父は今日もモチをやく
2015 / 11 / 08 ( Sun ) 「愛を聞かせて」 おまけの短編です。
「はぁ~、あたし達もついにおじいちゃんおばあちゃんになるのかぁ・・・。っていうかおじいちゃんおばあちゃんって! やだ~、まだまだ若いんだから別の呼び方にしてもらっちゃう?」 「・・・・・・」 「出会った頃はこんのクソガキー!って感じだったのにねぇ、いつの間にかすっかり好青年になっちゃって。ハルがこーんなに小さい頃から知ってるだけになんか感慨深いものがあるわねぇ・・・」 「・・・・・・」 「花音も幸せそうで何よりだわ。ハルも今じゃすっかりあの子にゾッコンって感じだもの」 「・・・・・・」 「どっちに似てもかぁわいい子になるよねぇ~。あ~、今から楽しみだなぁ~!」 「・・・・・・」 「ちょっとっ!! 聞いてるのっ?!」 「あっ?!」 いつまでたってもウンともスンとも反応しない男に痺れを切らして後ろから本を強奪する。 「おいっ、何しやがるっ!!」 「それはこっちのセリフです! さっきからずーーと黙って。聞いてるの?!」 「俺は今本を読んでんだよ! 返しやがれ!」 「へぇ~? この本って逆さまにして読むんだ? 今は不思議な本も売ってるんだね~!」 「・・・!!」 ひらひらとつくしの手の中で揺れている本は思いっきり逆さまになっている。 初めて気付いた事実に急激にバツが悪くなった司がすこぶる面白くない顔になると、まるでいじけた子どものようにプイッとそっぽを向いてしまった。 「まったく~、いい加減やきもち妬かないの!」 「誰がだよ。バカ言ってんじゃねーぞ」 これだけわかりやすくふて腐れているのに何を今さら。 つくしはクスクス笑いながら司の後ろからキュッと腕を回した。 「結婚しようと可愛い可愛い娘であることに変わりはないもんね~?」 「うるせーぞ」 「ふふふっ。あの子達の幸せそうな顔見た? なーんか、花音がお腹にいるってわかったときのことを思い出してうるっときちゃった」 「・・・・・・」 「・・・ほんと、色々あったよねぇ・・・」 もう随分前のことだというのに、まるで昨日のことのように思い出す。 「あの当時はあんなに辛い、苦しいって思ってたはずなのにね。どうしてだろう、今となっては楽しい記憶しか蘇ってこないの。たくさん泣いたことも、たくさん苦しんだことも、ぜーーーーんぶがいい思い出。不思議だよね」 「・・・・・・」 相変わらず無言だが、自分の手に黙って重ねられた大きな手にふふっと微笑む。 言葉はなくともその想いは充分に伝わってきて、首に回した手にギュッと力を込めた。 「命が繋がっていくって奇跡だよね。決して当たり前のことなんかじゃない。1つ1つの命が奇跡なの。そうして繋がった命がまた新しい命をつくっていく。・・・本当に神秘的で凄いことだと思う」 「・・・あぁ」 「それに、やきもち妬いてるのも今のうちだけだよ~。もし生まれてくるのが女の子だったりしたら今度はその子にメロメロになっちゃうに決まってるんだから。そしたら今度は花音の方が妬いちゃうかも?」 「誰がメロメロになるかってんだ」 「なるに決まってるじゃーん! それでまたハルとバトルを繰り広げるのよ、絶対に」 「ざけんな」 「あはははっ! って、あわわっ??!!!」 回していた手が突然掴まれると、あっ! と口にする前にはもう体が引きずり込まれていた。 気が付いたときにはふかふかのソファーの上に押し倒されていて、おまけに上には司が覆い被さっていて起き上がれない。 「な・・・何?!」 「お前も大概わかってねーな。俺がメロメロなのは花音にじゃねぇ」 「えっ?」 「そんなことすら未だにわかってねーやつにはお仕置きが必要だよなぁ・・・?」 ヌッと伸びてきた手が胸元のボタンをプツンプツンと外していく。 どこぞの瞬間芸かとつっこむ暇もないほどにあっという間に。 「ちょ、ちょっ・・・司っ?!」 「確かに命は奇跡だよなぁ。だったらなおさらその神秘的な営みは続けていくべきだよなぁ?」 「・・・へっ?!」 「なんならあれか、孫と子どもが同級生っつーのもまたミラクルでおもしれーかもな」 「・・・はっ?!」 「ま、いずれにせよやることは1つしかねーってことだ」 そう言ってニヤリと笑うと、そのまま目の前が真っ暗になった。 えーと、えーと、何がどうしてこうなった? 今日はハルと花音が妊娠の報告に来てくれて、それがすごーく嬉しくて・・・ そしたらなんだかハルに出会った頃のことを思い出してしんみりしてきて、 それで・・・ それで・・・・・・? 「 ほぇええええっ???!!!! 」 今日も平和に一日が終わった雄叫びを確認した使用人が安堵したように部屋から離れていく。 これがここでの日常。 それは20数年経った今も昔と何一つ変わらない奇跡。 ・・・結局、彼の言う 「 ミラクル 」 が現実のものになったかは定かではないけれど。 あくなき挑戦が夜な夜な続けられたというのは・・・誰もが知る話。
「忘れえぬ人 71」 ← 内容を忘れている方はコチラからどうぞ |
--管理人のみ閲覧できます--
このコメントは管理人のみ閲覧できます
by: * 2015/11/08 00:10 * [ 編集 ] | page top
--管理人のみ閲覧できます--
このコメントは管理人のみ閲覧できます --た※き様--
わぉ!やっぱり実在するんですね~。 でも司なら60代とかでできたって言われても全然驚かない気がする(笑) でも女はそうはいかないよね( ̄∇ ̄) --a※※hana様--
ふふふ、この2人ならミラクルじゃなくて通常運転って感じになりそう(笑) つくしの体さえ可能ならつかさの遺伝子は永久に不滅って感じがするな~。 永遠に枯れなさそう・・・( ̄∇ ̄) --管理人のみ閲覧できます--
このコメントは管理人のみ閲覧できます --管理人のみ閲覧できます--
このコメントは管理人のみ閲覧できます --管理人のみ閲覧できます--
このコメントは管理人のみ閲覧できます --管理人のみ閲覧できます--
このコメントは管理人のみ閲覧できます --管理人のみ閲覧できます--
このコメントは管理人のみ閲覧できます |
|
| ホーム |
|