王子様の憂鬱 1
2015 / 12 / 28 ( Mon ) 「あ~、今日も王子は爽やか~!」
「あんなにイイ男なのに独身だなんて信じらんない!」 「でもヘタに誰かのものになるよりは独身でいてくれた方がよっぽどマシじゃない? 独身ならたとえ僅かでも可能性は誰にでもあるんだから」 「やだ~、あんたったら夢見すぎ! 相手は大企業の専務よ?」 「バカね、世の中嘘のようなほんとのシンデレラストーリーもあるのよ! 前に言ったでしょ? 道明寺ホールディングスの社長が結婚相手に選んだのは超貧乏人の一般人だったって!」 「・・・そういえばそんな話してたわね」 「何か裏事情でもあるかと思えば結婚して20年以上経った今でも超ラブラブの純愛婚だっていうじゃない!」 「え~、素敵ぃ~っ!!」 「つ・ま・り! あたしたちだってそのシンデレラになる可能性は・・・」 「「「 ゼロじゃない?! 」」」 全員の声が見事にハモると、きゃ~っと黄色い歓声があがった。 「あ~、でも毎日あんな王子様を拝めるだけでも幸せ・・・」 「見た目もよくてステイタスがあるって卑怯よね~。一緒に仕事した人からは優しいって専らの評判だし、非の打ち所がない王子様だわっ!」 「でもさぁ、春から専務の下に新人がついたんでしょ? しかも女っ!」 「そうっ、そうなのよっ! 新卒なのにいきなり専務付秘書ってありえなくない?!」 「ほんとほんと、だって専務には山野さんっていう完全無欠のスーパー秘書がいるのに! 若手を育てるのに第2秘書をつけることもあったけど・・・専務付は男ばっかりだったでしょ? なんで今回だけ女なのよ?!」 「明らかにおかしいわよね・・・あんたその子の顔見たことある?」 「あたしはないけど別の部署の子はチラッと見たって言ってたわ」 「そうなの?! どんな感じだって?」 「それがさ・・・眼鏡はかけてるけどどうも可愛いらしいのよ」 可愛いという聞き捨てならない言葉に女達の目がピクッと光った。 「可愛いって・・・マジ?」 「あたしが見たわけじゃないからわかんないけど、遠目で見た感じはそうらしいのよ」 「やだやだやだーっ!! 王子に女の部下がついたってだけでも嫌なのに、可愛いだなんて絶対に認めないっ! 百歩譲ってもブスかデブ以外はいやっっ!!」 「あんたの気持ちはわかるけどさ、さすがに人事に関してはどうにもできないじゃない」 「・・・今度探しに行ってみる?」 「えっ?」 「その子のこと」 「探すって・・・フロアも全然違うのに会うチャンスなんてないんじゃない?」 「友達の友達が秘書課にいたはずだから、ちょっと探りを入れてもらえないか頼んでみるわ!」 「マジ?」 「マジマジ!!」 「それってちょっと楽しみかもー・・・って、あっ! ちょっと、時間っ!!」 「えっ? ・・・やばっ、急いで戻らなきゃ!」 「あっ? ちょっと待ってよぉっ!!」 慌てて口紅をポーチに押し込むと、バタバタと騒々しい音をたてながら女達は廊下の向こうへと消えていった。 ・・・・・・・・・ガチャッ 声が完全に聞こえなくなってからさらに数十秒後、1つの個室の扉が控えめに開けられた。 「・・・・・・・・・・・・・・・」 足音をたてないようにそろりそろりと洗面台の前までやって来ると、鏡の中に写る自分を見ながら盛大に溜め息をついた。 「はぁ~・・・10分近くも個室に閉じ込められるなんて・・・さすがに予想外でしょう」 どれだけお腹が大変なことになってると思われることやら。 もう一度溜め息をついたところで時計を見て一気に青ざめた。 「まずい、ほんとに時間がない! 資料を取ってすぐに戻らなきゃ!」 周囲にさっきの女性人がいないことを確認すると、一目散にその場から駆け出した。 *** この会社には王子様がいる。 眉目秀麗、物腰は柔らかいのに頭はキレる。 もっている肩書きは文句なし、おまけに独身。 そんな男を世の女性が放っておくはずもなく。 未だ空白の妻の座にになんとかして自分が!と思う女は後を絶たず、身分違いとわかっていても夢を見る女達も数知れず。 そんな王子様がここにはいる。 「う゛~~・・・お゛もっ・・・!」 ヨロヨロと今にも倒れそうな体を気合と根性でなんとか奮い立たせる。 本当は二度に分けて運ぶつもりが予定外に時間がなくなったせいで一度で運ぶ羽目になってしまった。仕事は時間厳守。ましてや秘書たるもの、上司が円滑に業務を行えるようにするのは当然のこと。 「ノ、ノック・・・」 両手は完全に塞がった状態。ラッキーなことに偶然居合わせた人に扉を開けてもらえながらここまで来たはいいものの、最後にして最大の難関が立ち塞がった。 たった一枚の専務室の扉が重くて遠い。 あいにくもう一人の上司である山野は今日は別件で不在だ。 時間を考えれば自室に戻って荷物を二分している余裕はない。 ・・・ここは最後の力を振り絞るしかなさそうだ。 ふぅっと深呼吸して心を整えると、必殺片手持ちをするべく全身に力を集中させた。 「せーの・・・わわっ?!」 が、右手を動かした次の瞬間、それまで自分に襲いかかっていた重力が一瞬にして消え去った。 踏ん張っていた体はその急な変化についていけず、途端にバランスを失ってしまう。 「わぷっ!」 よろけた体が顔から何かにぶつかると、ふわりと柔らかな香りが体中を包み込んだ。 「なんでこんな重いもの1人で持ってるんだよ」 「えっ・・・?」 頭上から降ってきた声に顔を上げると・・・ 「言っただろ? 1人で頑張りすぎるなって。お前の悪い癖だぞ」 さっきまで自分が両手で必死に持っていたのがまるで嘘のように、片手でいとも簡単に書類を持ち上げているその男性。 「ハルに・・・専務」 「フッ、2人きりのときはいつも通りでいいって言っただろ。 花音」 そう言って木漏れ日のような優しい笑顔を見せたこの人は・・・ 誰もが憧れる王子様であり、 あたしの初恋の人でずっとずっと好きだった人であり、 あたしの上司であり、 ・・・そして、あたしの恋人だ ____
根強いリクエストにお応えしてついにスタートです!30超えて初恋状態のハルと天然小悪魔花音のイチャラブをどうぞお楽しみください(*^^*)そしてつかつくファンの皆様もご安心を。我が家ではレアな中年つかつくがここでも活躍しますのでそちらもあわせて楽しんじゃってくださいねっ! |
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by: * 2015/12/28 00:13 * [ 編集 ] | page top
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ありがとうございます。 めっちゃ嬉しいです♡ ハルと花音、そして親としての司とつくし。 まぁ親だろうがなんだろうが、ラブラブなことに変わりはないでしょうが・・・(笑) 続き楽しみにしています。 --管理人のみ閲覧できます--
このコメントは管理人のみ閲覧できます --待ってました(*≧∀≦*)--
イヤーん!待望のハル花音続編うれしい!ありがとうございます。 宮様の咳風邪良くなりますように(^人^)私は咳が止まらず挙げ句えづき吐いた経験有り。深夜の苦しみ解ります。無理せずご自愛下さいね(*^^*) ----
ひゃ〜ハルと花音のLoveLoveストーリー始まりましたね(≧∇≦) 又毎日が楽しみです。 中年つかつくLoveもめっちゃ楽しみぃ --管理人のみ閲覧できます--
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わーい❗️ハル兄いと花音ちゃんのお話だ〜。この先の展開がとっても楽しみです♪ 咳、苦しいの分かります。年末年始、お忙しいでしょうが、身体が一番。どうかご自愛ください。 「Holy Night」、エンディングで思わず涙。クリスマスに素敵なお話のプレゼントありがとうございました。コメントを読んで実話だったと知って、また感動。私事で恐縮ですが、私自身も初めての妊娠・出産で多数の問題があって、長男を産んだ後、第二子は望めないと言われ、産まれて間もない長男を抱きながら泣きました。その後、確かに第二子を授かることはなく、でも一人でも産めたこと、長男も立派に育ってくれたことに感謝です。なのでお話につい感情移入してしまいました。 素敵なお話をありがとう‼️ --管理人のみ閲覧できます--
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