また逢う日まで 4
2015 / 12 / 16 ( Wed ) 「な~んか、この事務所ってこんなに静かだったっけか?」
「・・・・・・」 カタカタカタ・・・ 同僚の言葉を右から左に流しながら黙々と手を動かしていく。 「牧野1人の存在感がこれだけあったなんて、いなくなるまで気付かなかったよなぁ」 「・・・・・・」 カタ・・・ しみじみと感慨深そうに呟かれた一言に、思わず動かしていた手が止まった。 「お前が一番寂しいだろ?」 「・・・・・・ちょっとコーヒー買ってくるわ」 「あ、おいっ?」 何か答えるでもなく無言で出ていった男に、同僚の男が溜め息をついた。 「やっぱ相当ショック受けてんだな・・・まぁそりゃそうだよな」 「おい矢野、無駄口叩いてる暇があるならこの処理お前がやってくれ」 「ひぇっ!? し、社長!それはないっすよ!」 「いーや、それだけ余裕があるなら何の問題もないだろ。ということで頼んだぞ」 「えぇっ?! そ、そんなぁ~~っ!!」 ガコンッ! 冷たいコーヒーを手にすると、すぐにプシュッと開けて勢いよく口に流し込んだ。 「ふー・・・」 仕事に集中するあまり今日は何も口に入れていなかった。 カラカラに貼り付いた喉にじわじわと潤いが広がってほっと安堵の息をついた。 『 やめるって・・・いきなり何でだよ?! 』 「 ・・・ごめん、今は言えない 」 『 言えないって・・・まさかあいつと何かあったのか? 』 「 ないよ! 何もない。・・・ただ、あたしにはどうしてもやらなきゃいけないことがあるの 」 『 やらなきゃいけないこと・・・? 』 「 ほんとにごめんね? 皆さんにはお詫びしてもしきれないくらいに申し訳ないと思ってる。それでも、どうしてもなの。・・・大塚にも感謝しきれないほどに色んな事で助けてもらった。心から感謝してる。本当にありがとう。それからこういう形でやめることになってほんとにごめんなさい 」 『 牧野・・・ 』 「 時期が来たらちゃんと説明するから。だから今はこれで許してほしい___ 」 「・・・お前があんなことするなんて、理由はあいつ以外に考えらんねーだろ」 今さらあの2人の間に割って入ろうだなんて思わない。 そんなことが簡単にできるはずもないことは嫌と言うほどわかっている。 あいつにあんな大胆な決断をさせるだなんてよっぽどのことがあるのだろう。 だがそこまでさせる原因が、もしも結果的ににあいつを苦しめるようなものであるとするならば・・・ 力強く握りしめた缶がグシャッといとも簡単に手の中で潰れる。 それを勢いよくゴミ箱に放り込むと、今日何度目かわからない溜め息がこぼれた。 カツカツカツカツ・・・ 「・・・?」 あまり聞き慣れない靴音が廊下から響いてきて何となしに顔を上げる。 「 _____ ?! 」 と、目の前に見えた光景に我が目を疑った。 高質な靴音はあっという間に目の前を通り過ぎ、そしてさっきまで自分がいた場所へと迷うことなく向かっている。ハッと我に返ると、大塚は慌てて休憩室から飛び出した。 「 おい、待てよっ!! 」 *** ガチャッ 「おい大塚、おせぇぞ~! お前のせいで俺がとんだとばっちりを・・・」 ようやく戻ってきた同僚に零しかけた愚痴がそこまでで途切れた。 何かを言おうと思ってはいるのに、その口はその意思に反して全く動いてはくれない。 ガタンッ!! 「 ____ 道明寺さんっ?! 」 そんな男の様子を見ていた渡邉がふっと扉の方へ目をやると、直後に目を見開いて立ち上がった。大塚と共に事務所に入ってきたのは・・・間違いなく道明寺司、その人だ。 「ど、どうなされたんですか? まさかうちが何か不手際でも・・・!」 既に仕事は完了しているとはいえ、副社長がアポもなしに直々に訪問してくるなど普通ではない。何か気付かぬところで問題でも起きたのかと渡邉が珍しく動揺している。 司は後ろを追いかけてきた大塚の存在を気にすることもなくそのまま戸惑いを滲ませている渡邉の前まで一気に近づくと、軽く一礼してみせた。 「お久しぶりです。突然の訪問で申し訳ありません」 「いえ・・・それは全く構いませんが一体どうなさったんですか? 何かトラブルでも・・・」 「ここへ来た理由はただ一つ。他でもない牧野のことでお伺いしたいことがありまして」 「えっ、牧野・・・ですか?」 全く考えだにしていなかったことを言われて渡邉がキョトンとする。 目が点になるとはまさにこのことだ。 「牧野はいつ、どういった理由でここをやめたのか教えていただきたい」 「え・・・? あの、何故そんなことを・・・それを知ってどうされるんです?」 渡邉とて詳しい事情を知っているわけではない。 だがいくら道明寺副社長が相手だとはいえ、娘同然の可愛い部下のことを軽々に話すことなどできない。 「牧野は私の婚約者です」 「 ・・・えぇっ?!! 」 その言葉に驚愕したのは渡邉だけではない。 事務所内にいた全員が驚きに声を上げて立ち上がった。 そしてそれは大塚も例外ではなく、さも当然と言わんばかりに出てきた言葉に唖然と司を凝視した。
すみませ~ん、ちょいと首が痛くて予定より短くなってしまいました>< |
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by: * 2015/12/16 05:52 * [ 編集 ] | page top
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どこそこガタが来てますが頑張ってます(笑) ふふ、道明寺かっこいいですか? 彼はこんなところにまで足を運んでいたんですね~! さてこの後どうする? --てっ※※くら様--
大塚君、久しぶりの登場です♪ ツレヅレ~にも書きましたが、彼に対する罪悪感みたいなのは常にありまして(笑) なんとかして彼を幸せにしてあげたいと思ってはいるんですが・・・何せ相手が司ですから。どこからどう攻めようと玉砕するしかないというね(苦笑) だったらせめてサブとして彼を輝かせたい! ・・・そんな願望だけは常に抱いてます( ̄∇ ̄)アクマデガンボウネ・・・ --ゆ※ん様<拍手コメントお礼>--
フローリングで寝ちゃってですね。多分それが尾を引いてるんじゃないかなと。 え、人間ってこんなことで寝違え起こすの?!ってくらい何もしてないのにグキッとなりましたよ(笑) こんな時に限って寒くなるんだもんな~・・・ チックショー!(`Д´) --ke※※ki様--
司の足音って絶対それだけでもかっこよさが出てるんでしょうね。 颯爽と歩く姿が目に浮かんできますもの。 そして残り香を辿るように女達の群れができてる様子が(笑) ふふ、渡邉社長達に深読みしてもらったようですが・・・すんません、何の裏もありません( ̄∇ ̄) もうね~、100話近く書くとそこまで考えていられない(笑) そういえば貴重な情報有難うございます~! たまたまチェックしてなかった時だったので飛んでいきました! ふ~、やっぱりいいですねぇいいですねぇ(*´∀`*) すっかり読む暇はなくなってましたが、やっぱり昔ド嵌まりした方々は別腹ですっ!! --さと※※ん様--
オーレ、罪滅ぼしの意識は消えずここにて再登場です。 え?この後は当然大活躍するんだろって? ・・・・・・しゃーせんでしたっ!!m(__)m (先に謝っておきます) 牧野家に続いて事務所にまで行っていた司。 そこにつくしはいないとわかっているはずなのにね。 さぁ、本人の了承もとらずに婚約者宣言をした坊ちゃん。 いきなり来たかと思えばそんなこと言われちゃって・・・そりゃあ誰もが顎カックンしちゃうってもんだ。 ( ゚Д゚)カックン! |
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