 「え~? だから全然意味わかんないってば」 口では文句言いながらも自分を締め付ける腕を解こうなんてしていないくせに。 それどころか嬉しそうにクスクス笑ってんじゃねーか。 「お邸の人達は?」 「あー、さすがに散ったな。ったくあいつら、自分の立場も忘れてハメ外し過ぎだ」 「あはは、たまにはいいじゃん。そんな時があったってさ」 「フン」 司がつくしを連れて帰ると宣言してからというもの、邸では今か今かと落ち着かずにその時を待つ使用人で溢れかえっていた。時折落ちるタマの雷なんて何処吹く風。内心ではタマとて同じなのだから、効果などほぼないに等しかった。 そうしてようやく迎えた再会の時 ___ となるはずだったが、何故か邸を素通りして飛行場へと駆け込んでいくつくし達に呆気にとられるというハプニング付き。しまいには戻って来るのが待ちきれずに大勢で飛行場へ大挙して出迎えるという、まさに全てが想定外づくしの再会劇となったのだった。 つくしが帰ってきたことに喜びむせび泣く者、笑いが止まらない者。 そこにはひたすら笑顔と笑い声だけがあった。 「 『 お帰り 』 つくし 」 中でもタマが放った一言は短いながらも全ての想いを集約していて、それまで笑っていたつくしも途端にボロボロと堰を切ったように泣き出してしまった。 「全くあんた達は・・・ほんとに似た者同士で世話が焼ける子だよ。これでようやく私の肩の荷も下りたと言いたいところだけど・・・この調子じゃ若坊ちゃんのお世話をする日も近そうだねぇ」 なんてニヤニヤしながら言うものだから、またその場がどっと笑いの渦に包まれた。 それから邸に戻ってからは飲めや歌えの大騒ぎ。 つくしが帰ってきただけでなく2人の記憶まで全て戻ったとあって、今日ばかりは使用人達も無礼講で喜びを分かち合った。 「幸せだね。こんなに多くの人に愛されて・・・って、わぁっ?!」 突然ぐりんっ! と体を反転させられて目が回る。 「な、何?!」 「お前のそこが不満なんだよな」 「・・・は? 一体何の話?」 「誰からも愛されてって・・・お前が愛されんのは俺だけで充分だろうが!」 「・・・・・・」 ポカーーーーン。 ・・・こいつ、何言ってんの? 「っていうか、実はめちゃくちゃ酔ってる?」 「酔ってねーよ! 俺が酔っ払ったところなんて見たことあんのか?」 「・・・ないけどさ」 「俺はシラフだっつの。ったく、どいつもこいつも牧野、牧野、牧野、牧野・・・。あの大塚とかいう男なんか類とダブるところもあって特にいらつくぜ」 「え・・・大塚と何かあったの?」 「ねーよ! ただお前を探しに会社に行ったらお前のことは全て理解してるーみてぇなツラして説教たれやがって。ざけんな! そもそもあの状況下で逃げられた俺こそ文句言いてぇっつーのに」 「う゛っ・・・だからそれはごめんってば」 そこを言われちゃどうにもこうにも立場がない。 「いいか。これからは他の奴に無駄に愛想ふりまくんじゃねーぞ。色目も禁止だ」 「色目って・・・そもそもそんなことあたしにできるわけがないじゃん」 「ほらな。お前の無自覚ほど怖いもんはねーんだよ」 「だーかーら! 色気もクソもないあたしにそんなことができるわけがないの! 人聞き悪いこと言わないでよ」 「へ~え?」 「な、何よ・・・」 ニヤリと口元を歪めた男にゾゾッと背筋が凍る。 これは・・・なんかやばいスイッチを押してしまった可能性が。 「お前の言ってることが嘘かほんとか、この俺が証明してやるよ」 「・・・へっ?」 「自覚のねぇ女には俺がしっかり教えてやらねぇとなぁ?」 「・・・はっ?!」 「そうと決まれば話は早ぇ。部屋に戻るぞ」 「・・・ほえぇっ??! ちょっ、ちょっと待って!」 「誰が待つか。そもそもたった一晩くらいで俺の渇きが癒されるとでも思ってんのか? お前は責任もって俺を潤わせろ。今夜 『 も 』 眠らせねーから覚悟しろよ」 「・・・・・・・・・ひょえぇえええええぇええっ!!!!」 懐かしい雄叫びが邸に響く。 それを聞いた誰もが、またこのお邸に平和が戻ってきたのだと幸せを実感するのだった。
本当は再会後のエピソードは書かずに一気にエピローグまで飛ぶつもりだったんですが(本編でほぼ書いたので)、予想外に皆さんの反響が大きかったので急遽慌てて書き直しました。 ということで真のエピローグはこの後ということで。 なんとっ!!本日2回更新いたします!! 朝6時にまたお会いしましょう♪ |