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眠れぬ夜は誰のせい? 3
2014 / 10 / 26 ( Sun )
ガンガンガンガンッ!!
普通ではあり得ないような足音が邸中に響き渡る。
触らぬ神になんとやら、使用人達はその音が近付いてくると一目散にその場から離れて行き、音が過ぎ去るとまたどこからともなく持ち場へと戻ってきた。

「あんなにイライラしてる司様は久しぶりですねぇ。若奥様が大丈夫だといいんですけど・・・」

「フンッ、あんなのただの痴話喧嘩だよ。どうせ明日になればうんざりするくらい機嫌が良くなってるこって」

「タマさん・・・・」

カツンと杖をつきながら現れたタマに全員が安心したように息を吐いた。
タマはやれやれと呆れたような顔で主の部屋の方向を見つめていた。





バターーーーーン!!ツカツカツカツカツカツカ、ドサッ!!

「おい、つくし!起きろっ!!」

部屋に戻って来るやいなや、司はずっと担いでいたつくしの体を大きなベッドの上に置いた。
その反動で柔らかなベッドの上でつくしの体が跳ねる。
歩きながらその揺れが心地よかったのか、いつの間にかつくしはグースカ眠りこけていた。

「ちっ、お前はいつでもどこでも寝やがって・・・おいっ、起きろ!別れるってどういうことだよっ?!」

司はつくしの肩を手で掴むとゆさゆさと揺らした。

「うぅ~ん、お肉はこれ以上食べられないってぇ・・・・」

だがつくしの口から零れてきたのは何とも気の抜けるような寝言だけ。
一度寝落ちしてしまうとそう簡単には起きないことを嫌というほど熟知している司の額には再び青筋が立ち、思わず舌打ちが出た。

「あぁ、クソッ!類が言ってたことが気になるじゃねぇか!」


『牧野、司と別れるって言ってたよ』


類の放った言葉が頭から離れない。
にわかに信じがたいが、類があんな嘘を言うとも思えない。
じゃあ一体何故?
何か最近問題があったわけでもない。全て順調にいっていたはずだ。

・・・・でももしそう思っているのは自分だけだったとしたら?
つくしは何かしらの不満をずっと抱えていたのだとしたら?
・・・・そうでもなければこんなに泥酔するまで飲むなんてことも考えられない。

まさか本気でそう思ってるのか・・・・?

そんな考えが頭を掠めただけでぶるっと体が震えた。

「くそっ!」

司は怒りと焦りで煮えくりかえった頭を冷静にするために、立ち上がるとバスルームへと向かった。
脱衣所に乱雑に身につけていたものを落としていくと、浴室へと入るなり冷たいシャワーを全身に浴びた。

落ち着け。絶対に何かの間違いだ。
冷静に話せばきっとわかる。
だからまずは落ち着け・・・・

邪念を振り払うかのようにしばらく冷水を浴び続けた。





バスローブを身につけて部屋に戻ってくると、つくしはあのまますやすやと眠っていた。
司はガシガシとタオルで頭を拭きながらつくしのすぐ横に腰掛ける。

「ったくお前は人の気も知らねーで呑気に寝やがって・・・・」

悶々と悩んでいるのがアホらしくなってくるほど幸せそうな顔で眠りこけている。
そんな寝顔を見ていると自然と顔が吸い寄せられていく。
司は体を屈めるとゆっくりとつくしの唇に向かって顔を寄せていった。

あと数ミリで唇に触れるという瞬間、突然予告なしにつくしの目がパチッと開いた。
まるでフランス人形のようなその動きに司は一瞬驚く。

「うおっ!びびった・・・って、起きたのか?」

「・・・・・・・・・」

「・・・・つくし?」

つくしは目の前にいる司をじっと見つめたまま瞬き一つせずにいる。司の呼びかけにも反応しない。
司はそんな様子に怪訝そうに顔をしかめる。

「おい、どうしたんだ?つく・・・・おわっ?!」

ドサッ!!
次の瞬間には世界が反転していた。つくしを覗き込もうとしていた体が凄まじい力でベッドに突き倒されていた。
一瞬何が起こったかわからず見上げてみれば、つくしが自分の腹に馬乗りするように座っていた。その顔は心なしか怒っているように見える。

「おい、つくし?一体どうしたんだよ?」

「おしおきだよ!」

「あ?」

「悪い子にはおしおきしなきゃなんだからっ!!」

何を言っているのかさっぱりわからない。

「お前まだ酔っ払ってるだろ?ちょっと水飲んで落ち着けよ・・・って、わっ!」

起き上がろうとした体が再びベッドに押し返される。つくしは胸に手をあてたまま一歩ずいっとお尻を前に進めた。ちょうど司の腹と胸の間辺りに座っている形だ。

「だから!おしおきだって言ったでしょ?」

相変わらずわけのわからない言葉を繰り返す。

「だからお前何言ってんだ?おしおきってなにがむっ・・・・・!」

呆れたように言いかけた言葉は最後まで言いきることができなかった。何故ならつくしが己の唇を塞いでしまったから。
突然のことに司の体は固まったように動かなくなってしまった。
つくしはそんな司の頬を両手で挟み込むと、ほんの少し開いた口の隙間から自分の舌を差し込んだ。瞬間、司の体が跳ねた。





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