彼と彼女の事情 8
2016 / 03 / 28 ( Mon ) 「お、お待たせ・・・」
そろそろとリビングに足を踏み入れると、ソファーに大の字になって横たわっていた道明寺・・・もとい 「あたし」 が体を起こした。 「おう。じゃあ俺も風呂入ってくるわ」 「あ、あのっ!」 すれ違いざまに声を上げたあたしに道明寺の足が止まる。 思いの外大きい声が出て自分でもびっくりだけど・・・これだけは言っておかなければ。 「そ、その、絶対見ないでよ?」 「・・・何を」 「何をって・・・そんなの言わなくたってわかるでしょう!」 絶対わかってるくせにしれっと言わせようとするあたりがタチが悪いったらありゃしない! きっと今のあたしは顔が真っ赤になってるに違いない。 「・・・努力はする。けど完全に見るなっつーのは無理な話だぞ。お前だって俺の体のどこも見てねぇってわけじゃねーだろ? つーかそんなんどうやったって無理だぜ」 「そ、それはわかってるけど! でもあたしはほんとに視界に入らないようにしてるから!」 「入らないようにって・・・俺の体はゲテモノかよ」 「そういう意味じゃなくって・・・と、とにかくっ!! お願いだからなるべく体が視界に入らないように努力して! ほんと、これだけはお願い・・・!」 両手を組んで必死に拝むあたしを前に、道明寺は半分以上呆れてる。 けど仕方ないじゃない。どうやったって耐えられないんだから! 「・・・はぁ。わーってるよ。これ以上めんどくせーことになるのは俺だってご免だからな。この前も言っただろ。とにかく信じろって」 「う、うん・・・ありがと」 「おう。じゃあ行ってくる」 あたしがコクンと頷くと、道明寺はリビングを出てバスルームへと向かった。しばらくして脱衣所の扉が閉まる音が聞こえてきた途端、どっと力が抜けるようにしてソファーへと倒れ込んだ。 「はぁ~~~っ・・・こんな生活がいつまで続くの・・・」 そう嘆いた自分の声は低く、瞼を覆った手もめちゃくちゃ大きい。戻れると信じる決意を固めたものの、こうして現実を目の当たりにする度に溜め息が零れてしまう。 道明寺と身体が入れ替わってしまってから早一週間。元に戻れる気配は一向に感じられない。 辛いことばかりだけど、何が一番辛いって、トイレとお風呂の時だ。 道明寺は自分の体を見られることに対して全く抵抗がないみたいだけど、あたしにはとてもそんなことはムリだ。道明寺の体を直視することもできなければ、自分の体を否が応でも見られてしまうということも辛すぎる。 道明寺となったあたしにはまだ対応のしようがある。 こんなことを言うのもなんだけど、なんだかんだで男が隠せばいいのは1カ所だけなんだから。 トイレの時は個室に入って紙をグルグル巻きにして直接触れないようにすればなんとかなるし、お風呂だって下を直視しないようにすれば案外問題もなく目的を終えることができる。 さすがに上半身くらいは見てしまうけど、数日経てばその程度の免疫はついてきた。 でも問題はあっちの方だ。 女には隠すべき場所が2カ所もある。 ・・・いや、胸は2つあるんだから正確には3カ所。 両手でずっと上下を隠していてはそれ以上何の動作もできなくなってしまうし、どうやったって体の一部は見られているに違いないんだ。 とっくに見てるんだから別に気にする必要はねーだろってあいつは言うけど、そういう問題じゃない。おまけに、だったら一緒に入って見張ってりゃいいだろなんて言い出す始末。 そんなことできるわけないでしょうがっ!! あたしを誰だと思ってんのよ?! どんなに呆れられようと、多分あたしは死ぬまで一生、見られるという行為に慣れる日は来ない。 「・・・はぁ・・・もう死にたいくらいに恥ずかしい・・・。 こんなの拷問だよ・・・」 うぅ~~っと唸って俯せになると、こうなったらもうあいつを信じるしかないと自分に言い聞かせる一方で、とにかく1分でも1秒でも早く上がってくれとひたすら願い続けた。 *** パシャン・・・ 浴室の鏡に映った自分の姿をじっと見つめる。 「・・・・・・つーかこの状況で見ない男なんかいねーだろ」 そう口にした俺は今牧野の体をガン見している。 あいつにはわりーとは思うが、同じ状況下に置かれてもこうしない奴がいるっつーなら出てきてみやがれと言いたい。 別に女の裸に興味があるわけでもねぇし、自分ががっついた男だとも思ってねぇ。 ___ ここにいるのが牧野だから見たいってだけの話だ。 「あいつ、自分に自信がねーだけで実際のところ魅力的な体してんだよな」 ふにっと掴んだ胸は決してでかくはねーが、張りがあって形も綺麗だ。何よりも色白のきめ細かな肌は手に吸いついてきて、素肌で触れ合ったときの抱き心地は抜群だ。 総二郎だったか、昔牧野は磨けば光るものをもってるなんて言ってたが・・・ 本人がその気になればかなり化ける女だと思う。 だが俺はそんなことは望んじゃいねぇ。 こいつの真の魅力は俺だけがわかってりゃいい。 こうして全てをさらけ出すのは俺の前だけでいい。 身も心も全く穢れがなく美しい、それが牧野の最大の魅力なんだから。 「・・・俺がこうやってガン見どころか触りまくってるって知ったらあいつブチ切れんだろうな」 セックスだってしてるし(っつっても2回だけだが)、俺は既に思いっきりこいつの体を見ている。 だから正直今さらだろ? って思うんだが・・・どうやら牧野にとってはそうじゃねぇらしい。 ・・・まぁ初めての時もその次もあいつはひたすら受け身だったし、多分俺の体もまともに見ちゃいねぇと思う。 だからこの状況はあいつにとってはかなり酷に違いない。 「・・・なんか物足んねーな・・・」 あの牧野の身体を触り放題だというのに、どれだけ触ったところで満たされることはない。 それどころか触れば触るほど虚しさが増幅していく。 「・・・・・・クソッ!」 胸を触っていた手でそのまま握り拳を作ってバシャッと水面を叩くと、跳ね上がった水しぶきが鏡を濡らして牧野の身体を歪ませていった。 満たされるわけがねぇ。 俺は 「 俺 」 としてこいつに触れたい。 抱きたい。 ・・・そして愛したい。 「なんだってこんなことになったんだよ・・・!」 死に物狂いで駆け抜けたこの5年の努力にまさかこんな形で水を差されることになろうとは。 そんなん一体どこの誰が予想できたっつーんだよ?! 帰って来たらこいつとすぐに一緒になるつもりでいたっつーのに、なんで・・・ 「・・・あぁクソッ! 1人でいるとくだらねーことばっか考えちまう。やめだやめっ!」 ___ 俺の心に平穏を与えることができるのはあいつただ1人。 ザバッと勢いよく立ち上がると、あいつの傍で眠るべく足早にバスルームから立ち去った。
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by: * 2016/03/28 00:43 * [ 編集 ] | page top
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ほ~んと、当人は大変でしょうけどこっちは楽しいばっかりで(笑) 信じろとか言いながらがっつり見まくり&触りまくりの司。 イメージぶっ壊し?と反応にびびりつつも、いや、これが正常な行動でしょうと開き直ってます(笑) --てっ※※くら様--
どっちにとっても拷問ですよね~。 西田という強~い(怖いが正解か?)味方がいるのが幸か不幸か・・・ まだまだこのまますんなり戻りそうにはありません! --み※※鍋様--
そりゃ見るに決まってますよねっ!!(力説) 司みたいな肉体美、そうそうお目にかかれないんだからつくしもがっつり見ればいいのに・・・ あ、でもこれから先見放題、触り放題だから焦る必要もないのか。 ← つくしのいないところでちゃっかりやりたい放題の司がまたツボです(≧∀≦) --こ※こ様--
おぉ、気に入っていただけて嬉しいです! まさにその通りで「ありえない」設定ながらも、2人の行動に関しては「あるある!」と笑って頷いてもらえるようなお話にしたいと思ってるんですよ~(*^o^*) 自分が男になったら・・・色々やってみたいことがあるのに(* ̄∇ ̄*) --ke※※ki様--
ふっふふふ、大いに笑ってもらえて大満足です(* ̄ー ̄*)v 目に浮かびません?半泣きしながら必死でトイパーガラガラやってるつくしの姿が。 そんな扱いされてる司が気の毒になりつつも、でもまぁつくしが相手ならしゃーないよなと。 2回なんてまだまだお初みたいなものですし、そりゃあこうなっちゃいますよね。 先にギブするのはどっちになるのか?!色々と楽しみです。 --ゆ※ん様<拍手コメントお礼>--
何か不具合があるんですか? FC2 自体もちょこちょこトラブルが発生するのでどっちに問題があるかよくわからないです(・ω・) にしても半泣きの司って気持ち悪いですよね(笑) F3にばれたらどうなるか・・・ふふふ、妄想は膨らむばかりなり( ̄∇ ̄) --さと※※ん様--
いや~、つくしなら絶対こうなるよね、と。 にしても巨大フランクフルトのミイラ巻ってあーた・・・ いや、一言一句間違ってはないけどさ。どんだけやねんっ!!( ̄∇ ̄) 見ない宣言しながらがっつり見て触っての司がまた可愛いですよね~! そりゃ見るよ。そりゃ触るよ!今回ばかりは司の行動が正解っ!! え?私なら触るだろって? そんなん愚問じゃーーーー!!!(`Д´) 触るどころか男の快楽とはどんなもんか思う存分体験してみるわっ!! ← (いやでもやってみたいって思ったこと絶対あるよね??) --he※※akim様<拍手コメントお礼>--
エールを送りたくなっちゃいますよね! あと少し・・・で戻れるといいんですが・・・ ←えっ --か※た様--
ふふふ、今までとは全く趣向の違うドキドキを思う存分楽しんじゃってくださいね!(≧∀≦) |
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