晴れ、ときどき×× 2
2014 / 10 / 31 ( Fri ) 6つの目がじーーーっと一点に集中する。
突き刺さるような視線にいたたまれない気持ちになるが、つくしはぽつりぽつりと言葉を選んでいく。 「おとといなんだけど、仕事で女の先輩と同期の男の子と外回りに行ったのよ。で、思ったより遅くなったから3人でご飯でも食べてから帰ろうって話になって・・・・」 「なって?」 「で、皆で夕食食べて帰ったんだけど、同期の子が車で来てるから送ってくれるって言い出して。一応相手は男性だし、あいつにバレでもしたらうるさいから断ったんだけど、先輩が方向が同じなんだから一緒に送ってもらおうって。先輩だけ乗ってくださいとはさすがに言えなくて。それで送ってもらうことにしたんだけど・・・・」 そこまで話すとつくしがまた溜息をつく。 「帰ったら予告なしにあいつがアパートの前で待っててさ。先輩の方が家が手前だったから、車には私と同期の子しかいなくて・・・・」 「うわぁ~、さすがは野生の勘。凄いタイミングだね、司」 滋が感心したように言う。 「もちろん私は後部座席にいたんだよ?それにその子には長く付き合ってる彼女がいるの知ってるし。・・・でもあいつ、見た瞬間凄い剣幕でその子に迫ってさ」 「まぁ道明寺さんなら当然そうなるでしょうね」 「見知らぬ男と二人きりで車に乗って帰宅したんじゃあねぇ・・・・・」 「だーかーらー、そんなんじゃないって!それもあいつに説明したんだけど全然聞く耳持ってくれなくて。ぶん殴りそうな勢いですごむもんだから、彼逃げるように帰っちゃって。もう申し訳ないったら」 「・・・それで?それからどうしたんですか?」 それから・・・・・は散々だった。 「相変わらずお前はあっちにフラフラこっちにフラフラ、ちょっと目ぇ離すとすぐにこれだ」 「だから中野君はただの同期だって言ってるじゃん!彼女だっているし、うちにつくほんの数分前までは女の先輩と一緒だったの!」 玄関をくぐった途端怒りを露わにする司につくしも引っ込みがつかなくなる。 ちょっとでも異性と接点があるだけですぐにキレられていては仕事もできやしない。 「彼女がいたって他の女に手ぇ出すことなんて簡単なんだよ!」 「へぇ~、じゃああんたもそういうことができるんだ?」 「んなわけねぇだろが!俺がそんなことするわけねぇだろ?!」 「だって今そう言ったじゃん」 「あれは世の男共に言っただけで俺にはあてはまらねぇんだよ!」 「何よそれ、意味わかんない!」 ギャアギャア相変わらず互いに引くに引けないまま口論はヒートアップしていくばかり。 「っていうかなんでここにいたのよ?仕事は?」 「・・・・・明日から仕事で東京を離れることになったからお前の顔でもみておこうと思ったんだよ。何日かかるかまだわかんねぇし。で、何とか時間を作って来てみれば知らねぇ男と二人っきりで帰ってきやがって・・・。これじゃあおちおち仕事にも行けねぇっつの」 「だから何でもないって言ってるじゃん!もう、何ですぐそういう方向にもっていくのかなぁ!」 ガンッ!! 頬を膨らませていると突然司がつくしの顔を挟むような形で扉に手をついた。 凄い勢いのせいで大きな音が響き渡り、思わずつくしの体も跳ねる。 「な、何よ?!」 「お前は相変わらず自分の価値を全くわかっちゃいねぇんだよ」 「え?」 「お前にその気がなくても相手はそうじゃねぇことが多々あるってんだよ。彼女がいるからって安心すんじゃねぇ!」 つくしの顔の目前まで迫って司がすごんでくる。 こんなときにもかかわらず相変わらずこの男は何て整った顔なんだと思ってしまう自分がバカすぎる。 「だ、だから何もないって・・・・」 「もういい。お前には言っても無駄だから行動でわからせてやる」 「えっ?」 突然司の顔が肩に沈んできたかと思うと、首筋に温かい感触を感じて体がビクッと跳ねる。 「ちょっと、道明寺!なにすんの・・・・・あっ!」 ヌルッとした感触で首筋を舐められていると気付いたのも束の間、次の瞬間にはチクッと鋭い痛みを感じた。 まさか・・・?!この痛みには嫌と言うほど身に覚えのあるつくしはハッとして司の体を押しのけようとするが、ただでさえ体格差が激しい司がちょっと本気を出せばピクリとも動かすことはできない。後ろに引こうにも扉に阻まれてどうにもこうにも身動きがとれない状態だ。 「ちょっと、バカバカバカッ!!どこにつけてんのよ!やめなさいよっ!」 必死で叫んでいる間もまた一つ、一つと首筋や耳の後ろにその痛みが走る。 「本気で怒るんだから!絶対許さないんだから!バカバカバカばんっ・・・・・・・!!」 気が付けば唇ごと自由を奪われていた。おまけに顔を両手で掴まれ、もう何一つ抗う術がない。 すぐに口内に侵入してきた舌の感触から逃れようとするが、あっという間に捉えられ、縦横無尽に食べ尽くされていく。 心の中では憤慨していても、いつだって蕩けるようなその感触に次第につくしの体から力が抜けていく。 ただキスをされているだけなのに、気が付けば膝から力が抜け落ちて司に支えられていなければ立っていられないほどになっていた。 「はぁはぁはぁ・・・・・」 どれくらいの時間が経ったのだろうか。 ようやく唇を解放されたときには息も絶え絶えになっていた。 司はつくしの濡れた唇を親指でグイッと拭うと、キスができそうなほどの至近距離で言った。 「わかったか。男なんて本気になれば簡単にこういうことができるんだよ。お前は俺だけのもんだ。フラフラすることは絶対に許さねぇ。これはおしおきと俺のモンだっていう証だ」 「なっ・・・・!」 「俺がいない間フラフラすんじゃねぇぞ。いい子で待ってろ」 そう言って唖然とするつくしの唇にもう一度キスを落とすと、司は扉を開けて部屋から出て行った。 支えを失ったつくしの体がずるずると壁伝いに落ちていき、やがてペタンと玄関に座り込んでしまう。 唇に首筋に、燃え上がるような熱が残っているのがわかる。 それからしばらくつくしはその場から動くことができずにいた。 「・・・・・で?先輩は一体何に対して怒ってるんです?」 一通り聞き終えた桜子が冷静に口にする。 「だって!あいつ、絶対につけないでって前から言ってたのにあんな・・・・・」 「キスマークのことですか?」 「・・・前に知らない間に見えないところにつけられて職場ですっごくからかわれたことがあるの!身内だけにからかわれるならまだいいけど、仕事として会う人にまで見られてたかと思うともう恥ずかしくて・・・・」 「え~?愛の証って感じでいいじゃん!」 あっけらかんと言ってのける滋をつくしは一睨みする。 「社会人なら最低限の身だしなみは必要なの!ああいうのを見せて満足するのは本人だけなんだから!だからそれ以降は見えるところには絶対つけないって約束したのにあいつ・・・・しかもあんなにいっぱい・・・」 「どれどれ?・・・・うわっ!これは凄いわ。さすがは司」 つくしの来ていたタートルネックの襟元をグイッと引っ張ると、さすがの滋も驚いた声を上げた。 「え、私も見せてください。・・・・うわ~、これはすごいですね」 「ほんとだ・・・すごい、耳の後ろもあるよ、つくし」 滋に続いて桜子と優紀も物珍しいものを見るようにマジマジと観察し始める。 「ちょっと!見世物じゃないんだから!」 つくしは思いっきり服を引っ張って再び首を隠す。 引っ張った勢いで布がピキッと鳴ったような気がするが、今はそんなことは後回しだ。 「さすがにそれはやりすぎかもしれませんね」 「でしょう?!もう隠しようがないくらいの数なんだから!しかもすっごい強さでつけてるし。タートルネックを開発してくれた人がいなかったらもうどうなってたことか・・・」 寒さを凌ぐ以外に目的はないと思っていたタートルネックがこれほどに有難い存在だったとは。 こんなことでもなければ一生気付くことはなかっただろう。 「だから連絡を絶ってるんですか?」 「そうだよ。あいつのことだからちっとも悪いなんて思ってないんだから!」 「でも電源まで切っちゃうなんて、道明寺さんなら強行策に出るんじゃないの?」 優紀の心配はもっともだ。目的のためなら警視総監を動かすことさえ厭わない男なのだから。 「大丈夫。事前に力技に持ち込むようなことがあれば別れてやる!って釘をさしてあるから」 「わぉ~、さすがはつくし。司の取り扱いはお手の物ってわけか」 「あの道明寺さんを我慢させることができるのなんて・・・・ライオンの調教より難しいんじゃないですか?」 「うんうん、それは言えてる」 「ちょっと!そんなことはいいから今日は飲むよ!煩わしいことは忘れて楽しむんだからっ!」 やいのやいの面白おかしく話に花を咲かせる3人に不機嫌そうに視線を送ると、つくしは気分を切り替えるように目の前のグラスに入ったアルコールをグイッと一気に煽った。 ![]() ![]()
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by: * 2014/10/31 01:45 * [ 編集 ] | page top
--めい※※様--
わぁ~、わざわざ有難うございます! 喜んでくださる方がいると、開設して良かったなと嬉しくなります(*´∀`*) 我が家の坊ちゃんを末永く宜しくお願い致します。 パスもわかったようで良かったです。 あちらの方の作品も頑張りますね! 某所によりすっごくハードルが上がってるのをひしひしと実感します(笑) --管理人のみ閲覧できます--
このコメントは管理人のみ閲覧できます --きな※※ち様--
コメント有難うございます!私もいつもお名前を拝見しておりました(*´∀`*) 変態仮面からフンドシサンバリーダーまで、ありとあらゆる顔を持つみやともでございます。 一言で言えばアホなんです、えぇ。まぁなんてわかりやすい! お加減いかがでしょうか?早く良くなるといいですね。 ここがほんの少しでも息抜きになるといいのですが・・・ ガラケーをご使用なんですか?あぁ、なんて素敵なことでしょう! 私も未だにガラケー族です。絶滅危惧種になりそうですが頑張ってます。 ここに心強いお仲間を発見したので共に頑張りましょうぞ!!(笑) ガラケーからサイトを見ると本当に見づらいですよねぇ^^; 呼び名の微妙な変化に気付かれている方が割といらっしゃって、 皆さん凄いな~と驚いています。 ますます変なことはできないなと・・・え?今さらですか?・・・ごもっとも。 いつブラジルに飛ぶかわかりませんので、なるべく日本に腰を据えられるようにします(笑) 甘くてほっこりが好みなので、少しでも楽しんでいただけるように頑張りますね! 私も旦那を見ると溜め息がでます。だからここで現実逃避するんです( ̄∇ ̄) これからどうぞ宜しくお願い致します(*´∀`*) --管理人のみ閲覧できます--
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ふふ、さすがに厳しかったですねぇ。 元来彼は長い方ですからね(何が?) いずれ・・・・ですね( ̄∇ ̄) --マ※様--
棒・・・某サイトではいち早く気付いていただいたようで有難うございます(*´∀`*) 結構皆さん細かいところまで気付かれるのでびっくりしました。 パスワードは毎度毎度面倒くさいかとは思いますが、 さすがにそのまま公開するのは・・・と思いつけさせてもらいました^^; いちいち計算するのは大変なので、 どこかにパスをメモするなどしておいてくださいね。 私もこのところの賑わいに楽しませてもらっている一人です。 あらためて花男の人気の凄さを実感しますよね^^ マイペースに活動していけたらいいなと思っています。 --管理人のみ閲覧できます--
このコメントは管理人のみ閲覧できます --マ※様--
何かやり方のアドバイスができればいいのですが、 私は恐ろしいほどのメカ音痴且つアナログ人間でして・・・・・ どなたかに助けを求めなければ!! というかこのサイトができていること自体がほんとに奇跡なのでね^^; それくらいのレベルなんです。 それにしても つくし秘書の避暑地での秘所 これ凄いですね。座布団100枚あげたいです! そのうちこのお話書こうかな(笑) |
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