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晴れ、ときどき×× 2
2014 / 10 / 31 ( Fri )
6つの目がじーーーっと一点に集中する。
突き刺さるような視線にいたたまれない気持ちになるが、つくしはぽつりぽつりと言葉を選んでいく。

「おとといなんだけど、仕事で女の先輩と同期の男の子と外回りに行ったのよ。で、思ったより遅くなったから3人でご飯でも食べてから帰ろうって話になって・・・・」
「なって?」
「で、皆で夕食食べて帰ったんだけど、同期の子が車で来てるから送ってくれるって言い出して。一応相手は男性だし、あいつにバレでもしたらうるさいから断ったんだけど、先輩が方向が同じなんだから一緒に送ってもらおうって。先輩だけ乗ってくださいとはさすがに言えなくて。それで送ってもらうことにしたんだけど・・・・」

そこまで話すとつくしがまた溜息をつく。

「帰ったら予告なしにあいつがアパートの前で待っててさ。先輩の方が家が手前だったから、車には私と同期の子しかいなくて・・・・」
「うわぁ~、さすがは野生の勘。凄いタイミングだね、司」

滋が感心したように言う。

「もちろん私は後部座席にいたんだよ?それにその子には長く付き合ってる彼女がいるの知ってるし。・・・でもあいつ、見た瞬間凄い剣幕でその子に迫ってさ」
「まぁ道明寺さんなら当然そうなるでしょうね」
「見知らぬ男と二人きりで車に乗って帰宅したんじゃあねぇ・・・・・」
「だーかーらー、そんなんじゃないって!それもあいつに説明したんだけど全然聞く耳持ってくれなくて。ぶん殴りそうな勢いですごむもんだから、彼逃げるように帰っちゃって。もう申し訳ないったら」
「・・・それで?それからどうしたんですか?」



それから・・・・・は散々だった。

「相変わらずお前はあっちにフラフラこっちにフラフラ、ちょっと目ぇ離すとすぐにこれだ」
「だから中野君はただの同期だって言ってるじゃん!彼女だっているし、うちにつくほんの数分前までは女の先輩と一緒だったの!」

玄関をくぐった途端怒りを露わにする司につくしも引っ込みがつかなくなる。
ちょっとでも異性と接点があるだけですぐにキレられていては仕事もできやしない。

「彼女がいたって他の女に手ぇ出すことなんて簡単なんだよ!」
「へぇ~、じゃああんたもそういうことができるんだ?」
「んなわけねぇだろが!俺がそんなことするわけねぇだろ?!」
「だって今そう言ったじゃん」
「あれは世の男共に言っただけで俺にはあてはまらねぇんだよ!」
「何よそれ、意味わかんない!」

ギャアギャア相変わらず互いに引くに引けないまま口論はヒートアップしていくばかり。

「っていうかなんでここにいたのよ?仕事は?」
「・・・・・明日から仕事で東京を離れることになったからお前の顔でもみておこうと思ったんだよ。何日かかるかまだわかんねぇし。で、何とか時間を作って来てみれば知らねぇ男と二人っきりで帰ってきやがって・・・。これじゃあおちおち仕事にも行けねぇっつの」
「だから何でもないって言ってるじゃん!もう、何ですぐそういう方向にもっていくのかなぁ!」

ガンッ!!

頬を膨らませていると突然司がつくしの顔を挟むような形で扉に手をついた。
凄い勢いのせいで大きな音が響き渡り、思わずつくしの体も跳ねる。

「な、何よ?!」
「お前は相変わらず自分の価値を全くわかっちゃいねぇんだよ」
「え?」
「お前にその気がなくても相手はそうじゃねぇことが多々あるってんだよ。彼女がいるからって安心すんじゃねぇ!」

つくしの顔の目前まで迫って司がすごんでくる。
こんなときにもかかわらず相変わらずこの男は何て整った顔なんだと思ってしまう自分がバカすぎる。

「だ、だから何もないって・・・・」
「もういい。お前には言っても無駄だから行動でわからせてやる」
「えっ?」

突然司の顔が肩に沈んできたかと思うと、首筋に温かい感触を感じて体がビクッと跳ねる。

「ちょっと、道明寺!なにすんの・・・・・あっ!」

ヌルッとした感触で首筋を舐められていると気付いたのも束の間、次の瞬間にはチクッと鋭い痛みを感じた。
まさか・・・?!この痛みには嫌と言うほど身に覚えのあるつくしはハッとして司の体を押しのけようとするが、ただでさえ体格差が激しい司がちょっと本気を出せばピクリとも動かすことはできない。後ろに引こうにも扉に阻まれてどうにもこうにも身動きがとれない状態だ。

「ちょっと、バカバカバカッ!!どこにつけてんのよ!やめなさいよっ!」

必死で叫んでいる間もまた一つ、一つと首筋や耳の後ろにその痛みが走る。

「本気で怒るんだから!絶対許さないんだから!バカバカバカばんっ・・・・・・・!!」

気が付けば唇ごと自由を奪われていた。おまけに顔を両手で掴まれ、もう何一つ抗う術がない。
すぐに口内に侵入してきた舌の感触から逃れようとするが、あっという間に捉えられ、縦横無尽に食べ尽くされていく。
心の中では憤慨していても、いつだって蕩けるようなその感触に次第につくしの体から力が抜けていく。
ただキスをされているだけなのに、気が付けば膝から力が抜け落ちて司に支えられていなければ立っていられないほどになっていた。

「はぁはぁはぁ・・・・・」

どれくらいの時間が経ったのだろうか。
ようやく唇を解放されたときには息も絶え絶えになっていた。
司はつくしの濡れた唇を親指でグイッと拭うと、キスができそうなほどの至近距離で言った。

「わかったか。男なんて本気になれば簡単にこういうことができるんだよ。お前は俺だけのもんだ。フラフラすることは絶対に許さねぇ。これはおしおきと俺のモンだっていう証だ」
「なっ・・・・!」
「俺がいない間フラフラすんじゃねぇぞ。いい子で待ってろ」

そう言って唖然とするつくしの唇にもう一度キスを落とすと、司は扉を開けて部屋から出て行った。
支えを失ったつくしの体がずるずると壁伝いに落ちていき、やがてペタンと玄関に座り込んでしまう。
唇に首筋に、燃え上がるような熱が残っているのがわかる。
それからしばらくつくしはその場から動くことができずにいた。




「・・・・・で?先輩は一体何に対して怒ってるんです?」

一通り聞き終えた桜子が冷静に口にする。

「だって!あいつ、絶対につけないでって前から言ってたのにあんな・・・・・」
「キスマークのことですか?」
「・・・前に知らない間に見えないところにつけられて職場ですっごくからかわれたことがあるの!身内だけにからかわれるならまだいいけど、仕事として会う人にまで見られてたかと思うともう恥ずかしくて・・・・」
「え~?愛の証って感じでいいじゃん!」

あっけらかんと言ってのける滋をつくしは一睨みする。

「社会人なら最低限の身だしなみは必要なの!ああいうのを見せて満足するのは本人だけなんだから!だからそれ以降は見えるところには絶対つけないって約束したのにあいつ・・・・しかもあんなにいっぱい・・・」
「どれどれ?・・・・うわっ!これは凄いわ。さすがは司」

つくしの来ていたタートルネックの襟元をグイッと引っ張ると、さすがの滋も驚いた声を上げた。

「え、私も見せてください。・・・・うわ~、これはすごいですね」
「ほんとだ・・・すごい、耳の後ろもあるよ、つくし」

滋に続いて桜子と優紀も物珍しいものを見るようにマジマジと観察し始める。

「ちょっと!見世物じゃないんだから!」

つくしは思いっきり服を引っ張って再び首を隠す。
引っ張った勢いで布がピキッと鳴ったような気がするが、今はそんなことは後回しだ。

「さすがにそれはやりすぎかもしれませんね」
「でしょう?!もう隠しようがないくらいの数なんだから!しかもすっごい強さでつけてるし。タートルネックを開発してくれた人がいなかったらもうどうなってたことか・・・」

寒さを凌ぐ以外に目的はないと思っていたタートルネックがこれほどに有難い存在だったとは。
こんなことでもなければ一生気付くことはなかっただろう。

「だから連絡を絶ってるんですか?」
「そうだよ。あいつのことだからちっとも悪いなんて思ってないんだから!」
「でも電源まで切っちゃうなんて、道明寺さんなら強行策に出るんじゃないの?」

優紀の心配はもっともだ。目的のためなら警視総監を動かすことさえ厭わない男なのだから。

「大丈夫。事前に力技に持ち込むようなことがあれば別れてやる!って釘をさしてあるから」
「わぉ~、さすがはつくし。司の取り扱いはお手の物ってわけか」
「あの道明寺さんを我慢させることができるのなんて・・・・ライオンの調教より難しいんじゃないですか?」
「うんうん、それは言えてる」

「ちょっと!そんなことはいいから今日は飲むよ!煩わしいことは忘れて楽しむんだからっ!」

やいのやいの面白おかしく話に花を咲かせる3人に不機嫌そうに視線を送ると、つくしは気分を切り替えるように目の前のグラスに入ったアルコールをグイッと一気に煽った。





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00 : 18 : 00 | 晴れ、ときどき×× | コメント(10) | page top
晴れ、ときどき×× 1
2014 / 10 / 30 ( Thu )
~♪~~~~♪~~

ボフッ!!

ひっきりなしにかかってくる携帯に枕を投げつける。
幾分音が小さくはなったものの尚も音が途絶えることはない。

「もうっ!いつまでかけてくるつもりよ?!」

つくしはイライラしながらもあいつなら時間の許す限りやり続けるに違いないと妙な確信を持っていた。鳴り続けている音楽がプツリと途絶えた一瞬の隙をついて考える。
仕方がない。
使えなくなるのは困るがしばらく電源を落としてしまおう。

~♪~~♪

そう思って携帯に手を伸ばした瞬間、先程までとは違うメロディが響き始めた。
この音楽はあいつからの着信音ではない。
つくしは急いでそれを手に取り画面を確認した。

「桜子・・・?・・・もしもし?」
『あ、先輩。お元気ですか?今日T4で集まらないかって滋さんと話してるんですけど、先輩の予定はどうですか?」

大学を卒業して1年。
それぞれが自分の道を進み始め、学生の頃のように頻繁には会うこともなくなっていた。
だが時間を見つけてはこうして定期的に女子会を開いている。それがつくしにとっても息抜きとなっていた。

「行くっ!!絶対行くっ!!」
『先輩がそんなに乗り気なのも珍しいですね。・・・・まぁいいです。お話は後でゆっくりと。じゃあいつものところに7時でいいですか?』
「了解!」

通話を終わらせると先程までの鬱々とした気分が一気に晴れている自分に気付く。
今日は煩わしいことは忘れて思いっきり楽しもう。うん、そうしよう。

~~♪~~♪~~

そう思っているところに手の中の携帯が再び音を奏で始める。
名前なんて見なくてもわかる。この着信音を響かせるのは一人しかいないから。

「もうっ、あんたはそんなに暇な人間じゃないでしょ!」

叫ぶが早いかつくしはブツッと一気に電源を落とした。
ようやく室内に静寂が訪れる。さっさとこうしておけば良かったのだ。
はーーっと盛大に息を吐き出すと、つくしは仕事に行く準備を始めた。


******

「牧野さん、今日皆で飲みに行かないかって話があるんだけど一緒にどう?」
「あ、ごめんなさい!今日は予定があって・・・・」
「あ~、もしかしてデート?」

一日の業務を終えてデスクの上を片付けていたところで声をかけられた。
入社したときから何かとよく面倒を見てくれるいい先輩だ。
是非にといいたいところだが今日はあいにく先約がある。

「まさか~!女子会ですよ、女子会」
「あら、牧野さんもなの?それじゃあお互い一週間の疲れを吐き出さなきゃね」
「ほんとですね。私、気合い入りまくってますよ」

そう言ってむんっ!と腕まくりをするつくしに吹き出す。

「あははっ!じゃあまたの機会にしましょ。じゃあお疲れ様!」
「はい。お疲れ様でした!」


大学卒業後につくしが就職したのは輸入品の取り扱いをする中小企業。
決して大きくはないが社員同士の繋がりはとても強い。
そこにつくしの性格も相まってこうして声がかかることは少なくないのだが・・・・

「よしっ、私も急いで準備しなきゃ」

考えることを無理矢理中断させると、つくしは更衣室へと急いだ。


****

煌びやかな店内を進んでいくと見えてくる重厚な扉。
外からは中の様子を伺い知ることはできない。VIPのための部屋だ。
つくしは来る度に身の丈に合っていないなと思いつつ、その扉に手をかけた。

「つくし~!遅いぞっ!」
「ごめんっ!電車一本乗り遅れちゃって」

開けて真っ先に目に入ってきたのは滋だった。
横には桜子と優紀もいて、どうやら自分が一番最後だったようだ。

「つくし、お疲れ」
「先輩、お疲れ様です」
「お疲れ。今日は皆早いんだね?」
「だって花金だよ?俄然頑張っちゃうでしょ~」

ニヒヒと笑いながら滋がつくしの隣へと移動してくる。

「先輩何にしますか?」
「あ、じゃあカシスオレンジで」

手慣れた動作で桜子が全員分のアルコールを注文すると、
運ばれてきたグラスを片手に一度全員立ち上がった。

「じゃあ、久しぶりのT4、カンパ~イ!!」
「「「カンパ~イ!!」」」

滋のかけ声で乾杯すると、それぞれがグラスの中身をグイッと煽る。
中でもつくしのピッチは一番速かった。

「つくし今日はグイグイいくね。何かあった?」
「別に何も~?」

心配そうに顔を覗き込む優紀を気にすることなく、つくしは目の前にある美味しそうな料理を一掴みして口に運ぶ。

「ん~、美味しいっ!やっぱり仕事終わりのお酒とおいしいご飯は格別だわ」
「確かに。っていうか私たちも全員社会人かぁ~。なんか不思議だよね」
「うんうん、このメンバーでいると学生気分が抜けないって言うか」
「わかるわかる!一瞬で戻っちゃうよね」
「まぁ実際ほとんど成長してないんだけどさぁ・・・・」
「あはははっ!」


ピリリリリリリリリっ!


各々話に花を咲かせていたとき、室内に一つの着信音が鳴り響いた。
どうやら桜子の携帯のようだ。

「あ、ごめんなさい。私のです」

そう言うと鞄の中から携帯を取り出す。画面を確認した桜子の動きが一瞬だけ止まったような気がするが、次の瞬間には普通に電話を耳にしていた。
つくしをはじめ残りのメンツは会話の邪魔にならないようにお酒やおつまみを口にしている。

「もしもし?はい、お久しぶりです。・・・・・え?先輩ですか?」

聞こえてきたその言葉につくしの手がピタリと止まった。
見れば桜子がこちらを意味ありげに見ている。
その電話の相手が誰であるか、そして何が目的であるのかを瞬時に悟ったつくしはブンブンと首を横に振りながら手で大きく×印を作った。

「・・・・・・いえ、私は知らないです。・・・え?・・・はい。はい、わかりました。それじゃあ失礼します」

ピッという音と共に会話を終わらせると、いつの間にか室内は静寂に包まれていた。

「もしかして司?」

最初に口を開いたのは滋だ。

「はい。先輩がそこにいないかって。携帯が繋がらないって心配してましたよ?」
「つくし~、またケンかしたの?」
「・・・・・・別に」

否定の言葉を出しながらもつくしの顔は明らかに不機嫌だ。

「・・・・・で?一体何があったんですか?道明寺さんに居場所を知られたくないならちゃんと話してくれますよね?」

有無を言わさない桜子の口調に顔を上げれば全員が自分をじっと見つめている。
こうなっては話すまで逃げることは許されない。
つくしははぁ~っと溜息をつくとゆっくりと口を開いた。





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09 : 46 : 35 | 晴れ、ときどき×× | コメント(8) | page top
甘い戦争
2014 / 10 / 29 ( Wed )
カチャカチャカチャ、カチッ・・・・

難しい顔で目の前の画面と睨み合いをしながら時折時計に目をやる。
あれから30分。・・・・・・もうすぐだろう。

そう思ったのとほぼ同時に、下から騒がしい音が聞こえてきた。

「やっと来たか」



『バイト終わったよ!これから向かいます。(お迎えはいらないから!)だいたい30分くらいかな』



先程つくしから入ったメール。

今日は久しぶりに丸一日休みだった。
だから邸でゆっくり過ごすぞと連絡をしたところ、こともあろうに『ごめん、バイト』とほざきやがった。
あの野郎、このところ忙しくてほとんどデートらしいデートもできてないっていうのに、バイトの一言で終わらせようとしやがった。それが愛する恋人に対する言葉かよ?
だったらせめてバイト後に来いと説得してなんとか約束を取り付けた。

司は今すぐにでも廊下に飛び出して行きたい気持ちをグッと抑える。
つくしが一体どんな表情でこの部屋に入ってくるのかを楽しみにしていようと、全神経が背中に引っ張られながらも再び目の前の書類とパソコンへと向き合った。


******


カチ、カチ、カチ、カチ・・・・・・


時計の音が広い部屋にやたらと響き渡る。音が聞こえるごとに司のイライラは募っていく。

「・・・・・・・・・いくらなんでも遅すぎだろっ!!」

そわそわ浮き足立つ気持ちを抑えながら待っていたが、待てど暮らせどつくしが現れる気配がない。
もう我慢の限界だとばかりに立ち上がった。その勢いで椅子が倒れたことなんて気づきもしない。
どんな顔かを見るのが楽しみなんて思っていた心はどこへやら、立ち上がるが早いか司は凄まじいスピードで部屋から出て行った。

「あいつどこにいるんだ?」

ここに来ていることに間違いはない。
つくしが来たときにはいつも邸が騒がしくなるから。はっきり言って自分が帰宅したときよりも歓迎されている。
ざわつきが聞こえてからもう優に15分は経過している。おそらくどこかに寄り道をしているのだろう。
普通は真っ先に俺の所に来るもんじゃねぇのか?!

いつもは気にもならないのに、無駄に広すぎると感じてしまう邸を苦々しい気持ちで歩き回る。
と、どこからともなく楽しげな声が聞こえてきた。


「・・・・・いいんですか?」
「いいんですよ~!いつもお世話になってるのでほんの気持ちです」
「でも司様が・・・・・」
「そんなの気にしなくていいんですって!どうせあいつはいらないんですから。貰ってやってください」


どうやら厨房から聞こえてくるらしい親しげな会話に司の心中はますます落ち着かなくなる。
会話の相手はおそらく料理長である柴田だろう。40代だがまだ独身の男だ。
あらぬ妄想を頭の中で繰り広げながら急いでその場所を目指して走る。

「では御言葉に甘えて遠慮なくいただき・・・・・」

バアアアアアァンッ!!!!

「ヒッ!つ、司さま・・・・・!」

扉がもげてしまうのではないかと思うほどの力で開いた瞬間、中にいた人影が飛び上がった。男に至っては1メートルほど飛んだのではないかと思うほどに驚きと恐怖に満ち溢れている。
それもそのはずだろう。この邸の主が額に何本もの青筋を立てて自分を睨み付けているのだから。

「あ、道明寺。どうしたの?そんな顔して」

だが向かい合うつくしはそんなことは何処吹く風。司の不機嫌さの理由など全く思い当たらず、へらへらと笑っている。

「お前・・・・何してんだ?」
「え?あぁ、これ?実は昨日お菓子を作ったんだけどちょっと作り過ぎちゃって。食べきれないからお裾分けしようかなぁって。で、柴田さんにはこの前ケーキをご馳走になったからそのお礼にと思って持ってきた・・・・」

「よこせ」
「えっ?」

つくしの言葉を最後まで聞くことなく司がズイッと一歩前に出る。
だが出たのはつくしの前ではない。柴田の前だ。
男性としては比較的小柄な柴田に覆い被さるように上から見下ろして右手を差し出している。
その顔はどう控えめに見ても怒っているとしか思えず、柴田は硬直している。

「よこせ。早く」
「ちょ、ちょっと道明寺?!あんた何言ってんのよ!」
「うるせぇ、お前は黙ってろ。おい柴田、早くそれをよこせ」
「は、はいっ・・・・・・!!!」

柴田は顔を真っ青にしながら両手で手に持っていた物をペコペコと差し出した。
もはや恫喝も同然だ。

「ちょっと!それは柴田さんにあげたものなんだよ?何すんのよ!」
「うるせぇ!それは俺のセリフだ!俺の部屋に来るのに一体何日かかるつもりなんだよ?!」
「少し寄り道してただけじゃん!」
「何が少しだよ。一体どんだけ待たせりゃ気が済むんだよ?!いつまで経っても来やしねぇから様子を見に来てみれば他の男にイチャイチャプレゼントなんかしやがって・・・・」
「はぁ~?ばっかじゃない?!イチャイチャなんてしてないじゃん!それに柴田さんはいつも良くしてくれてるから・・・・」

突如目の前で始まった言い争いに、司相手にこんなにはっきり物が言える人間がこの世に本当にいたのだとある意味感動しつつも、柴田は慌てて仲裁に入る。

「牧野様!いいんです。私のことならお気になさらないでください。お気持ちだけで充分嬉しいですから・・・」
「でもこれはせっかく柴田さんにって・・・・」
「いいから、ほら、行くぞっ!!」
「ちょっ。ちょっと?!待ってよ!柴田さんに・・・・・・・・っ!」

全く納得していないつくしの腕を掴むとそのまま司は厨房を後にした。つくしがギャアギャア何か文句を言っているが、そんなことお構いなしにズンズン引き摺るようにして自室へと向かっていく。
柴田は遠ざかっていく声を聞きながら、うっかり食べてしまった後に気付かれなくて良かったと、命拾いしたことに心底安堵していた。



バタンッ!

「ちょっと道明寺!ほんとにどういうつもり?!」

部屋に入るなりつくしが食ってかかるが、司も負けじとつくしを睨み付けた。

「お前こそどういうつもりだよ?俺以外の男に何かをやるなんてよ」
「何かって・・・・ただのチョコじゃん!」
「チョコだろうと何だろうとダメに決まってんだろうが!しかもあいつは独身だぞ?!」

司のその言葉につくしの目が驚きに見開かれる。さっきから何を怒っているかと思ったら・・・
つくしは腹が立っていたことも忘れて思わず吹き出してしまった。

「何?もしかして嫉妬してるの?相手は柴田さんだよ?そんなことあるわけないじゃん!っていうか、殺されるのがわかってるのに万が一でもそんなこと考える人がいるわけないじゃん!」
「うるせぇ!相手が誰であろうと男にものをやったりするんじゃねぇよ。俺以外にやるのは許さねぇ」
「プッ!・・・あんたの嫉妬深さは異常すぎ。だって、あんたチョコなんて食べないでしょ?甘いもの嫌いじゃん」

呆れたように笑い飛ばすつくしをしばし不満そうに見ていた司だったが、突如何かを閃いたように笑う。
すぐ傍にある椅子に腰掛けると、尚も笑いが止まらないつくしの手を引き自分の膝の上へと乗せた。

「ちょ、ちょっと?!」

突然のことに驚きつくしはジタバタと暴れ回るが、後ろからガッシリとお腹に回された腕が動きを完全に封じてしまっている。

「食えるぜ」
「えっ?」
「チョコ、食えるぜ」

そう言うと、司は手にしていた包みを片手でいとも簡単に開いていく。
やがてハートの形をしたチョコレートがいくつか入っているのが見えてきた。
司はよりにもよってハートの形をしたものを男にやろうとしていたのかと、チッと舌打ちをした。
忌々しい気持ちを残しつつ一粒取り出すと、ポカンと自分の行動を見つめているつくしの口に何の前触れもなくチョコを突っ込んだ。

「ブッ?!」
「そのまま食うんじゃねぇぞ。それを食うのは俺なんだからな」
「?!」

もごもごとチョコを口に含んだまま驚きを見せるつくしに不敵な笑みを向けると、司は軽く口を開けながらサラッと言った。

「お前が食わせろよ。口移しで」
「・・・・・・っ?!」

大きい目がさらに大きく見開かれて今にも零れ落ちそうなほど。司はそんな様子に笑いながらつくしを見下ろしているが、当の本人は即座にブンブンと頭を横に振り回している。

「お前がしねぇなら俺から自分で食いに行くぞ。どっちがいい?5秒前、4、3・・・・」
「・・・・・っ!!」

つくしは目の前にいる男を驚愕の顔で見ているが、この男はやると言ったことはやる。そういう男だ。
食うか食われるか、二者択一しかないのならば・・・・

「2、1・・・・・・!」

全くもって理不尽且つ納得はいかないが、食われるよりはまだましと判断したつくしは司の頬を両手でガッと掴み、なるべく深入りしないようにに唇をつけた。既に開いている司の唇の隙間から恐る恐る大部分が溶けてしまったチョコレートを差し込むと、すぐに顔を離す。

「・・・・・甘ぇ」

苦々しい顔でそう呟いた司が唇にはみ出ていたチョコをぺろりと舐める。その姿が何とも艶っぽくてつくしは直視できない。必要に迫られたとはいえ、あらためて自分のしたことが恥ずかしくてしょうがない。

「だから言ったじゃん!あんたは食べないでしょって」
「・・・・でもこういう食べ方なら悪くねぇな。あと何個残ってんだ?まだあっただろ」
「えっ?!」

予想外の一言につくしが固まる。ま、まさか全部・・・・?
ハッと気が付いたときには司の手が包みに伸びていて、我に返ると疾風の如く横から残りのチョコレートを奪い取った。

「おい、取るんじゃねぇよ」
「だ、だめだめだめっ!!これは私のなんだから!!」
「お前のものは俺のもんだろ?早くよこせ」
「だめっ!これは私が食べるの!!」
「何言ってんだ、もともと柴田にやるつもりだったんだろうが。っつーか、お前がその気なら俺も本気出すぜ?」

ひっ・・・!なんて恐ろしいことを。
この男が本気を出したら自分なんてひとたまりもない。しかも今はまだ日も高い昼だ。
少しでもいい雰囲気になればそのまま押し込まれてやりたい放題やられるに違いない。
そう考えただけで背中からゾクッと震え上がる。

「あっ、おいっ!どこに行くんだよ!逃げんなコラァっ!!」

身の危険を感じたつくしは一瞬の隙をついて膝から飛び降り、一目散に扉へと逃げ出した。
だがすぐに司が猛スピードで追いかけてくる。

「きゃーーーーーーーっ!!!追いかけてこないでよぉっ!!!」
「じゃあお前が止まれっ!止まらねぇとすげぇことすんぞ!」
「ひぃいいいいっ!タ、タマさーーーーーーん!柴田さーーーーーん!助けてくださいっ!!!!」
「待てコラァ!!」
「きゃーーーーーきゃーーーーきゃーーーーーーっ!!」
「くそっ、てめぇはなんでそんなに逃げ足が速ぇんだっ!!」



休日の穏やかな邸に響き渡る悲鳴と怒号。
邸にいる人間が固唾を呑んでその声に聞き耳を立てているが、誰一人としてつくしを助けようとするものはいない。

「ぎゃ~~~~~っ!!神様仏様ぁ!どうかお助けを~~~!」
「うるせぇ!散々手こずらせやがって。せっかくの休みに疲れさせんじゃねぇよ!」
「ぎゃーーーーーー!だれかぁ~~、たすけてぇ~~・・・・・・!・・・・・・・!」

廊下を走り回る音がしばらく続いていたが、そのうち一際大きな悲鳴が轟いたかと思うと、次第にその声が小さくなっていく。やがて主の部屋の方向でその音も完全に聞こえなくなってしまった。

そこで繰り広げられているのは戦争なのかそれとも・・・・・?



邸にいた全ての人間が思うことはただ一つ。



どうか牧野様が無事に生還できますように、と。





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01 : 33 : 34 | 甘い戦争 | コメント(4) | page top
眠れぬ夜は誰のせい? おまけ
2014 / 10 / 28 ( Tue )
カサッパサッ・・・
カタカタカタ・・・・


どこからともなく聞こえてくる音につくしはゆっくりと瞼を上げた。

「・・・・あれ・・・・?」

すぐに状況が掴めないが、どうやらいつものベッドで寝ていたようだ。

「起きたか?」

起きようと少しだけ体を動かしたところでかかった声の方向に目をやると、
ベッドにほど近い所にあるテーブルに座ってパソコンと向き合っている司がこちらを見ていた。

「あ、おはよう」

条件反射のようにつくしがそう言うと、口角を上げて司がフッと不敵に微笑んだ。
そして立ち上がるとゆっくりつくしのいる場所へと近付いてくる。

「おはようじゃねぇだろ?もう昼だぜ?」
「えっ?!」

その言葉にガバッと飛び起きる。

「いい眺め」
「えっ?・・・・・ってぎゃあっ!!」

ニヤニヤと満足そうにこちらを見ている司に不思議に思い視線を下げると、全身真っ裸の自分がいた。
つくしが慌てて布団を頭から被ると、司が吹き出した。

「ブッ!お前、ぎゃあって・・・・もうちっと色気のある言い方できねーのかよ」
「で、できない!っていうか・・・・・」

ようやく頭が覚醒してきて蘇る。
起きてから怒濤の如く襲われたあんなことやそんなことの数々・・・・
もともと野獣化しやすい男だったけれど、あそこまで凄いのは初めてだった。
あ、あ、あんな・・・・・・・

「ちょっと!あんた一体どういうつもり?いきなりあんなことするなんて!」

顔を真っ赤にしてプルプルと怒り狂うつくしだが、司は涼しい顔のまま。

「それはこっちのセリフだろ?俺言ったじゃねぇか。もともと煽ったのはお前だって」
「はぁ?一体何を言って・・・・」

司はドサッとベッドに腰掛けると、顔を赤くしたままのつくしの顎をクイッと持ち上げた。
至近距離で見る男の美しさに、つくしはまた違った意味で赤くなる。

「言っとくけど、先に俺を襲ったのはお前だぞ?」
「う、嘘っ!」
「嘘じゃねーよ。俺が戻ったらお前信じられねぇくらい酔っ払ってたんだぞ。で、部屋に連れて来たらお前が俺に襲いかかってきたんだ」
「そんなわけない!」
「じゃあこれ見てみろよ」

そう言うと司は着ていたシャツのボタンをいくつか外し、胸元を開いてつくしに見せた。
そこを見たつくしがハッとした顔になるのを司は満足そうに見やる。

「こんな跡誰がどうやってつけるんだよ?俺にこんなことができるのはお前しかいないだろ?」
「う、嘘でしょ・・・・?」

つくしの目の前に見えるもの。
それは司の胸元にいくつもつけられたキスマークの数々。
それがキスマークであることはいつもつけられる側のつくしにとっては確信のもてるもので。
司の言う通り彼にこんなことができるのは自分以外にはあり得ない。
仮に集団で彼を襲う輩がいたとしても、返り討ちにあって半殺しされるのがオチだ。

「ここだけじゃねーぞ?」
「えっ?」
「際どいところにもつけたんだぜ、お前。見てみるか?」

そう言ってズボンに手をかけようとしたところで慌ててつくしは止めに入る。

「ぎゃーっ!もういいから!見なくていいからっ!!わっ?!」

ガバッと自分の体に飛びついてきたつくしの体を捉えると、司はギュッと胸の中に抱きしめた。
何も身につけていないつくしの体に直に熱が伝わってくる。

「お前マジで凄かったぞ。俺を押し倒すわ、手を縛るわ、手と口で襲ってくるわ、挙げ句の果てには自分で入れて・・・・」
「わーーーーわーーーーーーーわーーーーー!!それ以上言わないでぇっ!!!」

信じられないとばかりに首を振って耳を塞ごうとするが、体をがっちりホールドされていて身動きが取れない。

「バカ、この後が重要なんだよ。散々煽って自分で突っ込んでおきながらお前どうしたと思う?
そのまま寝たんだぞ?ありえねーだろ?突っ込んだままでだぞ?」


ガガーーーーン・・・・

そこまでバカやったの?
我ながらあり得なさすぎる・・・・・・・どこかに消えたいくらい恥ずかしすぎる。

つくしは自分の失態ぶりに失神しそうだった。


「そのままやっちまおうかと思ったけど我慢したんだぞ?だから俺は悪くねぇ」
「で、でもっ!物事には限度ってものが・・・・!」
「あの状態で一晩中お預けくらったんだ。あれくらい当然だろ?俺はまだまだいけたし。何なら今からやるか?」
「ムっ、ムリムリムリムリっ!!!!これ以上はムリっ!!!!!本気で死ぬっ!!!」

顔面を蒼白にしながら首がもげるんじゃないかという勢いで振りまくる。
そんなつくしがおかしくて司はまたしても吹き出した。

「ぶっ!お前おもしれぇな。夕べと同一人物とはとても思えねぇよ」
「も、もうそのことは忘れて・・・・・」

ピタッと動きを止めると今度はグッタリと項垂れてしまった。

「くくっ、それは無理だな。・・・まぁ、またいつかああいうお前に会える日を楽しみにしてるぜ」
「えっ・・・・?!それはないっ!もう二度と同じ過ちは起こさないから!」
「それはどうだろうな?」

司が意味ありげな顔でニヤリと笑う姿に思わずつくしの背筋がゾクッと震えた。
この笑顔は何かを企んでる時だ・・・・・!

「シャワー浴びるだろ?とりあえず体は拭いといてやったけどよ」
「えぇっ?!」
「仕方ねぇだろ?お前は気ぃ失っちまうし、かといってそのままだったら全身ドロドロだったぜ、お前」
「ドっ・・・・・・・・・?!」


ドロドロ・・・・?全身・・・・・?

もうほとんど途中から意識も朦朧としていてどんなことをされたか覚えていない。
覚えているところだけでも充分恥ずかしすぎるのに、さらにそれ以上・・・・?

赤くなったり青くなったり忙しいつくしを抱き上げると、司はそのままバスルームへと歩き出した。

「ちょっ、自分で行けるから!」
「どう考えても無理だろ?今のお前は絶対に一人じゃ立てないぜ」

「・・・・・!」

「俺も多少やり過ぎたのは自覚してるからちゃんと隅々まで世話してやる。安心しろ」
「だからそれが一番安心できないっ!」
「大丈夫だって。今はしねーよ。・・・・・・・・・・・・・最後まではな」

ニヤリと笑いながらそう言うと、司は暴れ回るつくしに構うことなく足取りも軽くバスルームへと消えていった。





*****


それから数分後、ようやく空になった部屋にタマを含めた数人が掃除にやって来た。
夕べから籠もりっきりだったせいでいつ入るかとタイミングを伺っていたのだ。
部屋に入るなり使用人は慌ただしく掃除を始めていく。
主が出てくるまでに仕上げなければならないから時間との勝負だ。


『・・・・・・ぎゃあ~~~!!・・・・・・ちょっと・・・・・・!・・・・どこ触ってんのよ!・・・・・・・やめてってばぁ!・・・・・!・・・!』


せっせと動き回る室内にバスルームの方から断末魔に似た叫び声が響いてくる。


「・・・・ったく、これだけ部屋中にやりまくりました臭を漂わせておきながら何を今さら恥ずかしがってんだかね、あの子は。
やることやりまくっておきながら今さらカマトトぶってんじゃないよ」


やれやれと溜息をつきながらタマの零したその一言に、シーツやタオルなど、
いかにもその痕跡がはっきりと残されている物を手にしていた使用人が真っ赤にフリーズしたのを当の本人達は知る由もない。





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20 : 24 : 23 | 眠れぬ夜は誰のせい?(完) | コメント(2) | page top
愛を込めてわがままを
2014 / 10 / 27 ( Mon )
壁に掛けられた時計をちらりと確認すると、どこか落ち着かない気持ちをおさえながらつくしは席を立った。

「じゃあお先に失礼します。お疲れ様でした!」
「お疲れ様~!」

会釈をしつつ背中に言葉を受けながら足早に部屋を後にする。
急いで更衣室へ駆け込むと制服のボタンに手をかけ着替え始めた。


「あれ?牧野さん今日は随分オシャレだね。・・・あ~、もしかしてデートなんじゃない?」

あらかた私服を身につけたところで同じように着替えていた先輩の一人から声をかけられた。

「え?あははは・・・・」
「あ~やっぱりぃ!これだけオシャレしてればバレバレだよね。・・・それにしてもほんとに素敵~」

そう言いながらまじまじと観察される。その視線がどこか気恥ずかしい。
いつもならシンプルなアンサンブルにスカートやデニムなど、お世辞にもオシャレを意識しているとは言いがたい服装が主流のつくしだが、今日は明らかに違っていた。
紺色のワンピースはハイウエストでリボンがついてあり、膝丈ほどで裾がふわりと揺れる。上から羽織った淡い桜色のカーディガンとの組み合わせはまるでどこかの令嬢を思わせるほどで、いつものつくしからは想像もつかない。しかも見るからに質のいいものを身につけているのがわかる。

「あ!時間がないのでお先に失礼しますね。お疲れ様でしたっ!」

自分でもらしくないと自覚している姿に、つくしはそれ以上の追及から逃れるように慌てて更衣室を後にした。

「やっぱりどう考えてもバレバレだよね・・・」

会社のエントランスを抜けながらつくしはガラスにほんのりと映る自分の姿を見る。そこにはどこぞのお嬢様かと見紛うような格好をした自分がいる。先輩の指摘通り、身につけているものはひと月の給料が簡単に飛んでしまうであろう高級なものばかり。
本当ならこんなもの身につけたくない。でも絶対にとの厳命が下されているから仕方ない。


今日は3週間ぶりのデートだから。

司が日本に帰国してから一年。つくしも一社会人となっていた。
やれすぐに結婚するぞだの、せめて系列に就職しろだの口うるさい司をなんとかおさえて、道明寺とは関係のないごく一般的な会社に入った。自分が自分であるために。きちんと自分も社会の一員であることを自分の身をもって自覚したかったから。
それに、帰国して副社長に就任してからの司は多忙な日々を送っていて、実際のところ結婚なんかまだまだ現実的ではない。どこにでもいるような一般人の自分と、若くして大財閥の片翼を担うほどの相手。生活スタイルが合わないのは当然のことなのだろう。

だからこそ、こうしてたまに会える時間は貴重なのだ。
らしくない格好だって、好きな人がそうして欲しいと望むのならば、たまにはプレゼントされたものを素直に受け入れる自分でいたい。つくしはそう考えていた。

(あいつ、この姿見て何て言うかな・・・)

つくしはそんなことを考えながら時間を確認しようと携帯を取り出した。

「・・・・・あっ!」

目的の物を手にした瞬間に思わず口からこぼれた小さな叫び。視線の先で点滅している小さな光がたちまちつくしの頭の中を嫌な予感で埋め尽くす。

「・・・・・・やっぱり・・・」

まさか・・・と恐る恐る中身を確認すると同時に吐き出したため息と共に、みるみるつくしの顔から笑顔が消えていった。

『悪い。急な仕事で間に合いそうもない』

極々シンプルで手短な伝言。
たったその一言が浮き足立っていたつくしの心をいとも簡単に地の底へと落としていく。

「・・・・・・・・はぁ~~~~~~~っ」

待ち合わせの場所まで急いでいた足はすっかり止まり、雑踏の中一人佇むつくしの周りの人間は皆どこか楽しげに見えてくる。今日は金曜日。きっと多くの人が幸せな時間を過ごすのだろう。

「・・・・・・一人でこんな格好なんて恥ずかしいよ」

スカートの裾を掴みながらもう一度ため息がこぼれた。


これで3回連続約束がキャンセルされたことになる。
忙しい中でもなんとか時間を見つけては会おうとしてくれている司だが、いつも直前になって予定がつかなくなってしまう。三度目の正直とばかりに今度こそゆっくり会えると思っていたのだが・・・敢え無くその願いも散ってしまった。

既におめかしをして目的地に向かっていたところで突きつけられたこの現実。ドタキャンもいいところだ。しかもこれで3回連続。普通ならブチ切れたって許されるに違いない。

・・・でもあいつは「普通」ではないから。
想像を絶するほど頑張ってるって知ってるから。
今日だって相当無理をして都合をつけてくれたというのを知っているから。
どれだけ自分に会いたいと切望してくれているのかもわかっているから。

・・・・だから寂しいとか、どうして?なんて言えるはずもない。

あいつと共に歩いて行くということはこういうことなのだ。
だから、いちいち落ち込んだり寂しがったりしている暇なんてない。

「・・・あ~あ。仕方がない。適当にどこかで食べていくかぁ」

そう独りごちると、つくしは先程までとはうって変わって重い足取りで夜の街へと消えていった。



******

「あ~、もうお腹いっぱい。これ以上食べたらお腹破れちゃう」

誰に聞かせるでもなく呟いた声は夜の闇へとすぐに溶けていく。
あれから適当な所に入り一人食事を済ませると、なんとなくすぐに家に帰りたくなくてそのまま店でぼんやりと時間を潰していた。気が付けばすっかり夜も深くなり、もうすぐ日付が変わろうとしている。

「・・・・・・・・・・・あれ?」

一人暮らしするアパートが見えてきたところで、階段のたもとに黒い人影が見えた。

「・・・・誰?まさか不審者・・・・?」

もう深夜に近いこの時間。あんなところに人がじっとしているのはあまりにも不自然過ぎる。
つくしはひんやりと背筋が凍るのを感じながらゆっくりと足を一歩下げた。そして遠目に見える相手に気付かれないようにそっと踵を返して今来た道を戻り始めた。

ジャリッ・・・・

と同時に聞こえてくるもう一つの足音。
恐る恐る少しだけ首を動かして振り返ると、例の人影が自分の方に向かって走っているのが見えた。

「ひっ・・・!」

あまりの恐怖につくしは全速力で走り出した。
だがまたしてもそれと同時に相手の足音も激しさを増す。それは一歩足を踏み出すごとにその距離を縮めているのがはっきりとわかるほどに。このままでは追いつかれてしまう・・・!
そう思ったのと肩を掴まれたのはほぼ同時だった。

「ぎゃあ~~~~っ!!」

ビクッと跳ねた瞬間出た叫び声に、自分を掴んでいない方の手がすかさず伸びてきて口を押さえ付けられた。こ、殺されるっ・・・・?!

「バカ、でけぇ声出すんじゃねぇよ」
「・・・・・へ?」

神様仏様お助けを・・・・!と必死に心の中で叫び続けていたつくしに降りかかった耳障りのいい声。ハッとして顔を上げるといるはずもない男が呆れたような顔で自分を見下ろしていた。

「・・・・・道明寺?!」
「おう。お前何逃げてんだよ」
「え、えっ?・・・・・本物?」

そう言いながら伸ばした手で目の前にある頬をギュッとつねる。・・・・・温かい。

「いてっ。・・・なんだよ?お前酔ってんのか?」
「よ、酔ってない!・・・・って言うか何で?今日はもう帰って来れないって・・・・」

今日は仕事で九州に飛んでいるのは聞いていたから、さっきの連絡で今日中に帰るのは無理だとばかり思っていた。

「んなこと言ってねぇだろ?間に合わないって言っただけだ。それに終わり次第絶対お前んちに行くって連絡入れといたじゃねえか」
「・・・・え?」
「えって、お前まさか見てねぇのか?」

呆れたような様子に慌てて鞄に手を突っ込んで携帯を取ると、つくしは届いたメールを確認した。

「・・・・・あ」

目の前の画面に表示された『何時になるとははっきり言えねぇけど必ずお前の家に行くから』の一文。最初のメールでドタキャンだとばかり思い込んでいたつくしは、それ以上携帯を見るのが億劫でマナーモードのまま鞄に突っ込んだままにしてしまっていた。

「その様子だと見てねぇんだな」
「・・・ごめん。てっきり今日は無理なんだとばかり思ってたから」
「・・・まぁ相変わらずお前らしいっつーかなんつーか」

そう言って司は呆れたように笑った。
その姿を見た瞬間、つくしは何故だか泣きたいほどに胸が苦しくなった。
自分の意識と関係ないところで勝手に熱くなる目頭を見られないように、慌てて司から視線を逸らすと体の向きを変えた。

「ごめんごめん。美味しいものに夢中で全然気が付かなかったわ~。っていうか疲れてるでしょ?今日はゆっくり休みなよ」
「・・・・・牧野、悪かった」

自分に背を向けて急に早口になるつくしの名を呼ぶと、司は予想だにしない一言を放った。
司の口からこぼれた謝罪の言葉に、つくしは驚きに目を見開いて振り返る。

「何度も予定をキャンセルしてほんとに悪いと思ってる。お前が怒るのも当然だ」
「えっ・・・?私別に怒ってなんかないよ?だってあんたが忙しいのは仕方のないことだし何とも思ってなんかっ・・・・・・?!」

尚も早口で捲し立てるつくしの腕をグイッと引っ張ると、司はそのままその華奢な体を抵抗する暇も与えず自分の中に閉じ込めた。今の流れでどうしてこうなるのかわからないつくしはただなされるがままだ。

「道明寺・・・?」
「お前、あのメールは何なんだよ」
「え?」
「あの味気もクソもねぇメールは何なんだ」

間に合わないとの連絡に対して返した言葉。
『わかりました。大変だと思うけど頑張ってね。こっちのことは気にしなくていいから!』
司が気に病まないようにと配慮したつもりだったのだが、何か問題があったのだろうか・・・・?

「気にしなくていいってどういうことだよ。気になるに決まってんだろ?何度も予定をキャンセルして、何とも思わねぇ奴の方がおかしいだろ」
「・・・・でも、」

何かを言いかけたつくしの肩を掴むと、司は顔を覗き込むようにして目線を合わせた。

「なんでお前はいつも我慢するんだよ?」
「我慢・・・・?」
「あぁそうだ。なんでもっと文句言わねぇんだ。なんでもっと寂しいって言わねぇんだ。・・・・・なんでもっとわがままにならねぇんだよ」

そう言う司の顔は、どこか苦しそうで。
誰よりも頑張ってるのがわかっていたから。だからこそこれ以上負担をかけないようにと思ってやっていたことが逆に彼を傷つけていた・・・?

「我慢ばっかすんじゃねぇよ。何のために俺がいるんだ?そりゃあお前を我慢させてるのは俺だし、全てお前の思うようにできるわけじゃねぇのもわかってる。・・・・それでも、もっとお前の本音を見せろよ。言いたいことを言わずに大人しくしてるお前なんて、本当の牧野つくしじゃねぇだろ?」

「道明寺・・・・・」
「もっとお前の本音をぶつけろよ。もっとわがままを言え。それがお前が俺を想ってるってことの証明になるんだから」

本音?
わがまま?
だって、そんなことを言ったら道明寺は・・・・・

「言っとくけど、お前がわがままを言ったぐれぇでどうこうなるほど俺はやわじゃねぇぞ」
「道明寺・・・」

なんだか彼の目がとてつもなく優しい。
そんな姿を見ていたら、いつの間にかつくしの瞳から涙が一粒ぽろりと零れ落ちていた。

「牧野・・・・」

一筋涙の伝った頬を指でそっと拭うと、司は再びつくしを抱きしめた。
包み込まれた温かさにやがてつくしの肩が震え始める。声を殺すように涙を流すその背中を、司は優しく優しく撫でた。普段は俺様な男のそんな仕草にますますつくしの涙腺は崩壊していく。

「だっだって、わがままなんて言えないよっ・・・・!あっ、あんたが誰よりも頑張ってるのっ・・・・よくわかってるか」
「牧野、勘違いするなよ?俺が頑張ってるのは誰かのためじゃねぇ。お前のためでもねぇ」
「・・・・・・・え?」

予期せぬ言葉に涙でぐしゃぐしゃの顔を上げると、不敵に微笑む司と目が合った。

「俺は自分自身のために頑張ってるんだ。・・・お前を手に入れるという俺の唯一の願いを叶えるために」
「道明寺・・・・」
「俺が望むことはただ一つ。お前を手に入れること。そのために必要なことならどんなことだってできる。少しだって苦痛にはならねぇ。・・・・牧野、お前が俺のそばにいてさえくれれば」

あまりにも堂々とそう言い切った司に、徐々につくしの涙も止まり、最後には思わず吹き出してしまった。

「ぷっ、何それ。相変わらず俺様すぎ」
「ったりめーだろ。俺様なんだからよ」

フンッと鼻をならして偉そうに言う姿に、あぁそうだ、これが道明寺司という男なのだとつくしはあらためて気が付いた。

「・・・・だからお前も言えよ」
「えっ?」
「もっともっと自分の本音を。どんなわがままだろうと受け止めてやる。それがお前の俺に対する想いなんだからな」
「道明寺・・・・」

口角を上げて不敵に笑いながらもその目は至極真剣で。
つくしは笑い飛ばすことができなかった。彼が本気でそう望んでいるのが伝わったから。

「・・・・・・・今日は一緒にいたい」

だから、気が付いたら素直にそんなことを口にしている自分がいた。
言った後に照れくさくなったけれど、そんなつくしを見透かしたかのように司が言った。

「今日だけでいいのか?」
「え?」
「明日もあさっても、一緒にいなくていいのか?」
「だって、仕事・・・・」
「この週末を何としてもお前と過ごすために頑張ってきたんだ。予定より少し遅くなっちまったけど、今からの時間は全部お前にやる。・・・・どうする?」

思いもしない言葉につくしの目が見開かれるが、やがてその顔は笑顔で満たされていった。

「・・・・一緒にいたい。道明寺、あんたと二人で」

すんなりと。素直に出てきた言葉に心から嬉しそうな顔で笑うと、司はつくしの肩を引き寄せた。

「いくらでも一緒にいてやる。お前が嫌だっつっても離さねぇから覚悟しとけよ?」
「えっ?!それはちょっと・・・・お手柔らかにお願いします」
「3週間ぶりだぞ。覚悟しておけ」

司の放った言葉に急にあたふたし始めるつくしに笑いながら、二人は肩を寄せて歩き始めた。

「・・・その格好、すげー似合ってる。さすがは俺の見立てだな」
「ふふっ、俺様すぎ」
「ったりめーだろ」

きゃいきゃいと弾む会話が徐々に小さくなると、やがてその声は小さなアパートの中に消えていった。



素敵な週末を。





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01 : 26 : 57 | 愛を込めてわがままを | コメント(11) | page top
眠れぬ夜は誰のせい? 9
2014 / 10 / 26 ( Sun )
ベッドに突っ伏して死んだ者のように眠る愛しい妻の頭をそっと撫でる。
あれから気が付けば2時間ほど、休む間もなくぶっ通しで抱き潰した。
一晩中お預けを食らった煽られたままの体は一度や二度では鎮まるはずもなかった。

白くてキメの細かな肌にそっとシーツをかけると、司はベッドから抜け出し隣室へと移動した。
そしてスマホを手にしてどこかへかけ始める。


RRRRRRRRRR・・・・・・・・


『・・・・・・・はい』

「俺だ。お前何を知ってる?」

『・・・・・・・何?いきなりこんな朝早くに電話してきたと思ったら。俺まだ寝てたんだけど』

「いいから教えろ。お前本当は何があったか知ってんだろ?類」

明らかに寝起きの不機嫌そうな声など気にすることもなく司は類に詰め寄った。

『・・・・詳しくは知らないよ。でも牧野、司が勝手すぎるって怒ってたよ。自分の事は棚に上げすぎだって』

「はぁ?意味がわかんねぇ」

『俺に言わないでよ。でも自分は嫉妬深くて独占欲の塊なのに、自分がキスされたのはサラッと流すだけなんて理不尽だって言ってた』

「はぁ~?誰がキスされたって?」

類の言っていることが全くもって理解できない。

『司でしょ?牧野が言ってたよ。司に仕事先でキスされたって自慢気に話されたって』

「はぁああ?!俺がそんなことするわけねぇだろうが!」

思わず大きな声が出る。おそらく類は携帯を耳から離して顔をしかめているに違いない。

『・・・・・だから俺に言わないでよ。牧野が言ってたんだから。なんでも、牧野がいない時のパーティの席で女にキスされたんでしょ?
で、帰って来てそれを司にニヤニヤしながら話されたって。そのくせ自分はちょっとでも俺と仲良くしてるだけでキレるから頭にきたって』

「キスぅ~?俺がそんなこと女にさせるわけ・・・・・・・・・・・・・っあっ!!」

何かを思い出したように司の口から声が出た。

『・・・・・・・何、やっぱり身に覚えがあるの?』

「いや、あるっつーかなんつーか、あれは・・・・」



いつだったか、つくしが調子が悪くてどうしてもパーティに出られない時があった。
一人で出席したその場で仕事でよく顔を合わせるとある企業の夫妻と挨拶したときのことだ。
3歳ほどの可愛らしい女の子を紹介され、その時に司の口にチュッとされた記憶が蘇ってくる。
今の今まで覚えてもいなかったが、たまにはつくしにヤキモチの一つでもやいてもらいたいと、
いかにも大人の女からされたように話をしたような・・・・・・気がする。

でもあの時は悔しいほど何の反応もされずに華麗にスルーされて、こんなことなら言うんじゃなかったと後悔すらしたほどで。
だからこそ記憶から抹殺されていたのだが・・・・・・まさかずっと気にしてたのか?
つーかやっぱヤキモチやいてたんか?
そう考えると司の口元が思わず緩んでくる。

『・・・・ちょっと、ニヤニヤするなよ?司』

どこかに監視カメラでもついているのだろうか。
類の的確な指摘に司は思わず周りをキョロキョロと見渡してしまう。

『まぁどうせそんなことだろうとは思ったけど。でもくだらないことで俺を巻き込まないでよ』

「く、くだらねぇとはなんだ!くだらねぇとは!」

『だってそうじゃん。で?仲直りはできたの?』

「お?おぉ、まぁな・・・・」

夕べのつくしの妖艶な姿と先程までの情事が蘇り、司の顔は完全に緩みっぱなしだ。
類はそんな様子が手に取るように想像できてはぁっと大きく溜息をついた。

『だったらいいじゃん。でもあんま牧野を束縛するなよ?そのうちほんとに嫌気さされても俺知らないから』

「なっ!誰がだよ!んなわけねーだろがっ!」

『うるさいなー、もういいでしょ?俺寝るから。じゃあね』

「おい、類っ!るっ・・・・・」

聞こえてくるのはツーツーという無機質な音だけ。
司はそんなスマホをじっと見つめながら緩みっぱなしの顔を戻すことができないでいる。

「・・・・何だよつくしのやつ。何の興味もないような振りして可愛いところあんじゃねぇか」

あいつがヤキモチをやくなんて、宝くじが当たるよりも難しいことなんじゃねぇか?
まぁ俺には宝くじ自体必要ないんだが。

・・・・・でもヤキモチやいて酔っ払うとあんなにエロくなんのか・・・・・
たまにはああいうあいつも悪くねぇな。
なんて、司の頭の中でよからぬ欲望がムクムクと沸き上がっていた。





一方その頃__


スマホをベッドに投げると、類は再びその体をベッドに横たえた。
そして目を閉じようとした瞬間ふと独りごちる。

「・・・・・・どうやら今回は返り討ちにあったのは牧野みたいだね。司のことだから味をしめてまたよからぬことを考えそうだけど。
でも牧野もバカじゃないからそうそう上手くはいかないよ。次こそ痛い目あわなきゃいいけど。・・・ま、俺には関係ないけどね」

そんな事を言うとやれやれと再び深い眠りについたのだった。





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