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時を超えて 1  by うさぎ
2015 / 01 / 31 ( Sat )
企画司BD
こちらは前回のコラボ作品 <星降る夜に奇跡をひとつ> のその後のお話になります。
単体でも問題ありませんが、未読の方はそちらも是非ご覧くださいませ。









0時を過ぎ、自室で仕事をしているとノックの音が聞こえる。


「入れ。」

静かに開く扉。

コーヒーを片手に持った長男の姿がそこにはあった。

「父さん、今大丈夫?」

パソコンを閉じて部屋に入って来る息子に顔を向ける。

「あぁ、なんか話でもあんのか?」

「うん。ちょっとね。コーヒーここに置くね。」

「サンキュ」

立ち上がり、ソファに座る息子と向き合って座る。

もうコーヒーをブラックで飲めるようになった息子は高校生。

俺より10センチ低い身長は、まだまだ伸びる時期。

いつか追い越される日が来るのかもしれない。


「来週の父さんの誕生日は休み?」

パパからお父さんに呼び名が変わり、今では父さん。

そろそろ親父って呼ばれるのだろうか。

顔は高校時代の俺瓜二つだが、荒れ狂った俺の高校時代とは正反対の息子。

それもつくしのお蔭だろう。

真っ直ぐに育ってくれている。

そして、中学の時から経済学の勉強もしている。

誰が言ったわけでもない。

自分で学びたいと言い出し、学校が休みの日に一緒に会社に行くこともあった。

夏休みにはNYに行き、親父とお袋に同行して世界を飛び回った。

生き急ぐことはないのに、自分の宿命を受け入れ背伸びせずに、素直に吸収している。

俺もこんな風に成長していたら、もっと違った人生だったのだろうか?


いや、だとしたらつくしとは巡り合えていないだろう。





来週で40歳になる俺。

ビジネスの道具でしかなかった誕生日。

つくしと出会って誕生日が来るのが嬉しくてしかたねぇ。

「あぁ、翌日にパーティーの予定だ。」

「じゃあさ、これ俺たちからの父さんへの誕生日プレゼント。」

差し出されたのは旅館のパンフレット。

熱海温泉の文字

「お前たちから?」

「そうだよ。俺たちのお小遣い、それと使用人と執事の人のカンパもちょっとある。」

「・・・そうか。」

「来月末にはNYでしょ?俺たちは行かないから二人だけで行ってきて。」



来月に家族で渡米することが決まった。

日本で迎える誕生日はしばらくないだろう。


「なんで熱海なんだ?」

「総二郎さんとかに父さんと母さんの日本での思い出の場所聞いたら「熱海じゃねぇか?」って言ってたから。」

「・・・そうか。」

あいつら他に余計な事言ってねぇだろうな。

「駄目だった?」

俺が不機嫌な顔に見えたのだろう。

覗き込むように俺を見る。

俺と瓜二つなのに、こんな時はつくしのように感じる。


「いや、サンキュ。つくしに聞いてみる。」

「母さんは喜ぶと思うよ。」

笑う息子。

「だろうな。」

俺まで笑った。

親孝行の息子。

親思いなのはつくし譲りだろう。




熱海か・・・


高校三年の夏を思いだす。


あれから22年か。

俺の人生の半分以上、つくしが俺の中に存在する。

俺の人生を変えてくれた大事な女。



二人っきりの旅行なんて何年振りだろう。






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