晴れ、ときどき×× 4
2014 / 11 / 02 ( Sun ) ジタバタと暴れる体は少しも離れることはなく、遠ざかっていく景色の中に深々と頭を下げている店の責任者の姿が見えた。やがて外に出るとそこには見覚えのありすぎる無駄に長い物体が見えてくる。
「バカバカバカ!降ろしてよっ!」 「うるせーな、すぐに降ろしてやるよ。ほらっ」 ドサッという音と共に体が柔らかい感触に包まれる。 当たり前のようにリムジンの中に放り込まれると、出口を塞ぐような形で司が目の前に腰を下ろした。 「ちょっと!私電車で帰るんだから。降ろしなさいよっ!」 「んなこと許すわけねーだろ。行け」 運転席の方にチラリと目線を送ると同時に、車体が音もなく静かに動き出した。 「あっ!斉藤さん、止まってください!ここで降りますからっ!」 「ばーか、止まるわけねぇだろが。いい加減諦めろ」 すっかり顔なじみになっている運転手の斉藤への願いも虚しく、車は滑らかに夜の街を駆け抜けていく。 もはや何を言っても無駄だとようやく悟ったのか、つくしは頬を膨らませて不満を隠さずにソファへと体を投げた。 棘々したつくしの心とは対照的に、革張りのそこが自分を柔らかく包み込んでくれる。 「ぷっ、お前の顔おもしれぇ」 顔筋の全てを使って不機嫌さを滲み出しているつくしに、思わず司が吹き出す。 「ちょっと!何笑ってんのよ。私まだ怒ってるんだからね?!」 「何がだよ?俺は何もしてねーだろが。っつーかお前こそどういうつもりだよ?連絡取れねぇようにしやがって。心配すんだろが!」 こちらの不機嫌なんてお構いなし。 自分の方こそ怒ってるとばかりに眉間に皺を寄せる男に、つくしはあらためて思う。 やっぱり。この男はちっとも悪いだなんて思っちゃいない。 「だって!元はと言えばあんたが悪いんでしょ?絶対に見えるところにつけないでって約束したのにあんな・・・・・。しかも一つならまだしも、数え切れないほどつけるなんて信じらんない!」 「あれはおしおきだっつったろ?お前密室に男と二人きりになんてなるんじゃねーよ。本気で襲われたら簡単にやられんだからな」 「だからっ!そういう心配はいらない相手だって言ってるでしょ?!」 「お前の大丈夫ほどアテになんねーもんはねぇんだよ」 「何よそれ」 「そうやって油断しまくってるお前に惚れる男が今までどれだけいたと思ってんだ」 「はぁっ?意味わかんない。そんな人いるわけないじゃん!」 「ほらな、これだ。ったく無自覚ほどタチの悪いもんはねぇっつんだよ」 どこか呆れたように溜め息を零す司にますますつくしのイライラは募るばかり。 「仕事の付き合いでどうしてもってことはあんたにだってあるでしょ?いちいちあれくらいのことでキレないでよ」 「俺は絶対に隙なんか見せねぇぞ」 「そう思ってるのはあんただけかもしれないじゃん」 「あぁ?んなわけねーだろが。お前と一緒にすんじゃねぇよ」 いつまで経っても水掛け論の応酬に運転手の斉藤が一人苦笑いを零している。 当然そんなことには気づきもしない当人達は小学生かと突っ込みたくなるほどのやりとりを延々と繰り返す。 「もういいよ。とにかくお願いだから見えるところにだけはつけないで!」 「別にそんなん堂々としてりゃいいだろうが」 悪びれもせずケロッと言ってのける司をつくしは下から睨み付けた。 「バカ言わないでよ!仕事の時に取引先の人に見られでもしたら身だしなみとしてだらしないでしょう?!仮にあんたが同じようなことしてみなさいよ。副社長としての立場がないでしょ」 「俺は別に構わねーけど」 「えっ?」 「キスマークだろ?別にいくらついてようが痛くも痒くもねーけど」 「でっでも、あんたは副社長じゃない・・・」 一体何をとんでもないことを言い出すのだろうか? 企業の上に立つ人間が、しかもそんじょそこらの大きさではない。 大財閥の副社長ともあろう男がキスマークを堂々と見せても平気だって? いやいやいやいや、ありえないっつーの! そんなつくしの心の叫びを知ってか知らずか、司はフッと不敵な笑みを浮かべると、一気につくしの横まで体をずらして密着してきた。 「ちょっ・・・!」 つくしが気づいた時には時すでに遅し。 逃げようと後ずさった方から大きな手が伸びてきて肩をがっちりと抱き込まれてしまった。目の前には広い胸板があって挟み込まれた状態だ。 「いいぜ?」 「はっ?」 「キスマーク、つけろよ。ほら」 そう言うと司は顎をクイッと上げた。つくしの目の前に男らしい喉仏と男性とは思えないほど色っぽい首筋が晒される。 「ちょっ、冗談やめてよ!あんた副社長でしょ?ダメに決まってるじゃん!」 「なんでだよ。俺は構わねえってんだろ?」 「だって他の社員に示しがつかないじゃん!わっ?!」 体を仰け反らせながらなんとか距離を取ろうとギリギリと力を入れるつくしの体を片手でいとも簡単に引き寄せると、司は鼻と鼻がくっつくほどの距離で言い切った。 「言っとくけど。俺はキスマークくらいでどうこう言われるほどやわな仕事はしてねぇぞ」 「ちょっと・・・・近いっ、近いからっ!」 悔しいが何度見ようとも整った顔を目前に、つくしの心臓がバクバクとその速度を上げていく。 だがそんなつくしの焦りをさらに上昇させるように、司は両手でつくしの顔をガシッと固定する。 「キスマーク程度でガタがくるような仕事はしてねぇんだよ。っつーかむしろハエのようにたかってくる女共への牽制になっていいんじゃねぇのか?」 「わ、わかったから!だから離してよっ・・・・」 「俺はお前からのキスマークなら喜んでつけていくぜ」 「ちょっ・・・・んっ・・・!」 目の前の形のいい唇が弧を描いたと思った次の瞬間、吐き出そうとしていた言葉ごと奪われていた。 顔を両手で固定され逃げることもできず、必死で胸を叩いて抵抗するが強靱な肉体はぴくりともしない。 柔らかい唇の隙間からすぐに生温かいものが侵入してくる。その感触にビクッと反応したのが合図かのように侵食が激しさを増す。 「んっ・・・・あっ・・・・」 怒ってたのに。 ちゃんと謝るまで絶対許さないって思ってたのに。 それなのに・・・・ どうしてこいつのキスはこんなに優しいの。 あんなに自己中で凶暴でバカな俺様なのに、触れる唇は恐ろしいほど優しくて。 どんな時だってこの男にキスをされたらいつの間にか何も考えられなくなって・・・・・・ 蕩けそうなほどの感触に溺れていってしまうんだ。 「はぁっ・・・・」 気が付けば抵抗していた体からはすっかり力が抜け落ち、顔を固定していた大きな手はつくしの背中へと回されていた。ようやく唇が離れて行ったと同時に艶めかしい吐息が零れる。 「お前今自分がどんな顔してるかわかってんのか?」 「な・・・・にが・・・?」 「すっげーエロイ顔してる」 「なっ・・・・!!」 変わらず至近距離でニヤリと笑う男の顔の方がよっぽど妖艶で。 カッと頬を染めて反論しようとした時にグイッと腕を引かれた。 「ちょ、ちょっと?!」 「ほら行くぞ」 いつの間にやら車は邸に着いていたようで、視線を後ろに送れば斉藤が後部座席のドアを開けて恭しく主が出てくるのを待っている。 いつからドアが開いていたのだろうか・・・?! まさか見られた?! 全くもって今さらなことを悶々と考え込むつくしの体を引き寄せると、司は慣れた手つきで邸の中へと入っていった。 ![]() ![]()
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--待ってました!--
まま様のサイトでおみかけした衝撃の作品から某委員会でのご活躍・・もう次回作を待ち望んでいました。 絶対この方はR以外でもすごいんだろなって。 もう予想と期待を裏切らない作品に、こちらを見つけてうはうは状態。ただいまAM3:50・・寝られませんよっ!! こちらのつかつくワールド最高ですね。2人の姿が目に浮かぶようで。これからの展開が楽しみです。 これからもがんばってくださいね~ 今からもう1回読み直しに行ってきま~す。(^^;
by: Loveつこし * 2014/11/03 03:55 * URL [ 編集 ] | page top
--Loveつこし様--
こんな辺鄙なサイトを見つけてくださり有難うございます<m(__)m> 献上作品を通して待ってました!!と言ってくださる方がいらっしゃり、 本当に有難いことだと思っています。 私がサイトを開設するなんて3億円を当てるよりもあり得ないことでしたから。 いや、本当にそうなんです。 皆様との出会いで新たなチャレンジをさせてもらっています。 なるべく原作の2人に近づけるようにとは思っていますが、やっぱり難しいですね。 数々の二次作家様たちの偉大さを感じる日々です。 気に入っていただける作品が描けるように頑張りますので、 これから末永く宜しくお願い致します~(*´∀`*) |
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